76 ヤマノ要塞研究所
復活ぅ!(^^)/
1年の時を経て、更新再開です!
よろしくお願い致します。
あの、地獄の遊戯盤大会から3週間。
雑貨屋ミツハは、少し模様替えをした。
まず、よく売れる商品をペッツさんのお店に任せ、品揃えを、あまり売れない商品のみにしたのである。
え、普通は逆? いやいや、売れ線商品をうちに置いたら、店が忙しくなるでしょうが。
それに、たまにしか店を開けないとなると、必需品を買いたい人が困るでしょ?
だからうちでは、必需品じゃなくて、あまり売れなくて、利益率がとても良い品とか、買う人にちゃんとした説明が必要な品とかを扱うのだ。
折り畳みリヤカーも、注文取り寄せではなく、常置商品に昇格させた。
本当は、お店は完全にやめてしまおうかと思ったんだけど、それだと、何だか少し寂しくなっちゃうな、と思って……。
それに、儲けとは別に、日本の品物がこの世界で役立つのを見るのは楽しかった。
人気が出て売れるようになった商品は、順次、ペッツさんのお店へ移せばいい。
そういうわけで、ごくたまにしか開かない、高くて売れない商品しか置かない、新生『雑貨屋ミツハ』、新装開店、である。
一応、自分で突っ込んでおこう。
……どんな店だよ!!
そして、新生『雑貨屋ミツハ』、いや、『ヤマノ子爵家王都邸』において、更に大きく変更したのが、防犯システムであった。
張り巡らせた赤外線やワイヤーに引っ掛かると、自動的に送信機が作動して信号を発信、ヤマノ領の受信機がそれを受けて、警報が鳴り響く。
小さな領地なので、私がどこにいても聞こえるし、念の為、執事のアントンさんが無線でも私のハンディ機に連絡してくれる。
そして、即座に私が武器庫を経由して、完全装備で出現する、という仕組みである。
自動的に射出される弓矢とかは、誤射が怖いので取りやめた。攻撃は、自分で判断する。
その仕組みを教えてあげると、サビーネちゃんは呆れたような声を出した。
「ミツハお姉様、いったい何と戦っているの?」
う、うるさいわ!
また、屋上に、銃座を作った。
一段高い可動式の台座を作って、そこに重機関銃を設置すれば、全方向に撃ち下ろせるようになっている。
勿論、普段は機関銃本体はなく、有事の際に転送で持ち込むのである。
「……だから、いったい何と戦って……」
サビーネちゃんの、心底呆れた、というような声。
だから、うるさいっつーの!
私は、慎重派である。
クラスメイトの大半は、信じてくれないだろうけど。
でも、幼馴染みの、酒屋のみっちゃんは信じてくれるだろう。……多分。
なので、万一、ヤマノ家王都邸が賊に包囲されたら。もし、転移で逃げられなかったら。そして、街の人々を護らねばならなくなったら。そう考えると、どうしても安全措置を講じておかないと気が済まないのだ。
そして、王都邸の改修工事も終わり、遊戯盤大会の賞品のノルマもようやく終わった。
いよいよ、『俺たちの戦いは、これからだ!』である。
いや、打ち切りエンドじゃないよ。本当だよ。
王都での用事は、ひと段落した。
雷コーンは、ヤマノ領産のものが届いているから、孤児院の方も、一般販売の方も問題ない。
ヤマノ領産の爆裂種を使えば雷コーンが作れると知った商人達や、孤児院の子供達の成功を見ていた屋台の店主達、そして自分達にも参入できるのではないかと考えた浮浪児達が一斉に動き始めたが、どうなることやら……。
そろそろ領地に戻るか、と思っていたら、サビーネちゃんから伝言が。
「とうさまが、顔を出してくれ、って」
王様のお呼びとなれば、無視はできないか……。
「陛下、お呼びですか?」
「おお、よく来てくれた。実はな、他国への警告の件なのだが……」
ああ、そういえば、あったなぁ、そんな話が……。
「近々、各国へ使者を出そうと考えておる。まずは交渉ではなく、こういう事態なので各国が団結せねば、次はいつ、どこの国に上陸するか分からない、との警告だな。
一旦上陸を許せば、この大陸全体が蹂躙されよう。その事実を知らしめ、その後、各国との共同防衛対策のための同盟結成の協議に進めたいと思う」
「……妥当なお考えかと」
うん、それが一番だろうね。さすが王様、ちゃんと考えてるなぁ。
「うむ、参加国で新型船や新式の強力な武器を共同開発する、となれば、皆、参加しないわけには行くまいて……」
うわぁ、悪党!
「ふふふ、陛下、おぬしも悪よのぅ……」
「いやいや、雑貨屋ミツハ、おぬしの方こそ……」
サビーネちゃんが、気に入っている某縮緬問屋の御隠居の物語を聞かせて以来、陛下がおかしな言い回しを覚えてしまい、事あるごとにそれを使いたがるようになってしまったらしい。
なので、よそに被害が出ないよう、こうして私かサビーネちゃんが時々、決め台詞が言えるように場を整えてあげる必要があるのだ。私達ならいいけれど、何も知らない人が王様から突然こんなことを言われたら、大変なことになる可能性だってある。
ああ、めんどくせ~~!!
「それで、使者と補佐の者達、護衛その他は、当然王宮から選抜する。そこで、ミツハ、いや、ヤマノ子爵に頼みたいのは……」
「武器の威力の展示と、『雷の姫巫女』としての権威を示すこと、ですか?」
「そういうことだ」
陛下が、ミツハ、ではなく、わざわざヤマノ子爵、と言い直したということは。
そう。娘のサビーネちゃんのお友達の私としてではなく、陛下の臣下である『ヤマノ子爵』に対する要望である、ということだ。ならば、選択の余地はない。
「御下命、謹んで、承りましてございます」
陛下の御前を辞してから、領地へ帰還。
領地のことをやる前に、自室のベッドに寝転んで考え事。
まず、各国を巡ることについて。
いや、行くのは既に確定事項だ。問題は、どのような形で行くか、だけど……。
まず、行ったことがない所だから、転移では行けない。一度行ったところからなら、戻れるし、再び行くこともできるけど。だから、一度は普通の手段で移動する必要がある。
それを考えると、この遠征は、将来の役に立ちそうだ。
そしてまず決めなきゃならないのは、乗り物について、だ。
揺れてお尻が痛くなるここの馬車で、ずっとむさいおっさん達の話相手をさせられるのは、勘弁! 私が好きなのは、『渋いおじさま』であって、むさいおっさんではない。決して!
それに、王宮の馬車に便乗だと、自分の荷物があまり積めないし、常に人目があるから、色々とやりにくい。
ならば、私の専用馬車を使うか? あれなら、お尻が痛むことはないだろう。
しかし、あれは小型だから積載量が限られるし、シルバー1頭で長旅に耐えられるか?
いくら地球製でも、非舗装路の長時間連続走行で故障したら? 修理は地球でないと無理だし、特注品だから部品の入手にも時間がかかるだろう。
それに、移動にかかる時間が、あまりにも勿体ない。何とか、便利で、楽ちんで、時間が節約できる方法はないものか……。
お金は王様に請求できるだろうから、多少の予算が必要でも構わない。何か、いい方法はないだろうか。
ぴこん!
色々と考えていると、突然閃いた。
ちょっと確認が必要だけど、もしかすると、いけるかも。
ただ、かなりのお金と時間がかかる。条件が合って、王様が金貨を出してくれればいいんだけど……。
と、時間がない!
さっさと仕事を片付けて、確認と、OKならば準備をしなくちゃ!
さて、執務室に行って、アントンさんから不在時の報告を聞かなくちゃ……。
更新は、毎週水曜日の午前零時の予定です。
次回更新は、早速、明日、11日(水)午前零時です。(^^)/




