492 観光旅行 4
今日は、タコ焼き。
昨日のお好み焼きに続く、粉もんの代表格である!
今日のタコ焼きは、2段階で行く。
まずは、事前に調べておいた、今日が神社のお祭りである、小さな町へ。
ここの、出店のタコ焼き。
昔ながらの、経木……木を紙のように薄く削ったもの……で作られた使い捨ての舟皿に載せられて、ソースとカツオ節と青のりをかけて、爪楊枝を2本刺したやつだ。
昔に較べて、値段はすごく高くなっちゃったけど、味は変わっていない。
具を適当にバラ撒いて入れるから、多少の偏りがあるけれど、それもまた一興。チープな出店のタコ焼きとは、そういうものだ、うん。
「はふはふ……、あちちっ!」
あ~、コレットちゃん、がっついて食べるから……。
「慌てて食べると口の中を火傷するって言ったでしょ!」
サビーネちゃんとベアトリスちゃんは、事前の忠告に従って、ゆっくり食べているので問題ない。
ここのタコ焼きは、昔のままのやつだ。
外側がカリカリで中はドロッとしている、カリトロとかいう邪道じゃない。
アレは『タコ焼き』じゃなくて、『タコ焼き揚げ』だよね。何か、口の中を火傷する確率が高そうな気がするし……。
タコ焼きと言えば、コレ!
異論は認めない!!
「……みんな、食べ終わったかな?
じゃ、次行くよ、次!」
「え? お祭りを見るんじゃないの?」
ベアトリスちゃんから、物言いが……。
「いや、ここにはただタコ焼きを食べに来ただけなんだけど……」
ああっ、サビーネちゃんとコレットちゃんが、呆れたような目で見てる……。
「姉様、これは観光旅行であって、別にグルメ旅ってわけじゃないんだから……」
「観光もしようよ……」
は~い……。
* *
あの後、お祭りをゆっくり見て廻り、その後、転移で明石へ。
目的は勿論、『玉子焼き』である。
『玉子焼き』と言っても、みんなが考えているようなものじゃない。
世間一般では『明石焼き』と呼ばれている、普通のタコ焼きより少し大きめで、ふわとろ食感でだし汁につけて食べるやつだ。
それの、現地での名称が、『玉子焼き』。
ナポリに『ナポリタンスパゲティ』がないように。
そして広島に『広島焼き』がないように。
明石には、『明石焼き』など存在しないのだだだ!!
「あ、別にだし汁につけずにソースをつけて食べてもいいし、ソースを少しつけてからだし汁につけて食べてもいいよ。そのあたりは、好きなようにしてね」
うむ、こういうのの食べ方には、作法もルールも必要ない。好きなように食べればいいんだよ。
怪しげなマナー講師も、明石焼きの食べ方にまでは進出していないだろう。
……いないよね?
みんなは、最初は基本通りにだし汁につけて食べ、次にソースで食べて、その後は色々と好きなようにして食べている。
大きいから、10個もあると結構お腹に溜まる。さっき出店版のを食べたし、他の出店でイカ焼きとか色々食べたからね。
綿アメも食べたけれど、……まあ、あれは胃袋の容量には殆ど影響がないか……。
お腹が膨れたら、あとは各地の名所名跡巡り。
移動時間ゼロ、交通費も掛からないというのは、いいよねえ……。
* *
あちこち、廻った。
皇居、伏見稲荷大社、姫路城、京都御所、その他諸々……。
その後、かっぱ橋で調理器具や食品サンプルを見た。
スカイツリーや富士山とかは既に行ったことがあるので、今回は渋いところを中心に廻っている。
かっぱ橋は、まあ、秋葉原と同枠だ。面白いところも入れなきゃね。
そして3人共、なぜか食品サンプルを買っていた……。
それ、食べられないよ、コレットちゃん……。
あ、勿論、フルーツとスイーツのバイキングにも行った。
そこでは、コレットちゃんの本気を見せられたよ。
サビーネちゃんとベアトリスちゃんも、ドン引きしてた。
……コレットちゃん、恐ろしい子……。
そして、何やかやで、日本の『渋いところの見物と食べ歩きの旅』は、終了した。
いや、まあ、移動は転移を使いまくりで、あまり『歩き』はしなかったけどね。
転移を使わなきゃ、こんなにあちこち回れなかったよね……。
ま、そういうわけで、慰労メイン、ベアトリスちゃんの語学研修をサブの目的とした日本の小旅行は終了した。
あ、初日に行ったスーパー銭湯は、ベアトリスちゃんがボーゼス領に建設中の観光施設の運用に口出しできるように、という意図もあったのだ。
……そう、ボーゼス侯爵様やイリス様からの細かい質問や相談が全部私のところに来ると面倒だから、そういうのにいちいち対処しなくていいようにと、ベアトリスちゃんに現物を見せ、体験させたわけだ。
私も、別にスーパー銭湯の専門家だというわけじゃない。
もう、スーパー銭湯に関する知識としては、私とベアトリスちゃんには大きな差はないよ。
……機械設備の仕組み的なことを除いて……。
でも、設備については日本の機械をそのまま導入するのではなく、現地で維持整備ができるものに変更してあるから、そのあたりは現地の技術者に聞けばいいから、問題ないはずだ。
よし、計画通り……。
「ミツハ、次の旅行はいつ?」
そしてベアトリスちゃんから、突然そんな質問が……。
「いや、そんなにしょっちゅう旅行ばかりしていられないよ!
私は忙しいし、サビーネちゃんもベアトリスちゃんも暇じゃないでしょ?」
そうなのだ。
サビーネちゃんは王族としての教育が、そしてベアトリスちゃんは上位貴族の令嬢としての教育がある。
ふたりとも、将来は上位貴族か、下手をすれば王族に嫁ぐかもしれないのだ。勉強しなきゃならないことはたくさんある。芸術や法律等の教養的なものだけでなく、他国の言葉とか、貴族の系譜とかも覚えなきゃならないだろうし、人間関係も築かなきゃならない。
……まあ、人間関係については、ふたりとも人気絶大だし、『ソロリティ』のメンバー達が味方になってくれるから、問題ないだろうけどね。
「それに、あんまりふたりを連れ回していたら、王様やボーゼス侯爵様から苦情が来るよ」
……そうなのだ。もう、既に何度も苦情が来ているんだよ、王様から……。
ボーゼス侯爵様からの苦情が来るのも、時間の問題だろう。
「じゃあ、一度に何日間も行くんじゃなくて、短時間で終わらせるのを頻繁に繰り返せばいいじゃないの。
ミツハの転移を使えば移動時間が必要ないから、短時間でパパッと廻れば、別にいちいちおとうさまの許可を得る必要はないでしょ?」
「うっ……」
確かに、食事だけして帰るなら、1時間もあれば十分か……。
「そうだよ。無理に一度にあちこち廻ろうとせず、一回につきひとつの街、ってことにすればいいんだよ!」
サビーネちゃんからの掩護射撃が加わったぞ……。
う~ん……。
「姉様の『渡り』の力を使えば、ひとつの街の観光くらい、5分もあればできるでしょ?」
「『カンコー・ナガサキ』かっ!!」
いや、そんな昔の自主製作映画、誰が知っとるねん!
『農耕士コンバイン』とか、『明治天皇宇宙の旅』とか……。
「……まあ、考えとくよ……」
コレットちゃんはともかく、サビーネちゃんとベアトリスちゃんに変に言質を取られたら、大変だ。ここは、適当に軽く流しておくしかない……。
お知らせです!
10年振りに、ここ、『小説家になろう』において、新作の執筆を開始しました。
昨日から、掲載を開始しています。
今週中に、書き溜め分である10話を一挙掲載!
来週からは、他の作品と同じく週イチ更新で、木曜の夜……金曜の午前零時に更新する予定です。
私の長編の4作目、よろしくお願いいたします!(^^)/
……あ、作品名は、『神 獣』です。(^^ゞ
https://book1.adouzi.eu.org/n2077lm/




