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450 お嬢様からの依頼 6

「とうちゃ~く!!」

 地球を経由した連続転移で、ミレイシャ嬢の母国であるノーヴェス王国の、王都へ到着。

 この時期だと、ミレイシャ嬢の御家族は領地ではなく王都邸に滞在されていると聞いているし、王都でないと政界の変化とかが分からないからね。


「じゃあ、まずはミレイシャ嬢のおうち、レリスデル伯爵家の王都邸を訪問するよ」

 ちゃんと、ミレイシャ嬢からの手紙を預かっているので、問題ない。

 ミレイシャ嬢の、留学先であるヴァネル王国でのお友達が、たまたまこの国に行くことになったので手紙を預かってきた、という設定だ。


 これなら、歓迎されないわけがないし、向こうはミレイシャ嬢の様子を聞きたがり、私はこっちでのミレイシャ嬢が現在どういう立場なのかを聞きやすくなる。

 勿論、本人から色々と聞いているけれど、自分では分からないこともあるからね。


     *     *


「ようこそお越しくださった! ミレイシャと仲良くしてくださっているとのこと、感謝しておりますぞ!」

 ミレイシャ嬢の御実家である、レリスデル伯爵家の王都邸を訪問して、使用人にミレイシャ嬢に書いてもらった手紙を渡したところ、少し待たされただけで、すぐに奥へと案内された。


 私が頼んだ通りに書かれたあの手紙を読めば、そりゃそうなるだろう。

 私達はミレイシャ嬢と仲良しで、色々と助け合っている、って書かれているのだから。

 他国へ留学した娘の友人を、粗末に扱う親はいないよね。

 ひとりの貴族としても、娘を案じる親としても……。


 そして、お土産のお菓子やお酒を渡し、色々と情報交換を。

 こちらからは、本人から聞いておいた、ミレイシャ嬢の生活振りを。

 今まで出していた手紙では、都合の悪いことは書かずに取り繕ったことばかり書いていただろうから、敢えて失敗談や笑えるエピソードを聞いておいたのが役立って、御家族にすごく喜ばれたよ。


 やっぱり、家族に心配を掛けないようにと、当たり障りのないことしか書いていなかったらしいのだ、今までの手紙には……。

 それが、私の口からミレイシャ嬢の本当の暮らしぶり……多分、これでもかなり脚色されているのだろうけど……が聞けて、本当に安心したみたいだ。


 ……勿論、現在の苦境については、一切喋っていない。少し前の話とか、仲良しの者達とのエピソードばかりだ。

 本人は話すのを嫌がっていたけれど、御家族はそういう話の方が喜ぶから、信用を得るためには絶対に必要だと説得して色々と聞き出したのだ。


 あ、色々と話を聞くために、高級料理店の個室でミレイシャ嬢とこっそり会ったのだけど、その時の護衛の片方は、以前の者じゃなかった。

 あの時に何も言わなかった方と、もうひとりは若い女性だったよ。

 さすがに私に絡んだ方は、適格性に問題があるとして外されたのかな?


 私に会う時だけ外されたのであればともかく、完全に外されて国元に帰されたのであれば、お嬢様の専属護衛を解任されたという不名誉で、色々と大変かもね。

 でも、あんなのを護衛に付けていたら、そのうちもっと大変なことをしでかしそうだから、その方が良かったかもね。


 今流されている悪い噂は、全部が事実無根のデマらしいけれど、私を怒鳴りつけて高圧的な暴言を吐いた、ってことは、十分な『悪い噂』たり得る。……しかも、事実だし。

 私、『ソサエティー』の黒幕だよ?


 おまけに、私は他国の貴族家当主(王族であるという疑惑あり)で、更にヴァネル王国に様々な贅沢品をもたらしている。

 一介の留学生である、無爵のただの貴族家の娘と、私。

 この国の貴族家の皆さんが、どちらを大事にしてくれるかというと……。


 頼み事をする相手である私にすら、あの態度だったのだ。多分、他の令嬢達にも同じような態度だったに違いない。親の爵位や政治的な立場など関係なく、自分が仕えている少女が一番優先されて当然、というような考えで……。


 そんな馬鹿な護衛、百害あって一利なし、だ。

 あのままだと、あの護衛の言動のせいで、ミレイシャ嬢の悪い噂が本当のことだと思われてしまう可能性もあっただろう。


 本当は、あれを制止しなかったもうひとりの方も少し問題があるのだけど、ふたりとも外すと、護衛要員がいなくなってしまうのだろう。

 交代した女性は、普通のメイドなのか、男性が一緒に入れない場所に同行するための、ある程度の戦闘能力を持った護衛メイドなのか……。

 何となく、後者のような気がしたのだけどね。いや、雰囲気とか、目付きとか、動きとかで……。


 ……そして、私からの話の代わりに、逆に御家族からミレイシャ嬢に伝えるべきメッセージや家族の近況、ミレイシャ嬢の友人達の様子やこの国のニュースとかを聞いたのだけど……。

 ひと言で言うならば、『異状なし』、だった。

 どうやら、実家でのゴタゴタ……後継者争いとか、婚約者関係とか……は、ない模様。

 よし、次だ、次!

 撤収!!


     *     *


 そして、ミレイシャ嬢の友人とか、利害関係がある者とかの間を回ったのだけど、気になる情報はなかった。

 手土産とミレイシャ嬢の現況情報のおかげで、みんな、結構口が軽かった。

 私達のことを疑う者は、皆無だったね。


「……こりゃ、この国の人達は関係なさそうだなぁ……」

「うん。私も、怪しい人はいなかったと思うよ」

「…………」

 サビーネちゃんは、出番がなくて、少しガッカリした御様子……。

 ベアトリスちゃんは、無言。

 そういえばベアトリスちゃん、聞き取り調査の時は、ずっと黙ったままだったな。どうして……、あ!


「……ごめん。ベアトリスちゃん、ここの言葉、分からなかったよね……」

「あ……」

 サビーネちゃんも、ぱっかりと口を開けたまま、固まっている。

 サビーネちゃんも、こういう見落としをすることがあるんだ……。


 ベアトリスちゃんも、まさか言葉が違う国へ連れて来られるとは思ってもいなかっただろう。

 いかん、大失敗だ!

「「ごめんなさい……」」

「ううん、別に構わないわよ。私も連れてきてくれただけで、十分嬉しいよ。

 サビーネちゃんとミツハと一緒に遠い異国の観光旅行ができるなら、それだけで十分楽しいよ!

 それに、言葉が分からないからこそ、相手の表情の変化に集中できて、嘘を吐いているかどうかを判別できたからね」


 さすが、ベアトリスちゃん。私達が気にしないようにという心遣いが行き届いているなぁ……。

「ふたりとも、ありがとうね! 私は貴族の腹芸とかにはうといから、そのあたりを見破れるふたりがいてくれて、大助かりだよ!」

 うん、リップサービスは、無料で効果が大きいからね。

 ふたりの表情も、良くなったよ。


 まあ、別にずっと調査ばかりしていたわけじゃない。

 たとえ移動は一瞬であっても、せっかく来たのだから、この国の王都を見て廻り、色々と楽しんだのだ。

 サビーネちゃんは、私と一緒に行動するようになってからあちこちへ行っているけれど、ベアトリスちゃんにはそういう機会が少なかったからね。

 それに、ふたりにとって他国のナマの情報を直接見聞きすることは、将来のためになるだろう。


 とにかく、ふたりとも色々と楽しんでくれたみたいで、良かったよ。

 ……勿論、私もたっぷりと楽しんだよ。

「あ、ふたりとも、今回のことをコレットちゃんに話す時には、あくまでも調査が中心であって、観光は少しだけ、ってことにしてね」


 うん、調査行動のことを隠す必要はないけれど、あまり『楽しかった!』と連発されては、コレットちゃんも面白くないだろう。

 それで不満を口にするような子じゃないけれど、だからこそ、そのあたりは少し気遣わなくちゃねぇ……。

 また今度、コレットちゃんも一緒に遊びに来てもいいかな。


 ……とにかく、今回はこれにて……。

「転移!!」


     *     *


「……さて、原因が本国である可能性は大幅に低下したから、こっちでの調査を進めるか……」

 そう、最初から、本国の方に原因があると思っていたわけじゃない。

 でも、こっちで本格的な調査を行った後で、実は黒幕は本国の者でした~、なんて分かったら、ムカつくじゃない。

 だから、まずはそっちを先に調査したのだ。


 100パーセント完璧に、ってわけじゃないけれど、まあ、それならあの時に分からなくても仕方ないよね、って諦めがつくくらいには。

 これで、この国(ヴァネル王国)での調査に集中できる。


「では、とりあえず『ソサエティー』の臨時集会で、みんなが集めてくれた情報を分析するか……。

 頼りにしてるよ、サビーネちゃん!」

「任せて!」


 ……うん、謀略関連のこととなると、生き生きとしてくるんだよねぇ、サビーネちゃん……。

 あんまり腹黒くなっちゃうと、ちょっと将来が心配だよ……。

 出会った頃は、天使のようだと思っていたのになぁ……。


「……姉様、何か失礼なこと考えてない?」

「イ、イエイエ、トンデモアリマセン……」

 ううう、不信感に満ちたジト目で睨まれてるよ……。

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伯爵を名の通った企業、子爵、男爵を中小企業と捉えると護衛は自分が上の企業の社長一族の取り巻きだから下の企業と見下して社長一族に偉そう無礼働いてるとか鼻持ちならない事やったみたいなかんじですよね。 勘違…
>リップサービスは、無料で効果が大きいからね  そうそうタダだからね。 >出会った頃は、天使のようだと思っていた 読み返してみると、46話でミツハの弱みを握ってから以降、いろいろ要求しだしたな。題…
  「旦那様。お客様がお見えになりました」 「ん? 今日、訪問客の予定はあったかな?」 「いえ、 これを」 予告なしの訪問客に眉をひそめながら、執事から受け取った手紙を見たレリスデル伯爵の顔がぱっと明…
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