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449 お嬢様からの依頼 5

「……ところで、ミレイシャ嬢に私に相談するよう勧めたのは、誰かな?」

「あ、はい、リテス・ド・アルモロト伯爵令嬢ですが……。

 ミツハ様を御紹介いただけて、感謝しておりますわ」

「ふぅん……」


 やはり、『ソサエティー』のメンバーじゃない者か……。

 いや、分かってはいた。メンバーなら、事前に私に相談することなく勝手にそんな真似をしたりはしない。


「私が相談に乗ったこと、その子には内緒にしてね。訪ねたけど断られて追い払われた、ってことにしといて」

「……え?」

 ミレイシャ嬢は、予想外の私の言葉に驚いているけれど、当たり前じゃん。


「その子は、『ソサエティー』のメンバーじゃないし、私が懇意にしている者でもないよ。

 なのに、事前に私の了解を得ることなく、勝手にミレイシャ嬢の問題を押し付けてきたんだよ。

 それによって、もし上手く行ったらミレイシャ嬢に貸しを作れる。自分は何の苦労をすることもなく、ね。

 そして、上手く行かなくても、私とミレイシャ嬢の関係が悪くなるだけで、自分は何の損もしない。

 ……それって、私を勝手に利用しようとしているだけじゃないの? 自分の利益のために、何の許可もなく……。

 私に対する悪意があるとは思わない?」

「あ……」


「だからその子には、私には断られた、って伝えてね。

 そして、友人でもないのに何の断りもなく勝手に他人に紹介するな、って私がすごく怒っていた、って言っておいてね」

「は……、はい……」


 その子には、ミレイシャ嬢ではなく、自分自身がヤマノ子爵家の不興を買ったのだということを、じっくりと認識してもらおう。

 そして勿論、レフィリア貿易も、『ソサエティー』も、同様だ。


 ありゃ、ミレイシャ嬢、少し困ったような顔をしているな?

 自分のことを心配して、わざわざ紹介してくれた子にそんなことを言うのは心苦しいのかな?


「いや、その子が黒幕、って可能性も、ゼロじゃないんだよ?

 私のところに来させたのも、私との関係を悪くさせて『ソサエティー』と敵対させようとしたのかもしれないし。

 黒幕が被害者の近くにいて味方の振りをする、とかいうの、定番じゃん。

 それに、現状では、少なくとも私には好意を持っていないと思うしね。

 事前の相談なく、勝手にミレイシャ嬢をけしかけたという時点で……。

 私や『ソサエティー』を目のかたきにしている敵対派閥とかもあるからね、貴族の中には。

 とにかく、その子は全ての情報をそのまま流していい相手じゃない、ってことだよ」


「な、なる程……」

 自分より年下に見えるサビーネちゃんや私からの指摘に、感心したような、そして自分が不甲斐ないと思ったのか、少し落ち込んだかのような様子の、ミレイシャ嬢。


 まあ、その紹介者である少女が本当に敵である確率はそんなに高くはないと思うけれど、見落としはいけないから、警戒するに越したことはないよね、うん。

 石橋は、叩いて壊す。

 それが、我がヤマノ一族のモットーだよ。

 私を勝手に利用しようとする連中が湧かないようにするためにも、警告的な措置は必要だしね。


「……じゃあ、今日のところはこれで解散ね。こっちの方で、色々と確認しておくよ。

 今後の連絡は、他の者を介して行うからね。

 あと、帰りは、ガッカリした様子で、『不首尾に終わって落ち込んでいる』という感じを演出してね」

「は、はい……」


 敵の見張りがいる可能性も忘れない。

 諜報戦の基本だよねぇ、うんうん!


     *     *


「……で、どうするの?」

 ミレイシャ嬢が帰った後、早速さっそく、サビーネちゃんがそう聞いてきた。

「まずは、情報収集かな。とりあえず『ソサエティー』のみんなに噂について調べてもらって、その間に私は、ミレイシャ嬢の国元に行ってくるよ」


 ミレイシャ嬢が留学のため国元を離れてから、既に何カ月も経っている。その間に、ミレイシャ嬢の実家やら、その派閥を巻き込んだトラブルが発生していないとも限らないからね。

 移動は、転移で一瞬だ。

 以前、航空機でこの大陸を広範囲に飛んでもらったのが、すごく役に立っているのだ。


 それと、私にくっついた、精神生命体である『それ』から引き千切られた一部。

 あれがサポートしてくれていなければ、上空から一度見ただけの場所なんか、覚えていられるはずがない。

 自我はなく、外付けメモリーのように私を補助してくれている、『それ』の一部だったモノ。

 ……色々と助かってます。ありがとうね!


     *     *


 緊急集会を開き、『ソサエティー』のみんなに、協力を要請した。

 私の個人的な依頼ではちょっとマズいので、『悪の手により窮地に立たされた他国からの留学生が、「ソサエティー」に助けを求めてきた』ということにして……。


 ……勿論、みんな、大盛り上がり!

『冒険活劇のようですわ!』とか、『勧善懲悪、正義の味方ですわ!』とか言って、きゃいきゃいと騒いでいた。

 ちょっと心配になって、『秘密の作戦だから、誰にも話しちゃ駄目ですよ! 絶対にバレないようにね!』と何度も念を押しておいたから、大丈夫だとは思うのだけど……。


 それにしても、ミレイシャ嬢は『噂が広まっている』と言っていたけれど、『ソサエティー』のメンバー達の中には、そういう話を聞いている者はいなかったのだ。……ちょっと不思議だな。

 聖女扱いされているうちのメンバー達には、そういう話はしづらかったのかな?

 まあ、それは理解できなくはない。


 でも、さすがにこちらから水を向ければ、話してくれるだろう。

 何せ、『ソサエティー(うち)』のメンバー達と話したい、懇意になりたいと思っている者は多いのだ。こちらから話し掛けて、興味がありそうな様子で話題を振れば、知っている限りのことを全力でさえずってくれるだろう。

 そして、メンバー達が情報収集に務めてくれている間に、私は……。


「準備はいい? 忘れ物はないね?」

「OKだよ!」

「万端よ!」

 私の最終確認の言葉に、元気に答えるサビーネちゃんと、ベアトリスちゃん。


 ……いや、最初は私ひとりで行くつもりだったんだよ……。

 でも、案の定、サビーネちゃんが『私も行く!』って……。

 まあ、それは想定の範囲内だった。

 しかし、ベアトリスちゃんまでついてくることになろうとは……。


 サビーネちゃんが強硬に主張したんだよ、ベアトリスちゃんも連れていこう、って……。

 確かに、ベアトリスちゃんも仲間に引き込んだのに、私達と一緒に行動する機会が少ないんだよね……。

 昔からのお友達であるサビーネちゃんは、それを気にしていたみたいなんだよ。


 いや、仕方ないんだよ、それは……。

 ベアトリスちゃんは侯爵家の御令嬢として色々と勉強することが多いし、家族全員に溺愛されている箱入り令嬢だし、まだ正式に宣言されてはいないけれど、実質上は既に大聖女扱いだし……。

 そうそう気軽に遊び歩ける立場じゃないんだよ。


 ……王女殿下はいいのか、って?

 ははは……。

 サビーネちゃんは、誰にも止められない。


 コレットちゃんは、貴族相手の諜報戦は荷が重いと思って、今回は声を掛けていない。領地邸で、お勉強中だ。

 呼ばれなかったことが後でバレたら、怒られそうだなぁ……。

 ま、仕方ないか。


 では、ミレイシャちゃんの母国、ノーヴェス王国の王都目指して……。

「転移!!」



年末年始休暇として、来週と再来週の2回、更新をお休みさせていただきます。

本年は、御愛読ありがとうございました。

引き続き、来年もよろしくお願いいたします!(^^)/


FUNA

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― 新着の感想 ―
私はこの小説にすっかり夢中だ。
明けましておめでとうございます 新章ですね、今年も楽しませていただきます そういえば死後の世界とか転移出来るのだろうか あなたの知らない世界 なんでしょうか
現実にもいるよね……リテス嬢みたいなタイプ……中には当人同士には気づかれないよう、振る舞うようなタチ悪いタイプもいる…… >精神生命体のカケラ そのうち、どっかの異世界のスキルさんみたいに自我を持ち…
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