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443 その後 2

 そして、やって来ました、ヴィボルト侯爵家のパーティー……。

 パーティーの開催理由は、『ヴィボルト侯爵家の叙爵記念日兼、夫妻の結婚記念日』。

 少しでもパーティーの開催回数を減らして節約すべく、結婚を、敢えて侯爵家の記念日に重ねたらしいのだ。


 いや、男爵家とか貧乏子爵家とかであれば、そういう手を使うのは分かるよ?

 ……でも、羽振りの良い侯爵家も、そんなケチ臭いコトをするの?


「姉様、羽振りが良いのにケチなんじゃないよ。『ケチだから、羽振りが良くなれた』んだよ」

「あ、なる程……」

 さすが、サビーネちゃん。言葉に説得力がある。

 ……さすサビ!

 そして、私の心を読むな!!


「いや、声に出てたよ?」

 また、それか~い!


「まあ、とにかく目立たないように、おとなしくしていようか……」

「『雷の姫巫女』である姉様と私が一緒にいる時点で、目立たないように、っていうのは無理だと思うよ」

「ですよね~!」

 ……うん、知ってた……。


 今日はティーテリーザちゃんの誕生日というわけじゃないから、『ソロリティ』のメンバーは招待されていない。

 普通なら、私も招待されるはずがないんだけどね……。

 そりゃ、『雷の姫巫女様(わたし)』、第三王女殿下サビーネちゃん、そして大聖女様ベアトリスちゃんとかは、呼べれば呼びたいはずだよ。この3人と懇意だってことを強調できれば、色々と役に立つだろうからね。


 でも、王族や大聖女様を、娘と同じ親睦サークルに入っているから、なんて理由で招待できるのは、せいぜい娘本人の誕生パーティーあたりが精一杯だ。とても、両親の結婚記念日だとかお家の創立記念日だとかの理由で呼べるようなもんじゃない。

 ……まあ、それは『雷の姫巫女様(わたし)』にしても同じなんだけどね……。


 でも、だからそれが気になって、受けちゃったわけだ、御招待を……。

 このパーティーで、ティーテリーザちゃんに関して何らかの話があるんじゃないかと思って。

 わざわざ私を招待するなんて、それ以外には理由を思い付かないからね。


 ……オマケとして第三王女殿下サビーネちゃんが付いてきたのは、侯爵家側にとっちゃあ、嬉しい誤算か、それとも大迷惑の阿鼻叫喚か……。

 私のせいじゃない。


 現代日本のパーティーや宴会のような、参加者全員が集まってから主催者の挨拶でスタート、というやり方ではなく、集まった者から順次飲み食いや会話を始めるという方式なので、私やサビーネちゃんに色々な人が話し掛けてきた。


 でも、それらの人達も、私とサビーネちゃんがこのパーティーに出席しているのを奇異に思っているのか、不思議そうな顔をしてはいるものの、そのものズバリの質問をする人はいない。

 うん、そういうのは、はしたない行為だと思われるからね、貴族のルールとしては。

 そういうのは、さりげなく、直接は関係なさそうな会話から範囲を狭めていって、そっちの方へと話題を誘導していくものらしいのだ。


 でも、私とサビーネちゃんに話し掛けたいらしき人が大勢群がっているのに、悠長に話を続けて私達を独占するわけにはいかないし、私は貴族の会話は苦手だから向こうの誘導に上手く乗れないし、サビーネちゃんは上手く話をかわすし……。

 まあ、元々私達も招待された理由を知らないのだから、いくら探りを入れてきても無駄なんだけどね……。




「皆様、本日は、我がヴィボルト侯爵家の叙爵記念日、そして私達の結婚記念のパーティーにお越しいただき、ありがとうございます!」


 あ、招待客がほぼ揃ったのか、主催者の挨拶が始まった。

 何人かは遅れているかもしれないけれど、馬車の車軸が折れたとか、ドレスを汚してしまい着替えに戻ったとか、そういったトラブルに遭った人まで待っているわけにはいかないだろうから、これで締め切ったのだろう。


 ……そして、ありきたりの挨拶があり、歓談の時間となり、再び私達に人がたかり……。

 いや、勿論マナーを守る貴族様達だから、もみくちゃになったりはしないよ。

 ちゃんと順番を守るし、長時間話し続けたりはせずに適宜交代するし……。


 でも、向こうは次々と交代しても、こっちはずっと喋りっぱなしなんだからね!

 少しは料理を食べさせてよ!!


「姉様、あまり食べ過ぎると、また太るよ?」

「『また』、って何よ、『また』って! それじゃまるで、以前は太っていたみたいじゃないの!!

 せっかく上級貴族のパーティーにお呼ばれしたんだから、高そうな料理をお腹いっぱい食べなくてどうするのよ!」


 ……あ……。

 私達にたかっていた人達が、気まずそうな顔をして散っていった……。


「姉様……。

 料理を食べたい私としては、グッジョブ、と言いたいけれど……、淑女教育を受けている先輩として言わせてもらうと、今の発言は3日間の食事抜きモノの失言だよ……」

「…………」

 そりゃ、余程の失態だね、ははは……。


 しかし、教育係には、そんな罰を与えられる程の権限があるのか。

 御令嬢達が、教育係には頭が上がらないはずだよ……。

 え? 水と少量のマズい堅焼きパン、そして干し肉のカケラは与えられる?

 そりゃそうか。

 ……でも、貴族の子女にとっては、かなりキツいよね、それでも……。




 そして、何やかやでしばらく経った頃……。

「皆さん、前方のステージにご注目ください!」

 何か、始まった~!!


 一段高くなっているステージの上にいるのは、ヴィボルト侯爵と、……今では侯爵の娘であり我が『ソロリティ』のメンバーであるティーテリーザちゃんよりも私とサビーネちゃんが仲良しになっている、ヴィボルト侯爵家のメイドである、アルシャちゃんだ。

 左腕は、布を巻いて隠している。


「この娘は、我がヴィボルト侯爵家のメイドです。

 何の変哲もない、本当にただのメイドでした。……少し前までは……。

 しかし先日、賊の襲撃から我が娘を護ろうとして、左腕を失うという大怪我をしました」


 パーティー会場から、おお、とか、ああ、とかいう声が漏れ聞こえてきた。

 護衛や上級使用人であればまだしも、ただの下級使用人が、主人の娘を護るために命を投げ出す。

 そのような忠義の者を持つことに対する羨望の念と、称讃の思い。

 ……そして、片腕を失った少女に対する憐れみの声なのだろうな、おそらく……。


 いくら平民を下に見ている貴族であっても、自分や家族達を命懸けで護ろうとしてくれる者に対しては、感謝や愛着の念を抱かないはずがない。

 なので、素直に感心しているようだけど、侯爵の話には続きがあった。


「……そして、そのメイド、アルシャの行為に感心なされた女神様から、失った左腕の代わりを賜りました。

 アルシャ、皆さんにお見せしなさい」

「はいっ!!」

 そして、巻いていた布を解き、隠していた左手を露わにして、その腕を頭上に高く突き上げるアルシャちゃん。


 ぎっちょん、ぎっちょん……。


 まだ訓練を始めたばかりなので、日常生活に自由に使えるほどには上達していないはず。

 しかし、デモンストレーションとしての指の開閉くらいはこなせるようになっているアルシャちゃんが、筋電義手を動かした。指の開閉や、肩をぐるぐると大きく回したりと、今現在、自分ができる限りのことを……。

 アルシャちゃんは前腕の欠損だから、肩を回すというのは怪我とは全く関係ないはず……。


 とにかく、まだ思うようには動かせないはずなのに、まるで自由自在に動かせるかのように、上手く演技しているアルシャちゃん。

 こりゃ、かなり練習したな……。

 義手の操作訓練ではなく、いかにも自由自在に動かせますよ、っていう演技の練習の方を……。


 1~2年……、いや、この子なら、数カ月練習すれば本当にかなり自由に動かせるようになるだろうし、別に嘘を吐いているわけじゃないんだよねぇ。

 ただ、少ない動きでも見栄えがいいように、計算された動かし方をしているだけで……。

 これ、振り付け師というか、指導者がいるよね?

 そして、それらを指示できる者と言えば……。

 侯爵の仕込みか?


 ……いや、いいんだけどね。

 こうして派手に公表したということは、もう侯爵はアルシャちゃんに粗末な扱いは絶対にできないということだからね。

 娘の恩人を簡単に首にしたりすれば、影で何を言われるか分かったもんじゃないからね。

 よしよし、これでアルシャちゃんは安泰だ。

 万一首になったとしても、自分の命を盾にして主人の家族を護ってくれるメイドなんだ、雇ってくれる貴族家はあるだろう。

 ……女神の祝福付きだしね。



お知らせです!(^^)/


拙作、『私、能力は平均値でって言ったよね!』のイラストを担当していただいております亜方逸樹先生の長年の相棒である、茉森晶先生の小説が、11月7日、SQEXノベルから刊行されました!


『黒魔女アーネスの、使い魔の、推しごと ~転生召喚されたし、ご主人様を国民的アイドルにするぞ!~』

書き下ろし小説であり、イラスト担当は、勿論、亜方逸樹先生!!(^^)/

幼い黒魔女アーネスに、小さなワンコ姿の使い魔として召喚された陽司。

今、異世界で、ふたりのアイドルを目指した戦いが始まる!!

……白魔女、天聖火竜、魔法騎士団とかを巻き込んで……。


よろしくお願いいたします!!(^^)/

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― 新着の感想 ―
義手と言えばハガレンの義手が思い浮かぶ
義手のお披露目をするから主人公らを招待した……? しかしてその真意は?
ぎっちょん、ぎっちょん、、、、www なんかマゾー様の腕を想像してしまった FUNAさん、継ぎ目に鋲とかないよね?
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