表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
413/492

413 招 待 2

「え……」


 一瞬言葉に詰まった王様と、口を半開きにした宰相様。

 ……そして、にっこりと微笑むサビーネちゃん……。

 うん、サビーネちゃんは分かってるな。

 私が、何を考えてこの質問をしたのか、ってことを。


 この国の下級貴族として呼ばれたなら、一応、王様の顔を立てなきゃならない。

 ……一応、ね。

 王様の部下というような立場であり、公僕としての身分で行くわけだからね。

 でも、『雷の姫巫女』として呼ばれたならば、今現在たまたま住んでいる(・・・・・・・・・)というだけの場所くにとは関係なく、最初から最後まで『御使い様』として行動してあげる。


 ……そうだよ。

 売られた喧嘩は買う。それが、我が山野家のポリシーだ。

 だから、山野家の最後の生き残りである私は、それを守り、次代に伝えねばならないのだ。

 相手に、畏怖に満ちた口調で『あのミツハが、最後の一匹だとは思えない……』と言わせるために。


「この前帝国へ行った時に、良い感じの岩山を見つけておいたんですよ……」

 王様、宰相様、そしてサビーネちゃんも、私の言葉の意味が分からず、ぽかんとしてる。

 うん、いくらサビーネちゃんでも、ノーヒントじゃ分からないよね。

 私の本気の攻撃……転移爆撃や隕石落とし(メテオ・ストライク)とかは敵側の人しか見ていないし、見た人達も、何をされたか(・・・・・・)ということは理解していないだろう。


 その、隕石落とし(メテオ・ストライク)に使う岩塊や、上空から降ってくる巨大な円柱状というか両端が尖った棒状の岩というか、そういうものを転移で切り出すのに丁度良い感じの岩山があったから、記憶に留めておいたのだ。

 岩山くらいヤマノ子爵領にもあるけれど、岩も資源のひとつだ。何かいい成分が含まれていないとも限らないし、岩山が転移で削られてガタガタになるのも嫌だしね。

 だから、帝国の広大な山岳地帯にある、いい感じの岩山に目を付けておいたわけだ。

 ……先見の明があるよね、私!


 かなり上空に転移しても、短時間であれば宇宙服スペーススーツなしで船外活動(E V A)(Extravehicular Activity)をやっても、どうということはない。

 気圧が低くて体液が沸騰することも、急に水面近くまで上がってきたため眼が飛び出した深海魚みたいになることも、全身が凍り付くこともないはずだ。

 ……ごく短時間であれば、ね。


「王様、先程の質問のお答えは?」

「あ、ああ……。

 向こうが名指なざししてきたのは、『雷の姫巫女』としてのミツハだ。

 まぁ、一国の王が他国の女子爵を、それも未婚の少女を呼び付けたなどという話が広まるのは、あまり歓迎すべきことではないであろうからな。

 なので、特別な立場の者として招くしかあるまい」


 うん、納得!

 それに、向こうは私のことを玩具オモチャ扱いしているのだろう、多分。

 もし私のことを本当に『女神の御寵愛を受けし愛し子』とか『御使い様』、『姫巫女様』とか思っていたら、こんな無礼な真似はしないよね。


 だから、私のことは『士気高揚のために神輿として担ぎ上げられただけの、ただの下級貴族の娘』だと思っており、茶化して、笑いものにでもする気なのかな?

 そして、我が国に恥を掻かせてマウントを取る、と……。


 我が国が同盟の議長国になったり、拿捕した超巨大戦艦を保有したり、自国での軍艦建造や新兵器……銃や大砲……の開発の中心となったりしているのが面白くないのかな。

 格下国(のび太)のくせに、とか……。


 あは。

 あはは。

 あはははははは……。


「ミ、ミツハ……、怖いから、笑うのをやめてくれ……」

 あ、声に出てた?


「じゃあ、私はこの国の貴族としてではなく、『雷の姫巫女』として行動すればいいんですよね?

 私が何をしても、それは『女神の御寵愛を受けし愛し子』としての行動であり、この国には一切関係がなく、御迷惑をおかけすることはない、と……。

 そして、向こうが要求することは全て拒否し、この国に不利益をもたらすぞ、とかいって脅されても気にする必要はなく、何らかの束縛や強要が行われそうになった場合は、全力で反撃……抵抗しても問題はない、と……」


「問題、大ありだ!!」

「え? それじゃあ、黙って捕らえられろ、と?」

「……いや、そういうわけでは……」

「じゃあ、どうしろと?」

「「…………」」


 王様も宰相様も、黙り込んじゃったよ……。

 うん、どうしても無理が出るよねぇ、王様の要望を全て満たすという条件では……。

 この事態を招いた一因は、私のことが他国に正確に伝わった場合、私の身柄や私から得られるメリットをこの国が独占するのは許せないと言って各国から色々な要求が来るのを防ぐために、私についてはあまり情報を出していないからだ。


 帝国との戦いについては、国からの公式発表においては私の関与は大幅にカットされて、兵士の士気高揚のための神輿、旗振り役程度として説明されている。

 でも、王都にいた大勢の人達……他国の者を含む……が直接目撃していたわけだから、当然、本当のことも伝わっている。

 だから私の評価は、国によって、そして人によって大きく異なるわけだ。

 なので、こういった、面白半分での『化けの皮を剥がしてやる!』とかいう連中が現れるわけだよねぇ……。


「行くのは、私単独で、ですよね? まさか国の正規軍を護衛に引き連れて、とかいうわけには行かないし、ヤマノ子爵領にはまともな兵士はいないし……。

 まあ、そもそも『ビッグ・ローリー』に随伴できる騎士も歩兵もいないだろうけど」


 実際には転移を多用して移動するけれど、表向きは子爵家(うち)のキャンピングカー、『ビッグ・ローリー』で行くことになる。

 いや、それは『この国においての、表向き』であって、向こうの国に対する表向きは、出番の少ない子爵家うちの特製馬車(地球製)で行くことになるのだけどね。

 目的地の手前で乗り換えればいいだけのことだ。


 街道を驀進ばくしんする『ビッグ・ローリー』を見られたところで、大した問題はないだろう。

 既に条約根回しの旅で他国の者達にも見られているし、今回の往路で見られても、その話が向こうの王都に伝わる頃には、私達は既に訪問を終えて帰路に就いているからね。

 ……うん、問題ないない!


「あ、王様。今回の御招待が、全く悪意のない、本当に御好意からのものだという可能性はありますか?」

「も、勿論あるとも! だから、最初から喧嘩腰で行く必要は……」

「どれくらい?」

「え?」

「その確率は、どれくらいなのですか? 御好意での招待であるという確率は……」


「うむむむむ……」

 王様は、顎に手を当ててしばらく考えた後、答えてくれた。

「……まぁ、1割弱、くらいかな……」


「「駄目じゃん!!」」

 私とサビーネちゃんの声が揃った。



『のうきん』リブートコミックス第5巻(スクエニ版。完結)、12日(火)刊行です!

よろしくお願いいたします!(^^)/


そして、『ポーション』アニメ、4月3日(水)~6月19日(水)2430~2500 BSフジにて再放送です!!(^^)/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ミツハならチェイテピラミッド白鷺城を秒でつくれるし王宮周りの岩盤をくり抜いて魔王城か吸血鬼城かってシロモノだってつくれるものなぁ……
[一言] 「両端がとがった棒状の岩山」って、まさか「火星の虹」の棒状小惑星のアレですかね。だとしたらとっても面白い光景が見られそうですね。期待しています w
[一言] ……ごく短時間であれば、ね。 確かにそれはそうなんですが、 鍛えた人間で2分程度が限度らしいですが。 …まあ、実演したワケじゃないですが。 1割弱…ということは、ざっと8%ぐらいのカン…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ