409 ソロリティ 14
「あなた、お名前は?」
「あ、は、はい、ネレテス男爵家の7女、カトルナと申します。先日、12歳になりました……」
えええ! 9歳か10歳くらいかと思ってたよ!
あ、いつも幼く見られるから、名前だけじゃなく、わざわざ年齢も口にしたわけか。
言わないと、絶対に10歳以下だと思われる、と考えて……。
いや、その気持ちは分かる! よおおぉ〜〜く分かるよ、カトルナちゃん!!
……そして、7女……。
男の子も同数いるとすれば、14人兄弟か……。
いや、7女というだけで、末っ子だとは限らないな。
そうすると、もっと兄弟が多いという可能性も……。
そんな人数だと、奥さんがひとりじゃ厳しいだろうな。多分、第二夫人や第三夫人とかがいるのだろう。
愛人の子は爵位継承権がないので兄弟の数にはカウントされないから、実際にはもっと多かったりして……。
いや、羽振りの良い伯爵家とか侯爵家であれば、それくらい何でもないかもしれないよ?
でも、貧乏男爵家(カトルナちゃんの自己申告)だと、ちょっと厳しくない?
愛人の子じゃない、第二夫人や第三夫人の子供達は、全員にきちんとした教育を受けさせて、社交界に出さなきゃならないんだよ? デビュタント・ボールや成人の儀、誕生パーティー、その他諸々があるんだよ?
自分の家が開催するパーティーだけでなく、他家のパーティーに行くにもお金がかかるんだよ、ドレス代とか装飾品代とか……。
他家のパーティーに行くための費用は、男の子の場合は女の子よりは安く上がるけど……。
でも、それが、10人分以上。……下手をすれば、20人近くいるかもしれない。
……正気か、貧乏男爵!!
あ。私の微妙な表情を見て、カトルナちゃんがショボ〜ンとしたような顔をしている。
うん、自己紹介で7女だと言った時、大抵の者は同じことを考えて、同じような表情をするのだろうなぁ……。
相手にとっては1回だけのことでも、カトルナちゃんにとっては、自己紹介の度に繰り返されるわけだ。何十回も、何百回も……。
分かる! 分かるよ、カトルナちゃん!!
私も、年齢を言う度に繰り返されるからね、あの驚愕と不信に満ちた表情を見ることになるのを……。
よし、この子は私が守る!!
ぎゃっ!
……どうして、サビーネちゃんが不愉快そうな顔をして私の足を踏むのよ!
「……確かに、カトルナちゃんが言うことにも一理ありますね。
みんなの意見なのに、それを最終的にアデレートちゃんに伝えた者だけにその責任を全て被せるというのは、確かに間違っていますよね。
『ソロリティ』は、メリットも楽しいことも、みんなで分かち合います。
……ならば、不利益も苦しみも、みんなで分け合うべきですよね? それが、本当の仲間、お友達というものでしょう?」
「「「「「「…………」」」」」」
静寂が広がる。
……でも、それは先程までの、居たたまれないような、居心地の悪いものじゃない。
みんな、目をうるうるとさせている。
よし、行ける!!
「『ソロリティ』は、みんなで楽しく交流するための、愉快なお遊びの場です。決して、仲間が不幸になったりしてはいけませんし、それを看過してはいけません。
自分の過ちは、気付いて反省すればいい。お友達の過ちは、気付かせ、一緒に償いの行為に付き合ってあげればいい。
……私達は、固い友情で結ばれた、『ソロリティ』の仲間なのですから!」
「……」
「「「…………」」」
「「「「「「………………」」」」」」
うわああああぁ〜〜!!
上がる歓声。
笑い声と泣き声。
「カトルナちゃん……」
あ、ティーテリーザちゃんとラステナちゃんが、カトルナちゃんに抱き付いて、泣きじゃくってるぞ。涙と鼻水で、顔がぐちゃぐちゃになってる……。
まあ、そりゃそうか。
取り巻きの者達からも見捨てられかけていたのに、あまり言葉を交わしたこともない、下級貴族の娘と見下していた小さな……年齢ではなく、見た目が……女の子に、救われたのだから。
そして、本人の顔だけでなく、カトルナちゃんのドレスも、ふたりの涙と鼻水で、ぐちゃぐちゃに……。
それって、カトルナちゃんにとってはかなりマズいのでは……。
「あ、あの、私、パーティーやお茶会に着て行けるドレスはこれ一着しかないのですが……」
ほらぁ! カトルナちゃんまで、泣きそうな顔になってるよ……。
「そんなの、私がお贈りしますわよ! 今日のことをお父様とお母様に話せば、あなた、我が家では超VIP扱いですわよっ!」
「私も贈りますわ! 王宮の舞踏会に着て行ってもおかしくない、立派なものを!!」
ティーテリーザちゃんとラステナちゃんがそう言ってくれるなら、安心だね。
侯爵家と羽振りの良い伯爵家が、娘の人生を救ってくれた恩人に贈るドレスだ、さぞかし立派なものが贈られることだろう。
「いえ、そんなの戴きましても、一生着る機会がありませんよっ! もし戴けるのでしたら、普通の、お茶会や下級貴族家のパーティーに着て行けるものでお願いします!」
くれるというのは、辞退しないんだ……。
まあ、貧乏男爵家の7女ならば、安物どころか、下手をすれば姉達のお古を着せられるかもしれない。そりゃ、意地だとか矜持だとか言っている場合じゃないか。
それに、ちっこくて可愛らしく、そして勇気があるカトルナちゃんには、そういう物言いが似合っている。
……アレだ。100万人の妹。マスコット。愛玩動物。
かわええのう……、痛っ!
だから、どうして私の足を踏んづけて、睨み付けるのかな、サビーネちゃん……。




