400 パーティーの開催 8
「56! 56ですよっ!」
「当たったああァ!」
「私もですっ!!」
どこかの貴族家のご当主らしき人と、15~16歳くらいの女の子が、それぞれカードを掲げながら前へと飛び出してきた。
……いや、急がなくても賞品は逃げやしないよ……。
「酒の木箱だっ!」
「ドレスの仕立て券ですっ!」
あ〜、うん。
新大陸じゃあ、大々的にお酒を売っているけれど、こっちじゃ殆ど売っていないんだよねぇ。
私が食前酒かワインを少し飲む以外はお酒は殆ど飲まないというのは知れ渡っているから、友人達がお酒を大量に送ってくれるというのは不自然だからね。
アデレートちゃんやボーゼス家のパーティの時は、私から頼んで送ってもらった、ってことにしているし。
……まぁ、今となってはそんなことを信じている人は殆どいないだろうけどさ……。
とにかく、そういうわけで、ウイスキーとブランデー、ラム酒、合わせて12本というのは、酒飲みにとってはかなりレアなはずだ。それをパーティーで出すとなれば、高位貴族や王族すら招待に応じる可能性があるらしい。
……まぁ、社交的に『すごく強力な武器』ってことだ。
でも、この喜びようだと、多分全部自分が飲むつもりだな。
パーティーで一度に使い果たすなんて考えは、カケラもなさそうだ。
そして仕立て券の方も、この国ではなく、私の母国の生地と技術で作られる、と説明してある。
まぁ、社交界にデビューして間のない少女としては、欲しいよねぇ、姫巫女様の母国の技術力で作られたドレス……。
実は、私が着ているだけじゃなく、サビーネちゃんとベアトリスちゃんにプレゼントして、既に他のパーティーでお披露目したことがあるんだよねぇ、私の母国製のドレスという触れ込みで……。
勿論、貴腐人店長作。パーティー参加者全員の注目を集めまくったよ、うん。
この世界では斬新なデザイン、あり得ないほど素晴らしい素材、そしてふんだんに使用された数々の宝石(人造宝石)。
私のドレスは、あまり目立たないようにと、モノは良いけれどシンプルなものが多かったのだ。
でも、サビーネちゃんとベアトリスちゃんのドレスは、自重なしで作った。店長が……。
……うん、そりゃ、食い付くわなぁ……。
そして実は、今日サビ・コレコンビとベアトリスちゃんの3人が着ているのも、その『姫巫女様の母国製ドレス』なんだよね。
勿論、これも貴腐人店長作。本日初公開の、新作ドレスだ。
この3人は私の転移能力と日本のことを知っているから、小細工なしで、直接日本へ行って貴腐人店長に採寸してもらった。
……店長は狂喜して、鼻血を噴きそうだったよ。
みんなには、日本があるのは『遥か海の彼方の、遠い国』ということで、異世界ということは教えていない。
サビーネちゃんには、そろそろバレていそうな気もするけれど……。
日本留学の3カ月間で、私が管制していない情報を手に入れただろうからねぇ、お友達とかテレビとか、色々なルートで……。
ま、私の母国や日本とこの国とは、『母国の特殊な船でないと、行き来することは不可能』ということになっているから、海の彼方だろうが異世界だろうが、同じだ。
子供用とはいえ、店長にはモノホンの上位貴族や王族のお姫様だと説明してあるから、お金に糸目を付けずに最高の素材と最高の技術力を投入してある。
王様も財務大臣もボーゼス侯爵も、出来上がったドレスを見た瞬間、『本当に、あんな価格で良いのか?』と念を押してきたよ。
まぁ、縫い付けてあるの、本物の宝石だとでも思ったのだろうな。
……いや、確かに本物か。神の手ではなく、人の手によって造られた、というだけで……。
この子のドレスにも、人造宝石をたくさん縫い付けてやろうかな。
渡す時には、気を失ってもいいように、左右と後ろに人を配置しておかなきゃね。
そして、次々と数字が揃い、ビンゴとなる者が続出。
同時に複数のビンゴ者が出た時は、箱の中のピンポン玉を掴み出させて、数が大きい者から賞品を選択させた。
勿論、それは抽選とは関係ないから、引いたピンポン玉は箱の中へ戻す。
その番号が抽選番号であればビンゴであった者達から悲鳴が上がるけれど、知らんがな……。
そうこうしているうちに、遂に賞品の残りが3個……うちふたつは亀の子タワシ……となった。ひとつ減った賞品の分、予備のタワシを1個追加したからね。
そして皆が固唾を呑んで見守る中、サビーネちゃんによりピンポン玉が掴み出され……。
「63! 63です!」
「「「「「「うおおおおおぉ〜〜!!」」」」」」
「当たった! 当たったぞおぉっ!」
「私もですっ!」
「儂もじゃ!」
「わ、わたしも……」
何と、4人もビンゴが出てしまった。
……いや、まぁ、みんな複数のリーチ目が揃っている頃だから、こんなもんか。もっと多くても不思議じゃないし。
そして、4人で箱の中からピンポン玉を掴み出し、合図で一斉にそれらを差し出した。
「やったああ!!」
「「「あああああああ〜〜っっ!」」」
歓喜の叫びがひとつと、絶望に満ちた悲痛な叫びが3つ。
無理もない。まともな賞品はあとひとつだけで、その他は亀の子タワシが2個。
そりゃ、一番になった人以外はがっかりするよね。
そして、当然のことながら、タワシじゃない方を選んだ、一番の人。
それを手渡して、次に、二番と三番だった人に亀の子タワシを渡し……。
「タワシの副賞の、我が母国最高峰のナイフ……、いえ、『ニャイフ』です!
あとのおひとりも、同列28位なのですから、同じものを……」
「「「「えええええっ!」」」」
ピンポン玉勝負で一番になって、亀の子タワシじゃない方……お菓子の詰め合わせ……を選んだ人も含めて、同時ビンゴの4人全員が……、いや、その他のお客さん達も、大声を上げている。
うちの母国のナイフとして、ガーバーやらスイスアーミーナイフやらをほんの数本だけ、王様に献上したり貴族に高値で売ったりして、モノの良さを宣伝済みなんだよね。
ボーゼス侯爵様も、初めてお会いした時に贈ったやつをあちこちで見せびらかして自慢したそうだし。
……ホント、男の人って、どうしてナイフとかがあんなに好きなんだか……。
で、それらを渡す時には、『私の母国製のナイフ』と言って渡したんだよね。
そして今、私は『我が母国最高峰のナイフ』……、いや、『ニャイフ』だと言った。
……これ、冗談ではなく正式な商品名なんだよね、『ニャイフ』。猫のシルエットや足跡がレーザーで刻印されてるの。
とにかく、そう言ったわけで、それは今までのやつより上だってことだ。
うん、お菓子の詰め合わせを選んだ人、ざ〜んね〜ん!
同時ビンゴの4人の中には、女性と少女も含まれていた。だから、敢えて自分はタワシを選んで、お菓子の詰め合わせは他の者に譲る、という選択肢があったはずだよね。
これが宝石やお酒とかであればともかく、お菓子なんだから……。
どうやら、あなたは『勇者』ではなかったようだね、うん。
「これにて、ビンゴ大会は終了です! 皆さん、引き続き、御歓談をお楽しみください!」
うん、私もヤマノ領の生産物の宣伝や商談をしなきゃなんないからね。
お客さん達も、ビンゴで当たった人は貰った賞品について周りの人達と話しているし、テーブルゲームや料理コーナーに散ったり、大型遊具の方へ戻る子供達に付き添ったりと、色々だ。
さて、ちょっと商談をして、その後、次の演し物の準備をしなくちゃね……。
『ろうきん』、遂に400話です!(^^)/
2015年11月2日の第1話投稿から、8年間。
1年の休載期間を挟みますので、実質の執筆期間は7年。
それでどうして400話かというと、休載前の『第一シーズン』は、毎日更新していたからです。
1日遅れの、2015年11月3日から連載を開始した『ポーション』と共に、2作品毎日更新。
そして、いただいた御感想には、全て返しを書いていました。(^^ゞ
……良い子のみんなは、決して真似をしてはいけません。
それ以外のことが何もできなくなるし、夢の中でも小説書いてるし、身体を壊します。(^^)/
8年間。
読者の皆さんを始め、多くの人達のおかげで、書籍化、コミカライズ、そして夢のアニメ化まで到達することができました。
ありがとうございます!
そして、引き続き、本作にお付き合いいただけますよう、よろしくお願いいたします!(^^)/
FUNA




