267 帝国の興亡 3
「……で、また戦争か?」
「うん」
攻撃専用じゃないヘリ1機だけなら、何か特別な用途に、ということもあるだろうけど、その後の、分隊支援火器と擲弾筒の発注があるからね。大規模な戦闘があるに決まってる。
「よし、ウルフファング総勢59名、いつでも出撃するぞ!」
何だか、やる気バリバリの隊長さんだけど、ここで残念なお知らせを……。
「あ、いや、ヘリチームの他には、ウルフファングからは6人くらいでいいよ」
「……え?」
「いや、6人くらいでいい、って……」
「え?」
「6人くらいで……」
「えええええええ~~っっ!!」
その後、かなりしつこく食い下がられたけど、こっちにも都合というものがあるんだよ。
そして、具体的な弾薬量とかについて、色々と相談。
何とかもっと人数を増やしてくれ、と隊長さんがうるさいけど、スルー。
人数がそんなに少ないと、メンバーを選抜するのに血の雨が降る、とか言ってるけど。
……いや、知らんがな……。
ヘリに乗るのもウルフファングのメンバーに、と言われたけれど、パイロットだけでなく、ヘリに乗り込む戦闘要員も全員がヘリを持ってるところの人達でなきゃ駄目だろう。チームワークというものがあるし、機上からの攻撃というのは、慣れていない者がぶっつけ本番でやって上手くいくとは思えない。
そもそも、揺れる機上でバランス崩して落ちられちゃ、堪らない。
だから、ヘリ関連は全部向こうの人達に任せるのが間違いなくて安心だ。
でも、知らない人達だけを連れていくのは心配だし、私達地上組のサポート要員として、ウルフファングからも最低限の人数は出してもらいたい。それが、『6人』ということだ。
……そして、万一の場合にはヘリチームを始末するための要員、ってわけだ。
今回は、前の『ゼグレイウス王国、王都絶対防衛戦』の時とは違う。
あんなに時間的に逼迫しているわけじゃないし、私が住む街が攻撃対象だというわけでもない。それどころか、余所の戦争に横から殴りかかる、第三者だ。
なので、全部私がやっちゃうわけにはいかない。
あくまでも、私はお手伝いに過ぎず、戦いに勝利するのはレミア王女達、ダリスソン王国の人々でないと駄目なんだ。
最初から私が全力でやれば、……そしてウルフファング全員を連れていけば、こちら側の死傷者は殆どなしで帝国軍を撃退できるかもしれない。
……でも、それじゃ駄目なんだ。
ダリスソン王国にとっても、敵国アルダー帝国にとっても、私や私が所属するゼグレイウス王国にとっても、……そして新大陸の国々からの侵略に備えて団結する『大同盟』の国々にとっても。
戦争を、味方側にひとりの死傷者も出さずに終わらせようと考えるなんて、とんでもない傲慢だ。
……いや、無茶をやれば、できるかもしれないよ、そりゃ。
でも、そんなのはまともなことじゃないし、『まともじゃないこと』を当然のことのように考えたり、それを当てにするようなことを考えたりする者が国の中枢部に現れ始めたら……。
だから、それはやっちゃいけない。
いくら、そのために多数の死傷者が出ようとも。
自分達の国は、自分達で守らなきゃ駄目だ。
突然現れた、都合のいい神様に解決してもらったのでは、人々の努力も尊厳も、何もない。国も兵士も必要なくなる。
……そして、神様は、そのうちいなくなる。
いくらレミア王女の頼みであっても、物事、『限度』というものがある。
そして、何をどこまでやるかは、私が決める。
私がやること、やったことに対して責任を取ってくれるのは、私以外には誰もいないのだから。
ヘリと、ヘリチームに対する押さえ、そしてヤマノ領の兵のフォローのためにやむなくウルフファングに数名のお手伝い要員をお願いせざるを得ないけど、本当は、それも不本意なんだよねぇ。
でも、仕方ない。何でも思い通りにできるわけじゃないし、うちの兵だけじゃ不安すぎるからねぇ……。
ま、依頼主は私だ。依頼通りにやってもらうしかない。
* *
「ヘリの方は、話が付いたぞ。2機持ってるとこが2機とも出してくれるとさ。
故障や定期整備に備えて、そして2機ともトラブった時には共食い整備で1機は確実に飛ばせるように、ってことで2機態勢らしいけど、今は2機共飛ばせるらしい」
ふむふむ。
まぁ、航空機は車両に較べて稼働率が低いからねぇ。1機しか持っていないんじゃ、使えない期間が長すぎて、ヘリの保有を売りにして仕事を取るのが難しくなるからね。
……しかし、2機か……。
本当は1機でも良かったんだけど、2機だとより確実性が増すし、時間も短縮できる。
それに、1機だと直前になって機体に不具合が発生、とかになると困るし。
ここは、2機使えるということに感謝すべきだろう。
……そして2機ならば、携帯式の対空ミサイルが3発あれば大丈夫だろう。
ウルフファングのみんなは、ヘリは持っていなくても、敵のヘリを相手にして生き延びることにかけてはプロフェッショナルなのだから。
そして、燃料も整備器材や交換部品の補充もなければ、ヘリなんかすぐに飛べなくなる。
空母も母基地も支援態勢もない航空機なんか、使い捨てにしかできないものね。
まぁ、2機ということは喜ぶべきことなんだけど、ひとつだけ、問題がある。
「ねぇ、隊長さん。それ、いくらで話を付けてきてくれたの?」
……そう、ギャラ。依頼料のことである。
2機であれば当然、機体費用も人件費も、全て2倍。いくらの出費となるのか……。
「30万だ」
「え?」
30万ドル。日本円にして、3000万円以上だ。
前回のウルフファングに対する報酬額は、最終的には追加報酬を加えて金貨6万枚だったけど、依頼時に提示したのは最低保証額4万枚、10億円ちょいだ。57人で割ると、ひとりあたり1800万弱?
それに対して、ヘリ1機あたり7人としても、2機で14人。それで3000万円だと、ひとりあたり200万ちょいにしかならない。
1日あたりの稼ぎとしては破格かもしれないけれど、死ぬか生きるか、文字通りの『命懸けの仕事』なんだから、それにしては安すぎるような気がする。
それに、ヘリの経費が馬鹿高いはずだから、そりゃ被害なしで減価償却を考えなきゃ黒字にはなっても、危険度に対して『割に合わない仕事』になっちゃうのでは……。
「勿論、武器弾薬の経費は別だよね? それにしても、ちょっと安すぎない?」
実費は、『料金』という形じゃないけれど、謝礼金というか、うちの国が信仰している女神様に対する奉納金というか、そういう形でレミア王女の国からちゃんと戴く予定だから、別に私が自腹を切るつもりはない。
……レミア王女が払い渋ったら少し脅すつもりなので、回収できないということはないだろう。
いや、何が悲しゅーて、他人に頼まれた余所の戦争の手伝いで自腹切らなアカンねん!
まぁ、だから、無理に値切る必要はないんだ。命を懸けた仕事を受けてくれたプロに対して、そんな恥知らずな真似はできないよ!
「え……。もっと高くしろってか? 悪い奴らじゃないんだ、あんまり苛めてやらんでほしいんだが……」
「え?」
「え?」
……何か、話が噛み合っていない?
「……あの、依頼料の話だよね? ヘリ2機と乗員に参戦してもらうための……」
「……参加料の話だが? 異世界での戦いに参加させてやるということに対しての……」
「えええええええ~~っっ!」
何と、依頼料を払うのではなく、『異世界に連れていって、戦いに参加させてやる』ということで、『参加料』を取ると?
……何じゃ、そりゃあああ!!
「いや、異世界で俺、俺つ、……『俺TUEEE!』だったか、とにかく一方的に無双して人々を守り、英雄や勇者になって凱旋、っていうのは、男の夢だからなぁ……。
しかも、俺達も奴らも傭兵だぞ、分かるだろうが、ホラ……。
それに、前回それやった俺達の現状を知ってりゃ、自分達も、って考えるに決まってるだろうが」
あ……。
ウルフファングがドラゴン素材で大儲けして一生安泰、ってのは、そりゃ傭兵仲間には知れ渡ってるよねぇ。自分達も、って思うのは当たり前か。
そしてそのチャンスが得られるというのなら、そりゃ参加の権利を手に入れるために有り金叩くわなぁ……。
「本当は無料でもいいんだが、そうなると、後で他の傭兵団から妬まれたり文句が出たりするかも……、いや、確実に出るからな。一応、高額の参加料を取っての契約、ってことにして、贔屓だの何だのと言われないようにしとかなきゃならんのだ。
傭兵団はそんなに景気がいいわけじゃないからな、30万ドルで勘弁してやってくれないか?」
「私、そんなに強欲じゃないよっっ!!」
本当はこっちが大金を払うつもりだったし、勿論無料でも全然構わないんだけど、まぁ、業界の事情としてそういう理由があるなら仕方ない。……というか、ありがたい。
でも、ただ働きどころか、持ち出しで大赤字とかになったんじゃ、申し訳なさ過ぎる。
こりゃ、成功報酬として、何かお金になるネタを提供してあげなきゃ駄目かな。
動物は管理態勢が整っていないところに出すと色々とヤバいから、植物か鉱物あたりか。
何か、考えておこう……。
すみません、いつものように、年末年始休暇として、2週間のお休みをいただきます。
休暇中は、ゆっくりと書籍化作業を進めておきます。(^^ゞ
いえ、今はまだ締め切りに追われているわけではないのですが、『何もせずに休む』というのに慣れていないため、仕事をしていないと落ち着かない……。〇| ̄|_
そういうわけで、『締め切りに追われているわけではない仕事』をちょこちょことやりながら、のんびりと……。
では、来年も、よろしくお願い致します。
皆様、良いお年を!(^^)/




