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108 次なる国は 1

 ビッグ・ローリーは自宅に置いたままで、それぞれ荷物を背負って、前回の転移地点へと戻ってきた。遠くには、この国、クールソス王国の王都、サクオンの街並みが見える。

 前回、見えてはいてもまだ王都まではかなりの距離があるここから地球へと転移したのは、あまり街に近付き過ぎると、ビッグ・ローリーが目撃される危険性が高まるからである。

 しかし、ビッグ・ローリーを見られることを警戒して、あまり遠くから歩きに切り替えると、予想外に距離があってなかなか辿り着けない。それは、前回に経験済みである。かといって、あまり近付くのも危険。

 そう、ここは、私の優れた判断力が問われるところなのであった。



「姉さま、まだぁ~……」

「あ、あと少し……」

 ……目測を誤った。

 疲れ果てた、私とサビーネちゃん。元気なのは、野生児、超少女コレットちゃんだけである。

 そのコレットちゃんは、へろへろになった私達を眺めながら、不思議そうに尋ねた。

「ミツハ、ビッグ・ローリーは置いてきたんだから、ここから見える範囲で人が近くにいない場所に転移する、っていうのは駄目なの?」

「「あ……」」


 サビーネちゃんとコレットちゃんには、転移には全く負担はなく、政治的配慮で「重い負担がある」ということにしてあるだけ、ということは説明してある。でないと、私がポンポンと転移を使いまくることを許してくれるはずがないからだ。その時に、転移でできることの詳細も、ある程度説明してあった。勿論、一度行った場所や目視できる場所になら、いつでも転移できるということも。そして、対向馬車を避けるため、しょっちゅうそれをやっていた。ビッグ・ローリーごと。

「姉さま、どういうこと!」

「……ごめん、気付かなかった……」



 昨日は、クロちゃん(ぐるぐるシャー、の意)で苦しんだ後、みんなで入浴を済ませ、自宅でぐっすりと眠った。

 そして今日は、いよいよふたつめの訪問国クールソス王国の王都、サクオンへと到着、というわけだ。

 いや、前回、王都が見える場所まで来てから地球へ転移したから、今日到着、というのも少し違和感があるけれど、小さいことは気にしない!


 本隊は大きく引き離していたけれど、地球で時間を使ったから、かなり追いつかれているはず。

 というか、いかん、そろそろ連絡をしなきゃ!

「予定変更、いったん領地へ戻るよ!」

「「えええ?」」



 領地へ戻ると、今回はリアちゃんに最初に見つかった。4歳、いや、確か5歳になったんだっけ。

「お、おおお、お帰りなさいませ!」

 リアちゃんは、少しあわあわした後、きちんとお迎えの挨拶をしてくれて、慌てて皆に知らせにいった。うむ、かわえぇのぅ……。


 大慌てでお茶の準備がされている間に、私達は執務室へ行き、無線機の周波数を王宮との連絡用に変えると、PTTプッシュ・トゥ・トークスイッチを押し込んだ。

「チェックメイトキングワン、チェックメイトキングワン、こちらホワイトルーク、どうぞ」

 そして、王宮の無線機番の人が慌てて王様を呼びに行き、やって来た王様にクールソス王国の王都に着いたことの報告と、本隊への伝言を頼んでおいた。明日にでも、向こうの到着予定を確認しなきゃ。

 その後、少しサビーネちゃんに王様とお話をさせてあげた。うん、いくらしっかりしているとはいえ、サビーネちゃんも、まだ10歳の女の子なんだもんね。


「とうさま、レミア王女との親密な関係を築いたから、契約書により10ポイント獲得よね。それを使って、例の『御学友』とか『お遊び友達』とかいうの、全て拒否するから、お願いね。公爵家の御子息とかいうボンクラも、侯爵家の我が儘お嬢様にも、全然興味ないからね!」

 ……こ、怖いわ!



 その後、お茶とお菓子を戴いて、サビーネちゃんとコレットちゃんは、『ヤマノ家メイド少女隊』のみんなとの交流会。……ただの遊びのことだけどね。

 その間に、私は執事のアントンさんやヴィレムさん、ミリアムさん達と、領地の様子の確認や指示事項等で話し合い。

 今回は、少し遅めのお昼御飯を食べたら、向こうに戻る。宿を決めなきゃならないからね。前回のように、すんなりとは決まらないかも知れないし、あまり遅くなると、良い宿は満室になる可能性もある。物事は、安全第一だ。



「じゃ、そろそろ戻ろうか」

「う、うん……」

「は~い!」

 コレットちゃんは少し名残惜しいようだけど、サビーネちゃんはけろっとしている。前回は初めての「普通の友達との遊び」だったけど、もう、「また会える」と分かっているからか、それとも、もう友達になったから、という安心感からなのか……。

 いや、本隊の状況を確認するため、明日も来るんだけどね。

 いちいちビッグ・ローリーを郊外に転移させるのは面倒だから、街中にいる時の連絡は、必然的にここからとなる。うん、ここに来る回数、増えそうだ……。


 別に使用人のみんなの前で転移しても構わないんだけど、無駄に驚かせたくはないから、部屋に戻ってから転移する。それに、自分の部屋は、私が一緒の時のサビーネちゃんとコレットちゃん以外の者は絶対立ち入り禁止なので、内側からロックして、防犯システムもセットしとかなきゃならないし。

「じゃ、行くよ。転移!」



「……子供だけ3人で? ちょっと、こっちへ来て貰おうか」

 ああ、またですか、そうですか……。

 そうして、再び門衛さんにお説教を喰らう、私達3人であった……。




「よし、ふたつめの訪問国に、とうちゃ~く!」

 元気に叫ぶ、私。

 そう、サビーネちゃんでもコレットちゃんでもなく、私だ。

 そして、回りの人達からの、微笑ほほえましそうというか、生暖かい視線。

 うるさい、何も言うな!

 とにかく、門衛さんの30分近くに及ぶ事情聴取とお説教に耐え、無事に王都サクオンにはいった、私達主従であった。

 ……いや、「主」はサビーネちゃんで、「従」が私、コレットちゃんは「従の従」ってとこかな。

 まぁとにかく、新しい国の、新しい王都である! とりあえずは、宿を探すか。



「3人部屋、空いてますか?」

 例によって、街の中心部の、大通りに面した高級そうな宿。

 さすがに胡散臭い客が出入りしていたり、薄汚れて掃除や手入れが行き届いていないというようなことはない。仮にも、王都の一流店、国の顔だからね。


 で、20代前半くらいの、カッコいいフロントマンのお兄さんがにこやかに迎えてくれた。

「はい、大丈夫でございます。お連れの方はおられますか?」

 うんうん、前の国の、最初に行った宿とは違って、子供だからと馬鹿にせず、ちゃんと応対してくれる。やはり、高級店の従業員は、こうでなくっちゃね。

 まぁ、行く先々で宿屋を潰してまわるわけにも行かないから、私達も少し工夫をしたんだけどね。

 そう、明らかに上流階級のお嬢様だと分かるように、それらしい衣装を身に着けておいたのである。これで、貴族か大商人の娘だと思って貰えるはずである。……少なくとも、『高貴な人オーラ』を出しまくっているサビーネちゃんは。

 サビーネちゃん、そんな特技、あったんだ……。

 私とコレットちゃん? いくら良い衣装を身に着けても、全身からにじみ出る平民オーラは隠しようもないですねぇ、はい。

 王女殿下だとか他国からの使節団だとかは言わない。余計なことを言って、変に特別扱いされたり、情報が漏れて狙われたり纏い付かれたりするのは嫌だからね。


「後日到着し、この街で合流する予定です。同じ宿に泊まると決めているわけではないので予約はしませんが、部屋が空いていれば、多分ここに泊まるのではないかと思います」

 うん、不確実なことの約束はしない、というのは、人にお金を貸さない、借金の保証人にはならない、というのと並んで、我が家の家訓なのだ。

 お金を貸さない、というのは、昔々、我が家の御先祖様が木材業を営んでおり羽振りが良かった時代に、ほいほいと人にお金を貸すものだから、銀行の支店長さんからクレームが来たらしいのだ。それはうちの仕事だから邪魔するな、と。

 で、その時に、「我が家は人にお金を貸さない。そしてその代わり、銀行は木材を売らない」という、不可侵条約が結ばれた、とか。

 いや、それが本当なのか、子孫に対するいましめのための作り話なのかは定かでないが。

 保証人については、馬鹿でも分かる。


 と、まぁ、そういうわけで、無事に宿を確保。

 高級な宿屋だけあって、ここは、各室にお風呂があるらしい。

 でも、ただ浴槽があるだけで、従業員がお湯を運んできて入れてくれる、というものらしい。排水はといを使うらしいけど。

 で、浴槽からお湯を溢すのは厳禁。勿論、シャワーも追い焚きも無し。

 ……お風呂は、転移で自宅に帰ろう。

すみません、来週は、お盆休みで休載にさせて下さい。

書き溜めがないもので……。(^^ゞ

次回更新は、23日(水)0000となります。(^^)/

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― 新着の感想 ―
[一言] 今の時代ならドローンカメラで街中の景色を見て街の中に転移すれば簡単なんだろうな……ドローンを目撃されないようにしないとだけど 別話の感想ネタ:現代地球も舞台なのにファンタジーの方の王水出し…
[良い点] お忙しいところ度々済みません。再再修正です。 ①私はFUNA先生と違って武器に興味を持って無かったので、かつて厚木基地で見たヘリコプターがアパッチだったかどうか自信がもてなくなりました。W…
[一言] 済みませんでした。謝ります。姪の夫である空自三佐に問い合わせたところ「地上無線機のハンドマイクですか?」と返されました。輸送機の場合は操縦桿にスイッチが付いており、名称は機種事に違い、一々覚…
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