表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/211

第92話 アルヴィンの旅行日記 4

小説で食レポってどう書けばいいかわからず困惑してました。

「いや~、今年はすごい大軍だったね~」

「はあはあ……き、きつかった」


 流石に……流石に大型イナゴの大軍に魔力無しではきつかった……慣れないことはやはり余計に疲れるな。

 結局、俺は1人で4割……30匹ほど駆逐したことになる。的確に急所をついて無効化していったので倒す速度が速かったようだ。

 でも、そのおかげかコメは無事。これで新米を食べるという俺の計画の危機は去ったのだ!


「それにしてもすごかったねぇあなた」

「いえ、それほどでも」

「いやいや、本当にすごかったよ。あっという間に奴らが動けなくなっていくのだもの。今夜は張り切ってご飯作らないとねぇ」

「それは楽しみです」


 宿の女将さんは剣を肩にかついでこちらにやってくると、そんなことを言う。元から出されるご飯は美味しいのだが、さらに腕によりをかけてくれるなら、絶品に間違いない。


『さあ、今回のトップエースを連れていきな!』

「え? 何を……」


 女将さんの後ろにはこの村の男衆が待ち構えており……。彼らはおもむろに俺に近づくと、俺を担ぎ上げて神輿のようにする。


『ありがとさん! 今年はあんたのおかげで助かった!』

『ああ! うちの田んぼの目の前にイナゴが行った時はもうだめだと思ったが、そこを助けてもらえた! 感謝するぜぇ!』

『さあさあ、たっぷりもてなしさせてもらうぞ!』

『米酒あったか? そいつを飲んでもらおうじゃないか!』

『じゃあつまみは干し魚だな!』

「え……ちょ……」


 そんなこんなで神輿のように「わっしょいわっしょい」とされながらこの村の村長宅へと連れられ……連行されて行き。盛大な宴会に巻き込まれたのであった。


  〇 〇 〇


 巨大イナゴたちを追い払ってから三日後。村では無事に収穫を迎えていた。

 どうやらイナゴの大軍が押し寄せるのは年に1度くらいしかないらしく、例年通りあれ以降イナゴは現れなかった。代わりと言ってはなんだが、一度だけ虎のような生物が現れて村の男衆が退治したことならある。


「いやぁ、いよいよって感じだなぁ」

「そうね。あなたはかなり楽しみにしてたものね」


 あの時の村の男衆が田んぼに横一列になり稲を収穫していく姿を眺めながらつぶやく俺に女将さんが反応する。女将さんは顔面スターズがお気に入りらしくよく彼らを撫でまわしている。

 俺は既に新米を受け入れる準備は出来ている。つまり新米をどう食べるか決めたという事である。

 メニューはシンプルに塩おにぎりとモチである。塩おにぎりには備蓄してあるホッケもどきの干し魚をつけて、大根もどきのおろしをつける。

 モチには、小豆があったのでそれであんこを作り一緒に食べるつもりである。


「問題はどれだけ売ってくれるかだな」


 そう、俺は旅の冒険者である。他の街との交易で生計を立てている彼らがどれだけコメを売ってくれるかわかったものじゃない。

 量によっては満足に食べることが出来ないかもしれない。軍資金はここまでの道中で売った食料や、商人の護衛などでそれなりにあるつもりである。


「ま、村長に頼んでみるかぁ」


 そう考えた俺は徒歩で村長宅へ向かう。イナゴを倒したことでドン引きレベルまで感謝されてたからおそらく売ってくれるはずだ。


  〇 〇 〇


『え? コメを売ってくれって?別に構わないが』

『んなあっさり………』


 村長宅で村長を拝み倒そうと決めていた俺は拍子抜けしてしまう。まさかの即決である。


『それで? どのくらい必要なのかね?』

『いや……別のそこまで欲しいわけじゃ……』

『何俵必要なんだい?』

『俵レベルなら1俵で十分です!』

『というかあげるのに。村の危機を守ってもらった上、資材運搬とかで君の馬も貸してもらった。この村の恩人から金を巻き上げるなど出来んよ』


 逆に金払わなくていいことになってるっ!? 確かに俺は滞在中に近くの森から木の切り出しを手伝ったり、馬を土木作業で貸し出したりしていたが……。


『さ、流石に金は出しますよ! こうして帝国語も教えていただいたし!』

『しかし、それでは私たちのプライドが……』

『それに皆さんが精魂込めて作ったものをタダでというわけには……相応の対価は絶対でしょう』

『む……』


 相応の対価~のところで村長さんは黙り込む。いくら村を救ったとはいえ、彼らが半年かけて精魂込めて作ったものを「タダで差し出せ」などと言えるはずもない。地球での親戚に農家が居るからこそ言えるセリフである。

 ちなみに地球での親戚には変人が多い。北の大地で農家をやっていたり、酒田で居酒屋やってたり、山梨で農家やってたり、自衛隊の佐官が居たり、巨大企業の部長をやってる人が居たり、剣道の道場やってたり。

 ちなみに大川一族の9割は運動音痴であり、自衛隊の佐官の人はもはや超人の域。剣道の道場の師範やっている伯父は門下生より弱いことで有名である。


 閑話休題。

 目の前で「ぬぬぬ……」と唸る村長はその状態を2分程度続けた後、こちらを向く。


『では、ありがたく頂戴することにしましょう……』

『そうですか。それはよかった』

『ただし、割り引かせてもらいます。こればっかりは私たちのプライドが許しませんので』

『それなら、お言葉に甘えて』


 契約が成立した俺と村長は席を立ち握手する。これで俺の旅の目標、獲れたてのコメを食すことを達成した!

 

 〇 〇 〇

 

 割引で手に入れた米俵を馬車に詰め込んでもらい、今すぐ食べるのに必要な分だけ別途購入。まずはコメを蒸すことから始め、もう一方の鍋でコメを炊く。


 その間に簡易の木臼を作成し、干し魚の下処理を済ませる。

 モチ用のコメが蒸しあがったら恒例の餅つきである。今回は村の子供たちが面白半分で参加してくれたので俺のHPは減ることがなかった。よしよし、あとで駄賃にモチをやろう。


 子供たちが怪我をしないように見守りながら小豆を茹でこぼし、もう一度茹でる。アクを取り小豆が柔らかくなったら砂糖を投入。本来は2回にわけて投入するのがいいのだが、今回は3回にわけて3種類の砂糖を投入。1度目に共和国産、2度目に王国南部産、3度目に共和国学園都市で改良されたという砂糖を入れる。煮汁がなくなってきたら塩を加えてつぶあんの出来上がり。

 モチもこのころにはとっくのとうにつき終わっている。


 炊き終わった白米をどけてホッケもどきの干し魚を焼く。うむ、いい匂い。片側3分ゆっくりと火を通す。その間に大根もどきのすりおろしを作り、干し魚に添えたら料理の完成である。


『それじゃ、これ駄賃ね』


 集まっていた子供たちにつぶあんをのせたモチを与えて、自分もそれを食べてみる。


「……ふむ」


 モチ米から作ったわけではないので本来のそれよりモチモチではなく、「どこまでもうにょ~ん」ってやつは出来なにしろ、これは美味い。少し甘さ控えめに作ったつぶあんとモチ自体の甘みがマッチして……うめぇ。


 続いて白米。こっちは炊いて塩むすびにしてある。


「こっちもいただきます」


 久しぶりの獲れたて白米の塩むすびにかぶりつく。


「…………!!」


 うめぇ! ナニコレ! 土と水の味(?)がする! 塩の味付けを少し薄くしたことによってコメの本来の旨みが主張される。しつこい後味などもなく……幸せである。


 それに加えて今度は法華もどきの干物と一緒に食べても美味い。どうしてこうも魚とコメって合うのだろうか……。


 こうして俺は、新米を満喫するのであった。



おまけ ー 青空キッチンの風当たり ー


 炊き終わった白米をどけてホッケもどきの干し魚を焼く。うむ、いい匂いだ。


『『『『いい匂い!?』』』』


 その時俺はギラン! という擬音が似合いそうな視線を浴びまくった。


  〇 〇 〇


「…………!!」


 今度はホッケもどきの干物と一緒に食べても美味い。どうしてこうも魚とコメって合うのだろうか……。


『『『『ッ!?』』』』


 干し魚とご飯を美味そうに食べていると、ギラン!! という視線を四方八方から浴びた。


 ……労働をしている人たちの前で堂々と美味しそうに飯を食べるのは度胸がいるようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ