第69話 帝都攻略戦!
第4陣――侵攻軍を追撃した俺たちは、捕虜を移送した人員を待ちながら、兵力を整えていた。これから、グランツ帝国に攻めこむためだ。
開けた場所にはたくさんのテントが張られ、そこで負傷者が手当てされていく。無傷の兵士も、自身の戦いを振り返りながら、座り込んで休憩する。
俺も休みたかったのだが、休めない。全軍の残存兵力の確認に、この国の国王に攻め込む意思書いた書状を送り、再び編成を考えてから侵入ルートを考える。
それに、さっきから全く魔力が減らない現象が継続中なので、それについても調べようとしている。
「先輩……なんか変なオーラというか、威圧感が漏れ出てますよ……」
そう、赤坂も言っている通り、体から“気”というか何かが漏れ出ている感じがする。ぶっちゃけ何を放出しているかわからないので怖い。あと、この能力(と決まったわけではないが)の代償が怖い。
「シルクはわかる?」
赤坂がそうシルクに振る。いつも通り赤坂の横にいるシルクは、腕を顎にけtうて考えるしぐさをする。
「……正確なことはわかりませんが、似たような現象なら知ってます」
「そ、その似たような現象とは? 」
「はい、覚醒状態とバーサークです。どちらも先天的な特殊能力と言いますか、覚醒状態は、無意識に……まあほとんど追い詰められたときに自然に能力を覚醒させて、能力が数段高まるというものです。バーサークはその名の通り、精神的余裕がなくなると、周りが見えなくなって、傷つくのもお構いなしに敵陣に突撃していく特性を持っているんです」
なるほど。確かに能力的は、普段の自分よりは高くなっている気がする。痛覚もある程度なら遮断されてるし。
「ただ、こんなオーラみたいな何かが出るなんて聞いてないです」
「ですよね~」
なんでこうスー〇ーサ〇ヤ人みたいなさ、覚醒したキュ〇レイみたいになるわけ? はっきり言って迷惑なんですけど。
「仮説を立てるとすれば……」
「「立てるとすれば?」」
「もしかしたら、覚醒状態みたいになって、大気から余剰に魔力を吸収してて、その余剰分がオーラみたいになって放出されているとか?」
なるほど、あり得る。それは大いにあり得るってかそうだろ。魔力があんまり減らないもん。
少なくなってるんじゃなくて、“余剰に吸い取っていた”ということか。
「それにさー」
と言いながら入ってきたのはステフ。後ろからサリーとバーニーも入ってくる。
「目の輝きっていうのが消えてない?」
は? え、ちょっと待て。なに? 俺今までSE〇D発現してたの!? 怖い!
「いえ、まだ一応ハイライトはあるから大丈夫です。正確には“あまりない”ですが」
それじゃあ同じじゃんよ。
そうツッコミを入れて、この話は後回しにする。今は攻め込む時の作戦と編成が大事だ。
頭がフル回転している今が、一番いい作戦熟考タイムだ。
だが、空回りも多い。
そんな中で、俺が考え出したのが、この作戦だった。
〇 〇 〇
国王がグランツ帝国へ攻め入ることを許可してから1週間足らずで、俺たちは帝国の虫垂、帝都の北北西20キロの位置に来た。
ここにも開けた場所があり、そこには急ピッチで編成されたであろう敵防衛軍の数々。その数およそ40万。この前の2倍の数。相棒が撮った映像と、偵察隊・間者の報告では、帝都に徴兵令が出されており、本職の騎士は全体の5割にも満たないとか。
ちなみに、俺はいまだに覚醒状態(仮)継続中である。寝れば治ると思い移動中とかぐっすり休ませてもらったのだが、一切変わらなかった。どうやったら治るんだ、これ。
「こっちはあのあと援軍に来た兵力合わせて16万3000人。相手は40万。だけど、今回、こっちの勝ちだ」
なぜかって? シンプルに力押しされれば負けるかもだが、相手のほとんどは剣を一昨日か昨日に教わった戦闘のド素人が多い。敵後衛の14万と飛竜隊6000は厄介だが、それもすぐに片付けられる。
そして、今回の作戦を諸侯たちに伝えたところ。
「防衛戦より凶悪になってないか?」
「いやいや、まだマシ、まだマシ」
「シンプルだけどさ、うん」
という反応をされてしまった。
その作戦伝令をしてから、両軍は丸2日睨めあった。こちらには補給のあてがある。青龍君がちょっと留守するけど、王都から16万の兵分の飯などすぐに持ってこれる。
そして、3日目早朝。とうとう敵軍が動き出した。
飛竜隊が飛び立ち、鎧になれない一般市民が剣を掲げて突撃を開始し、後衛は魔法の詠唱をする。
そのうるささにいち早く気づいたとある諸侯軍は、闇に紛れて静かに移動を開始する。
それに続いて、他の諸侯管轄軍に俺と赤坂の隊もこっそりと明かりをつけずに近くにある森(既にゴーレムで制圧済み)に身をひそめる。
この隠密行動が成功したからには、こっちの勝利は確実だ。ボスモンスターとかが出てこない限りは、ね。
「さて、置き土産もしたし、このまま一本道で迂回していくぞ」
あらかじめある程度舗装した道(結構でかい)を通り、俺たちは音をなるべく立てずに移動する。森からじゃなく、高原の端を通る隊もいる。
「もうちょっとかね……」
カウントが正しければ、あと30秒もない。
「全軍、突撃用意」
指示を出すと、今まで馬に乗っていなかった騎兵が乗り込み、騎士は剣を抜く。
そして。
後方で激しい爆発音が聞こえる。その音は断続的に響き、火の手が高々と上がる。
「全軍、突撃ぃ!」
「「「「おおおおおおお!! 」
その爆音を合図に、高原の森とは反対側を進んでいた諸侯軍と、俺・赤坂の隊が突撃を開始する。道の舗装が途切れ、森を抜けた先にはーー敵の後衛がいた。
「な、なんだ!?」
「き、騎兵!? どうやってここまで!?」
近接戦闘などろくにできない後衛は、騎士たちにどんどん制圧されていく。中にはアーチャーもいたようだが、弓で鎧は抜けない。
制圧には30分もかからなかった。火矢とかは迷惑だったが、死傷者もほぼいない。
「て、敵騎士隊がこちらに向かってきます!」
敵後衛を全て倒したという伝令と入れ替わりで、今度は敵騎士隊の動きを探っていた斥候が戻ってくる。
よし、仕上げをするとしよう。




