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#045.雪原の強行偵察 2

 突如頭の後ろに慣れない何かを押し付けられた俺は、その場で可能な限りの情報収集を得ようと必死にもがいていた。


 確かに1秒前までは一切人の気配はなかった。それに赤坂とバーニー、サリーまで周囲を警戒していたから誰もここまで現ることができないはずなのに。


 気配は今俺の後ろに立っている人物一人だけ、おそらくだが武器は魔法銃に似た何か。それから察するにどこかの勢力に所属するやり手なんだろう。じゃないと普通は開発されたばっかりの魔法銃なんか持っているわけがない。


「貴君、情報連合の者か」

「こんなことしてる奴なら普通は”答えない”ってわかんだろ?」

「いいから言え、わたしは貴君に害を与えるつもりは一切ない」

「そりゃどうかねぇ。だったらその魔法銃をおろしてほしいもんだが」


 害はない、と言われてもこっちは曲がりなりにも現役の冒険者でその道のプロだ。こういう誘いに乗るのは絶対に命とりだし、背後を取られたときの対処の仕方などはギルドの教官に叩き込まれている。だからこそ、気付かれないように若干体勢を低めにして次の瞬間一気に前に背負い投げしようと思ったのだが――


「あ、ししょーちょっと待って。その人、紋章は情報連合だよ?」

「なに?」

「ええ、私の方からも見えますよ。しかも……階級線がないですね」


 情報連合の軍服には、両肩に紋章が描かれ、袖に階級線と呼ばれる横線がある。線がないということは少尉以下の一般兵、それかもしくは……。


「まさかの第305特務隊……通称ブラックバードか」

「そこまで言われたら……わたしの負けだ。そうだ、わたしは情報連合第305所属のルナ・ウィルソンだ。それで、貴君は?」

「ああ、情報連合所属、第2大隊所属、大川心斗少尉だ」

「よろしい」


 名乗ったと同時に、後頭部にあたっていた無機質で冷たい鉄の塊が離れていき、俺の安全が確保される。そして、振り向けば……やはりというべきか、情報連合の白い軍服を着るイケメンの姿が。俺たちのような灰色で少し雑なつくりをしたものではなく、明らかに隠密行動に特化した彼は正真正銘自陣営の隠密部隊のエース、第305特務隊の一員であった。


 この第305特務隊はどこの大隊にも所属せずに、直接司令部とつながっている部隊で、全員が黒い鷲の魔物を使役していることから”ブラックバード”の異名がついている。そして、全員階級はない。だが、実質的には佐官と同等として扱われている。


「で、そんな学内でも1,2を争うエリートさんがどういう要件かな?」

「なるほど、一息もつかせてくれぬと。わかった、さっそく本題を言おう。貴君たちは速やかに撤退、山地を超えたところにあるリーシュのベースゾーンに向かうんだ」

「はぁ? どうしてだ?」

「先ほど、我々部隊の一人がこちらに列島王国の偵察隊と思われる1個中隊を確認した。よって本作戦は中止、リーシュのベースゾーンまで撤退だ」

「列島の偵察隊?」


 列島、その時点で正直俺は疑問を持った。なぜならここはオースティン・レンジの中でも内陸部にあるからだ。列島王国は基本的に各勢力とは半島や海岸線での戦いが多く、ここまで来るには絶対にどっかの陣営の勢力圏を突っ切らないといけないのだ。おそらくベースゾーンを建てながらだと2日はかかる道のり故に見つかりやすく現実的ではないのだ。


「さすがに無理だな」

「いや、残念ながら本当だ。これが証拠だ」


 そういって、ルナと名乗ったそいつはどこからか水晶玉を取り出してそこに映像を映し始める。なぜか少しだけ左右に揺れながら、それでも安定した飛行を見せるのは……黒い鷲の魔物だろう。そこからはわずかだが列島の制服を見に纏い、進軍する1個中隊規模の姿があった。


「おいおい……マジか」

「おそらくは強行偵察隊だろうから装備もしっかりしている。対して貴君たちは装備なんて最低限で、実質戦えるのはあっちで見張りしてる3人くらいだろう? それにあちらとドンパチやるとあそこで喧嘩してる2つの陣営にも気付かれる。だからここは退くのが先決だ」

「なるほどな……確かにその方が生存率は上がるか。わかった、所定の位置まで退避して残りの3小隊を待った後すぐにリーシュのベースゾーンまで後退だ」

「わたしも同行しよう。貴君たちだけでは戦力不足だ」


 その言葉を合図に、水晶玉からの映像が消えて鷲のするどい一鳴きがやまびこしてこちらまで聞こえてくる。彼に言わせればあれで自分の主人がどこにいるかを探しているらしい。とりあえずは鷲をここで回収することにしたので3~4分ほど時間ができることになった。


「よ~し、だったらお土産だけおいて帰りますかぁ」

「……それは?」

「ん? まあまあ、次にここを使う人のための礼儀ですよ」


 ここは身を隠すにはいい茂みだから今後も誰かが使うだろう。それこそ列島王国の強行偵察隊とか。こうやって中途半端で終わらされたせめてものお礼をするために持ってきていた地雷を適当な場所に設置しておく。それを見たステフも同じように地雷を置いているようだった。もちろんその間にルナが使役する黒い鷲も片足に水晶玉を持って戻ってきている。


 ここから、俺たちは2日間をかけた脱出劇が始まるのだった……。


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