#025..オーシャンビューを火の海に 3
自分の小隊を赤坂に任せた俺は【フライ】を使って一気にとある場所へ急ぐ。急いでいるとは言いつつも、一つだけ敵のベースゾーンを見つけたから身に着けていた火器なり爆弾なり地雷なりをすべて使い切って撃破。身軽になったところでこちらも特殊な設備を持ったベースゾーンへ降りる。
「おお! いらっしゃった!」
「悪い、少し遅れたか? あとこれを頼む」
「お任せを。中でシルヴィア整備中隊長がお待ちです」
「わかっている」
俺を出迎えてくれたベースゾーンの守備隊に持っていたバズーカなりが入ったバッグを預け、俺は特殊な設備――格納庫へと急ぐ。実は昨日のうちに”ハルバード”をこのベースゾーンにある格納庫へと移動させておいたのだ。今回は時間と勢いが肝の作戦だからな……何事も素早くやっていくことが求められる。既に出撃のために格納庫の口は開かれており、中ではシルヴィア他数名が最終のチェックをやっているところだった
。
「おっ、主役が来た! おいお前さん、もっと急がんかい!」
「悪いな、火器と爆弾の処理で1つベースゾーン落としてきたからな、その分時間がかかった。で、機体のコンディションは?」
「てやんでぇ! もちろん完璧でい!」
そう言って手渡してくる整備表には、全ての項目にチェックが付いていて、魔力回廊のスイッチも既に起動済み。なんなら俺が操縦桿のスティックに魔力を流せば今すぐにでも動き出すような状態になっていた。だからバイザー越しに見えるモノアイに水色の光が灯っているのか。
「さすがだな、あとでなんか奢るぞ」
「それはその時にとっとくわ。乗り込むのはそこのリフト使えぃ」
「了解」
親指で指示されたリフトに飛び乗ってコックピットの入り口があるところまで行くと、すぐに乗り込んですぐに標準機の確認と各部分のチェックをする。地上ではリフトの撤去が手早く行われていて、左右を塞いでいたリフトが徐々に遠のいていき、全員が退避していく。
「ここで【エアロフラスト】使ったら大事故か……」
横開きのハッチを閉めて、行動開始。格納庫の外まではやむなく歩いて行き、出た瞬間に【エアロフラスト】を発動。守備隊の皆さんが突然のことにびっくりした顔を見せてくるが無視して佐々木を急ぐ。
そういえば、前回新田に「標準のあれって固定なの?」と聞いたら「そんなわけないでしょ!」と怒られた。なんでもスティックの下部分にあるスイッチのようなところで上下左右に砲身を動かせるらしい。もっと言うと前回表示されていた標準は長距離砲のもので、無反動砲のものはディスプレイで別途選択しないと出てこないようだ。この前使ってなかったと言ったら怒ってたから今回はそんなミスをしないように予習済みだ。
作戦開始から既に1時間が経過。予定通りだが早いにことにこしたことはないから半島へと続く道をフルスロットルで進んでいく。そんな調子で道を進むこと6分程度。前方に何かが見える、そう思ってモノアイで見てみると……馬の尻尾と第3大隊の1部隊の姿が。その奥には……かなり大きい規模のベースゾーンが。おそらく攻めあぐねているんだろう。
「このまま突っ込むわけにいかんからなぁ……」
十分射程には入っているが。真っすぐ撃つと前方の部隊にあたりかねん。それに加えてパワードスーツでは森に入って先回りなんてことはできない。少しの崖でも”ハルバード”はバランスを崩してしまう。だから素直に突破するしかないんだが……そうだ、曲射すればいいのか。
どうやら味方部隊もこちらに気付いたようで、身振り手振りで「ここは任せて先に行け」と言っている。確かに協力してもらえばここで戦闘しないで済みそうではあるが、ここは助けるべきだろう。もう撃つ準備しちゃったし。
「狙いは……あの建物から1ポイントずつ開けて……」
長距離砲の砲身を上に動かして曲射弾道を取る。力の加わり方が違うから反動の時のリカバリーに注意しながら右と左、計4門の砲身から弾を同時に発射する。するとどうだろうか、一度見当違いの方向に発射された弾は放物線を描いて狙い通り敵ベースゾーンの建物を一発で破壊。さらに一定間隔をあけて3発が着弾。いい感じの爆発の煙も上がったからクリティカルだったみたいだ。
「おい、そこ突っ立ってたら巻き込まれるぞ」
多分これで敵は戦意喪失しただろうと思い、砲撃を見て口をあんぐり開けている味方に警告をしてから前進を始める。それを見て味方は慌てて道の横に退避していったので、素直にベースゾーンの横にあるスペースを通って突破。邪魔だったので振り向きざまに腕の無反動砲も2発ほどぶち込んでおく。
そんな感じで進軍を開始した俺がチェルン岬に到着したのはさらに10分ほど後だった。
〇 〇 〇
広大なチェルン湾、そして裏手の山に囲まれた列島王国のチェルン砦は自然の要塞だった。第3大隊とシフォンたちの猛攻を受けても、川や山に配置された小規模のベースゾーンなどがあってうまく攻めることができない。さらに会場からは4勢力の中でも最強の海軍が船の上からバリスタを使って支援射撃をしてくるので下手を打つと被害も大きくなる。
「列島もかなりの好立地に拠点を作ったなぁ……歩兵”なら”無理だっただろこれ」
ただ、この”ハルバード”は長距離から砲撃ができるタイプのパワードスーツ。だから、射程距離が限界だけど裏手の山から砲撃をすることが可能だ。モノアイで色々ズームをしてみていると、シフォンのところが敵の砦に近い所にあるベースゾーンを攻めていて、第3大隊も川の対岸にあるベースゾーン攻略を行っている。ただ、砦まで攻撃が届きそうにない。
「だったら、俺がアレをやるか……」
おそらくここまで敵の攻撃は飛んでこないだろうと考え、もう少し山を下って接近することに。その方が狙い撃ちしやすいし。パワードスーツだと山を下るのとかはきついけど、そこは根性でなんとかして再び平らになってて地盤が固そうなところに到着。ここでも十分に視界がいいし、海岸線にも近い。
「よし、じゃあ早速王手をかけることにしますか」
素早く敵の砦を標準に定めて、少し遠いから曲射弾道を取る。おそらく無反動砲ではあそこまで届かないからそれは封印。弾は節約しておきたいのでなるべく一発で決めよう。意識を集中させて両方のスティックの下にあるスイッチを押してさらに標準を合わせていき――中央になった。
「……これが、革命ってもんだろ!」
発射体制をとってからスティックの上ボタンを押し込むと、両肩の長距離砲から計4発の砲弾が発射され、数秒後にはすべて砦に着弾。完全に破壊は出来なかったが、明らかに敵が混乱しているのが目に見えるようにわかる。だったら、追撃するしかねぇよなあ!
反動でブレた標準をすぐに戻して、さらにもう4発をお見舞いしてやると、とうとう大きな爆発を起こして黒煙を上げ始めた。あの近くに何か爆発する物資を置いてあったんだろう。
「よし、砦はこれでいいだろ。あとは……そこら辺のベースゾーンとかを荒らして回りますか!」




