#018.参戦
レイとアスタロトが仲間に入ってからまた1週間ほどの時間が過ぎていった。その間にも2回くらい自爆テロが勃発。とうとう共和国は本格的に近隣の国々に協力要請と勧告をし始めた。このままだと隣国でも同様の事件による被害が出ることは避けられなさそうだからだ。
それに加えて、共和国内では街と街との移動にも制限が厳しくなり始めた。王国式の通行証システムも導入されて、持っていないと行商など一切ができないようになってしまった。
そんな情勢の悪くなる中、学園で暮らす俺たちにもとある転機が訪れようとしていた。
「これはこれは……よく持ってこれたな」
「なんでも、王国の魔導士が5人単位で転移魔法を使ってやっとだったらしいですよ」
情報連合の首都にあるパワードスーツの格納庫。そこには3機の真新しい機体が置かれていた。周囲のパワードスーツより一回り大きく、そして一世代若い。現在どの陣営でも共通で使われているのが、共和国の制式パワードスーツの中でも一世代前の”リューネ”という機種。で、こっちの3機は”バンデッド”という新型。それに王国全面協力の基、俺たちが改造を施したのが今さっき運ばれてきたのだ。
1機は”ハルバード”という名称で、肩や手首に砲門を施した長距離射撃型。俺の作ったバズーカと同じパチンコみたいな弾の発射形式をとっている。
2機目は”エンシェリオン”。各所に【エアロフラスト】という魔法を応用した空気を吐き出して進む形式のブースターを搭載して高速戦闘に対応したもの。防御面は魔法の威力を衰退させるジャミングフィールドという装置を使って補っているのが特徴的だ。
3機目が”フォートレス”。まあ、言っちゃえば赤坂のファイトスタイルである守ってから殴るを忠実に再現した機体。大盾と大剣だけというシンプル装備で、残りは装甲に回した。
この3機を今後はこっちでテストがてら運用していくことになる。
「ほえ~……まさか新型を魔改造してるとは思わなかったわ~」
「ですね。あの筒のようなものは果たしてなんの役に立つのか私にはわかりかねますが、完成度はいいのではないでしょうか」
格納庫の奥から聞き慣れない二人の声が聞こえたと思えば、パイロット専用のスーツを着た第101戦術機構隊の隊長のレノンと副官のマインのコンビがやってきた。二人ともこれから出撃で、そのついでに噂の新型機体を見に来た、という感じだった。
「これはこれは、レノン隊長」
「おう、オオカワ少尉か、ご苦労だね。まさかこんなのが入ってくるとは思わんかったわ。あたしたちが知っているパワードスーツは見ての通り剣と盾を持って戦う……言ってしまえば巨人に乗ってそこらへんの騎士と同じことをするもんだからねぇ」
「ハハハ……こいつらでそういうことをするのは一番ゴツいやつだけになりますね」
興味津々と言ったレノンは軽く3機を見回して、最終的に視線は特徴的なシルエットをしているハルバードに固定される。そりゃあ片側2つの計4門もあるパワードスーツは気になるか。それに対してザ・インテリという感じのマインはパワードスーツの脚部にある変なボックスみたいなところに目をつけている。
「オオカワ少尉、あの足についているのはなんだ?」
「あれはㇲラスターって言って、あそこから空気を噴射して機体を地面から数十センチ浮かせて走行するんですよ」
「はぁ!? パワードスーツ1機の重さは通常4~5トンと言われています。いくら空気を噴射する力を利用しても、それは無理でしょう」
まあ実際試験の試験の段階で一切効果なかったけど、スラスターの【エアロフラスト】の魔法陣に送る魔力を多くしたら普通に飛行できたから問題はない。ただし、それなりの魔力を脚部スラスターに使うからどうしても全体的なエネルギー不足に陥りやすいが、そこでこの機体たちに積んだ大容量バッテリーが活きてくるんだなぁ、これが。全身の重要なところの制御を電気で制御して、それ以外は魔力で制御するのがコンセプト。ちなみに液晶パネルも使っているんだが、それは俺が頑張って【チェンジマテリアル】で同じものを作り上げた。
「隊長、残念ですがそろそろ時間です」
「また今度、共闘させてもらうことがあればその時はお願いするよ~」
「ああ、はいはい。こちらこそ」
そんな挨拶をした後、二人は妙に慌ただしい格納庫の人ごみの中に消えていってしまった。もう少しで戦闘開始時間だからか人が右往左往し始めている。ここにいたら邪魔になりそうだから今日のところは退散しよう。
「で、先輩。今日は私たちに任務はないんですよね?」
「ああ。俺はシフォンと調査をしないとだから今日はなしだ」
「……っていうか、先輩って少尉だったんですね」
マジそれな。自分の階級忘れてたわ。
〇 〇 〇
大川たちが格納庫から外に出て解散した1時間後。セレッサが住む寮の一室にはいつものメンバーがそろっていた。新田とセレッサ、そしてコルニ。それぞれ購買で買ってきたクッキー、大川が久しぶりに作って冷蔵庫に入れていたものをパクったチョコレートケーキ、王国の有名どころが作った高級茶葉で淹れた紅茶があるとなれば、やることは一つ。
それはもちろん、お茶会だ。
「相変わらずコルニちゃんはいいもの買ってくるね~」
「そりゃあもちろん? 第2大隊長だからちょっとは見栄張らないとじゃん? あかりんが持ってくるそのチョコケーキも美味しそ~」
「あはは、うちの小隊長が昨日作ってたの見てたから勝手に持ってきちゃった。どうせあの人甘いものそんな食べないしいいかな~って」
「作るのが好きな方なんだ~。それは羨ましいですなー」
セレッサがお茶を淹れに行っている間、コルニと新田のガールズトークは熱を帯びていって、そのまま加速していく。セレッサが戻ってきたころになればほぼ新田の話をコルニが聞いているだけになって……今日は彼女のターンのようだ。
「ちなみにあの小隊長君とはいつからの付き合いなの?」
「そうですねぇ、何年か忘れましたけどだいぶ長いですよ。3年くらい一緒に冒険者やってますし」
「へぇ~」
「あの人、結構猫みたいにかかわる人決めるんですけど……それのせいで私がフォローに入ることも多いんですよ。隊長してるからレイとアスタロトには芯はしっかり者って思われてるらしいですけど、全然そんなことなくて面倒な人なんですよ~」
そこから次々に出てくる大川の面倒な面。例えば拘りまくると一切譲らない頑固さがあったり、関わらない決めた人の話は一切聞かないとか、気分屋で何を決めるにしてもその場に行かないとなんも決まらないとか、好き嫌いがほぼない反面、どうしたらいいかわからないとか!
「へ、へぇ~」
「あの人の表面上の性格に騙されたら駄目ですよ! 内面は面倒臭すぎるから距離をある程度置くのが大切です!」
「あはは……そこまで知っているならかなら色々関係があっても誰も文句言わなさそうだなぁ」
「ですね。そこまで言えるのはシフォン様のお身内の中でもご兄弟と婚約者の方くらいです」
「ないないない! 確かにあの人には助けてもらったことは多いですがその分迷惑だったことも多いですからね! そーいう関係にするのは無理です!」
そんな感じの会話が続いているその時、大川はどうしていたかというと……。
「うう……なんかさっきからイラっとするんだよなぁ」
「どうしたんだ?」
「どこかで俺の悪口が言われてる気がするんだよなぁ~。クッソめんどい奴だとか言われてそうだ」
「考えすぎなんじゃないか? ほれ、続きやるぞ」
「あ、ああ……ちなみにセレッサどうしてるん?」
「お茶会行ってる」
新田にボロクソ言われているのを敏感に察知していた。




