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#007.追い求める影

 俺たちの魔法学園生活初日はあっという間に終わってしまった。流石に今日中になれることはできなさそうだ。元は学生だったとはいえ、何年も命を懸けた職についてると元が何であれ忘れてしまう。

 ルミウス魔法学園は全寮制。オースティン・レンジの各陣営の首都に学生寮があり、その周辺に購買などがある居住スペースがある。

そして、俺たちは自分たちの部屋に案内されたのだが……。


「なんじゃこりゃ……」

「熊の巣の一番上のグレードよりすごい……」

「これが一人ずつにあるのか……」


 通されたのはSクラス専用の部屋。かなり広いリビングには俺にはとうてい理解できない模様があしらわれた絨毯に大きいソファと暖炉、豪華な台所、風呂もあり、寝室にはキングサイズのベッドがドカンとおいてある。それに加えてトイレも2か所。しかもリビングの隣には使用人の居住スペースもあると来た。

 俺が(一応)経営してる熊の巣という宿屋の一番いいグレードよりも格上の部屋だ。しかもこれは1人用なのだとか。


「これ、どうすんだべ……?」

「先輩、私たちには使用人なんていませんよ?」

「いずれにせよ、あそことあそこも君らの部屋だから好きに使ってくれ」


 ここまで案内してきてくれた人が広すぎる廊下の廊下にある2つのドアを指さしてそんなことをいう。名乗られなかったが、彼はここの寮長をしているらしい。


「にしてもここを一人はさすがに広すぎて寂しさ通り越して虚無だぞ」

「君らならすぐに奉仕させてくださいとか勉強させてくださいとかで世話係兼見習いがいっぱい来るだろう。そいつらを住まわせればいい」

「簡単に言うな……」


 その見習いさんに来られたらこっちがカルト宗教探してることバレかねない。好きに使っていいらしいから放置はできるけどそれはそれでもったいない気がしてならない。


「じゃあ、これで。さっさと帰って剣を振りたいのでな」

「あ、ああ。案内ありがとう……」


 じゃあもう役目は終わりとばかりに、案内してくれた両町は踵を返して廊下を歩いて行ってしまった。つまり、そこに残されたのは俺たち3人だけで。


「どうします?」

「とりあえず自分の部屋に荷物だけおいてから考えようぜ」

「そうしますか」


 まずはこのことを忘れて、馬車に積んでいた荷物を部屋に運ぶことにした。


  〇 〇 〇


「なるほど。まあ理解できなくはないぞ、最初は私も広いとは思った」

「やっぱそうか」


 あれから1時間ほどたっただろうか。俺お手製の段ボールもど気に入った荷物をすべて部屋にぶち込んでひと段落したころに、シフォンが俺の部屋を訪ねてきた。今度はごつい護衛2名じゃなくてメイドさんを1人連れてきた。


「……で、そっちのメイドさん座んないの?」

「はい、私はシフォン様の世話係ですので」

「まあそうだよなぁ……」


 そもそもメイドとか執事とかって、主に申しつけられたことを素早く行動に移すために座ったりなんかあんましないし。でも、自分以外に立っている人がいたら、自分が譲ってでも立たないとと思うのが日本人の価値観だ。


「セレッサはこれが仕事みたいなものだからな。そこはわかってくれ」

「了解。それで、まずは何から話す?」

「そうだな……まずは現状と、今わかっていることくらいか」


 シフォンが目くばせをすると、セレッサと呼ばれたメイドさんはすぐに資料と思しき紙の束をシフォンに手渡した。それをすぐに確認して話し始める二人の連係プレーには流石、としか思えなかった。


「今現在、我々が追っているカルト宗教の母体は確実にここ”ルーツ”のどこかにあるということがわかっている。最近、共和国内で起こっている”とある事件”の犯人がこぞってここから来た奴らしいから、ほぼ確実だろう」

「え、えーと……その、質問いいですか?」

「ああ。……確かニッタ、と言ったか」

「はい。その”とある事件”ってなんなんです?」


 新田の質問を受けたシフォンは「ふむ」と一拍間を開けたのち、口を開いて現在共和国で頻発している事件のことを話し始めた。

 簡潔に言ってしまうと、人間が人通りの多い場所で自爆する……自爆テロのことだった。数か月前から度々このような事件が各地の地方都市で起きていて、100%の確率で犯人はここ”ルーツ”からやってきた観光客なのだという。

 この事件は完全に無差別で、ある時にはその地の領主にあたる首長の屋敷の目の前で自爆テロが起きて、そこの家主の首長が重傷を負った例もあるらしい。


「この国は平民が議員となって議論する一般評議会と、各地の領主にあたる首長で議論する首長議会があってな。首長議会の代表が代表首長という肩書もあるんだが……ここ最近はその首長議会の参加者を狙った自爆テロが多発し始めたのだ」


 つい先月ほどまでは一般市民も容赦なく巻き込む無差別自爆だったのに対し、最近は首長が滞在している場所近くで自爆が起こったり、先ほどの例のように屋敷の前で自爆が起こったりと、どんどん国のトップを狙うようになってしまっているという。


「首長たちは別に自分たちだけを狙う分にはいいが民衆にまで被害が出るのは良しとしていない」

「だからこそ、早急な対応が求められる。だろ?」

「そういうことだ。お前たちがここに来る4日前にも王国と共和国の国境に近い街でも自爆テロは起こっている。このままだと我らが王国内部で自爆テロが起こるのも時間の問題なのだ」


 ちなみにどうやって自爆しているかはまったくもって手がかりがつかめてないそうだ。狂った頭でバンバン最先端技術を作る”ルーツ”の技術者たちでもお手上げらしく、一説では俺が前に使ってた酸に触れると爆発する草使ってるとか、魔力を暴走させて爆発してるとか。


「中には三日三晩寝ずに研究したら身体爆発するとかいうことを立証して本気で実験したバカもいるらしいんだが。運よく生き残ってた目撃者に言わせれば怪しい動きも予兆もなかったらしい」

「方法とかは完全に手掛かりなし。おそらく母体は”ルーツ”にある以外特になし。それにここは狂ったマッドサイエンティストの巣窟、か」


 正直言ってあのコ〇ンでも今の状況からでは事件を解決することはできないだろう。ここは一度奴らが大きい動きを見せたときに一気に詰めるくらいしかできることがなさそうだ。


「次の休みくらいに街の観光兼ねて調査はしてみるが――期待はしないでくれ」

「ああ、わかった。とりあえず重い話はこれまで。あとは親泊を深めるための会話にでもしておこう」

「では、私はお茶を入れてきます」


 この後、日付を跨ぐまで俺とシフォンはお互いの戦術とかそういう話をして意気投合。新田や赤坂に思いっきり呆れられた。



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