第100話 水の都と探偵団 1
山賊退治でアジトにあった金品を全て奪取し、近くの街の騎士団の詰所へ山賊の首領もろとも突き出したら大量のマニーを手に入れてしまった。
なんでも、新領北部を拠点とし、たびたびリースキット側でも仕事をしていた賞金首の山賊らしい。やはり主戦力は俺の倒した魔導士4人組だそう。
「そんで、これだけの報奨金を貰ったわけだが……」
「……たんまりですね」
報奨金はなんと400万ゴルド。言い方悪いけどユエルの値段の3倍以上高い。ここまで跳ね上がったのは過去に2度グランツの宗教騎士団が彼らに敗れたこと、王国での被害もそれなりだったこと、さらには首領を生け捕りで持ってきたことなどが挙げられた。
とりあえず、またがっぽり稼いだ。
そんなわけで、今俺たちは野宿をしながら次の目的地を確認していた。
「次の目的地は……順当に行けばここ……港町フィーアだけど……ユエル、本当なのか?」
「ええ。王国ではあまり知られていないと思います。水の都、海上都市ヴィーネ。陸地ではなく海の上に建てられた都市としてはこの大陸最大規模で、その人口は15万人。住人よりも船と魚が多いところです」
……人より動物が多いって、ある意味ニュージーランドだな。
海上都市ヴィーネはフィーアから船で半日かけたところにある大きな街で、道路の代わりに水路が引いてあるという世界的にも珍しい場所だ。モノの取引、ホテルのチェックインなどですら船の上で行うらしい。
ヴェネツィアの水上マーケットか何かか?そうなのか?
「フィーア……いえ、もしかしたらヴィーネまで行けば仲間に会えるかもしれません」
「なに?」
「我々の住んでいた場所の近くの川の下流……そこに位置するのがフィーアです。冬を越すための準備で何人かが買い出しに来ているかもしれません」
ふむ……それならフィーアではなくヴィーネに直接向かった方が良さそうだな。そこで出会えなくても最悪近場だ。こちらから出向くという手段もある。
「よし、ヴィーネに向かうとしよう」
「はい。では……夕食ですね」
「だな。今日は豪勢にコメと干し肉と行こうじゃないか」
「……それはいいですね」
あくまでポーカーフェイスを貫こうとするユエルだがよくよく観察すると細かく震えているし、ちょっとだけ口元がニヤけている。
最近、ユエルに蕎麦だのコメだのと和食をふるまっていたのだが、どうやらコメがお気に入りになったらしい。
……表情に出てますよ、ユエルさん。
〇 〇 〇
そんな話をしてから丸4日。とうとう俺たちは港町、フィーアに到着。夜だったこともありその日は宿を取って就寝。
翌日。あいにく海は大荒れ。ヴィーネへの連絡船は当然出向することすらままならない状況のためしょうがなく宿に引き返す。また、連絡船は2日に1度らしい。1日目にフィーアからヴィーネへ。2日目に反対が運航されるそう。明日はヴィーネからの便なので出発は必然的に3日後になった。
そして3日後。3日間フィーアでユエルの仲間を探したものの手がかりはつかめなかった。
「1日もあれば全部買うことは出来ると思うけど……」
「いえ。普通買い出しは換金なども同時に行うため、最低でも1週間は現地にとどまります。私が同行したときもそうでした」
……ああ、そう。
地球じゃアウトレットのショッピングモール行って1日も周れば大抵いるモノなんて全部揃ったんだけど……こっちじゃその感覚は捨てた方がいいらしい。
そう考えると偉大だな、ショッピングモール。
そんなことを考えながら連絡船へと乗船。途中結構揺れたので5割近くの乗客が船酔いでダウンしたのを目撃。ユエルと俺は平気で、お互い本を読んだりナイフを磨いたりして過ごした。
〇 〇 〇
船で半日行ったところにあった都市、ヴィーネは天然のサンゴ礁の上に築かれた海上都市だった。周囲には魔法で作られた岩礁ブロックのようなものが点在していた。
街の内部は魔法か何かのおかげで波は穏やか。道路の代わりにある水路は比較的広く、たくさんの船で溢れていた。
豊富な海産物から野菜まで船上で売っている水上マーケットは3か所ほどあるらしい。
普段なら(・・)、そのような光景に加えて水路の水も透き通っており、大変キレイな場所らしいのだが……。
「……なんか臭くないですか?磯の匂いとはまた違います」
宿につき、落ち着いてからユエルがそんな指摘をしてきた。ユエルの言う通り、海特有の塩の香りとはまた違った臭いが水路からも、周辺の海からも発せられていた。
それは、よく温泉とかで嗅ぐことのある……。
「硫黄臭……それにアンモニア臭もするんだよな」
そう、海は明らかに何者かの手によって汚染されていたのだ。宿の人に確認しても、普段は潮の香すらしない無臭のはずなのに、この前の嵐の時から急にこの臭さが目立つようになったという。おかげで水上マーケットはまだマシな1か所を除き営業中止。水質の問題が直るまでは水路の水に触れることはしないようにとの御触れが出ているそうだ。
「これじゃあ……あまりモノも売ってなさそうだからいる可能性は少ないな」
「……私も居ないと思います」
「ただ、今受けている視察任務の為に、明日の出航までにある程度街は見ておかなきゃな」
明日は朝から街を見て回ることで合意した俺とユエルは素直に床に就き……次の朝、騎士団に呼び出されるまで起きなかった。




