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もう全部俺一人でいいんじゃないか? ~人々にギフトを与える能力に目覚めた俺は、仲間を集めて魔王を倒すのが使命らしいけど、そんなことはどうでもいいので裏切った奴等に復讐していく~  作者: 御堂ユラギ
第二章 革命の王国編~だが俺はどうでもよかった~

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第24話 スレイン・ダーストン

「あれ、クレイスさん。お早いお帰りですね? またなにかやっちゃいましたか?」

 

 クレイスは薬草採取を切り上げペルンのギルドに戻ってきていた。

 生憎とクエストは未達成だが、特に急ぐわけでもない。後からまた向かえばいいだろう。


 妙に期待のこもった眼差しをテイルが向けてくるが、目を逸らす。

 しかし、またなにかやってしまったのは事実なので、クレイスは正直に答えた。


「どうやら王女を助けてしまったらしい」

「え? なんだって?」


 確実に聞こえているはずだが、何故か突如難聴になりテイルが聞き返してくる。

 どうもこの受付嬢のテンションには付いていけないと、クレイスは内心苦手に思っていた。


「だから、モンスターに襲われていたのは王女様で、それを助けることになった」

「…………」


 そのやりとりを見ていたスレインが困りながらも助け船を出してくれた。


「お初お目に掛かります。わたくしはダーストン王国、第6王女スレイン・ダーストンと申します。クレイス様には道中で窮地を救って頂きました」


 ダーストン王国は、帝国の東に位置し、この大陸で最も歴史ある国家である。

 帝国と王国、並び立つこの2つの大国は、しかし、その一方で正反対でもある。


 ダーストン王国は、その建国の経緯から、選ばれし王族により統治される絶対君主制を長きに渡り続けてきた。しかしそのあまりにも教条主義的な思想は、徐々に国力を疲弊させ、かつては絶大な影響力を誇っていた王国の凋落は著しい。


 第6王女スレイン・ダーストン。

 何故、そのような人物が冒険者ギルドに顔を出しているのか、疑問に思うのは至極当然のことだった。


 ギルド中の視線がスレインに向けられていた。

 スレインからは確かに王族特有の気品が漂っている。

 その儚くも、美しい佇まいに納得するしかない。


 テイルがニッコリと、だが、確実に含みを持たせた笑みを浮かべる。


「やっぱり本物だぁぁぁぁぁぁああああああ! ちょっとクエストに行っただけでお姫様助けてくるステータスが高すぎて隠蔽してる系冒険者だぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!」


 テイルのテンションが無駄に荒ぶっている。

 知的な外見に似合わず、テイルは悲しき残念美人だった。


「流石ドラゴンスレイヤーだぜ! 言ってる傍からこれとは常識外だ!」

「都市伝説が現実に!? そんな馬鹿な、こんなご都合主義が許されて良いの!?」

「この非常識っぷり、堪らない、堪らないわ! ゾクゾクしちゃう……!」

「今日の下着は黒よ! ガチの勝負下着だからガチの。ワンナイトイリュージョン狙ってます!」

「冒険者がそれで良いのか?」

「ねぇ。やっぱりあの人、新聞に載ってなかった?」


 類は友を呼ぶ。このギルドにいる人達、おかしい。

 と、思わずにいられないクレイスだったが、それを告げる気力はなかった。




◇◇◇




「その……クレイス様は、とても慕われておられるのですね」


 おずおずとスレインが話しかけてくる。


「アレはそういうのとは違うんじゃないか……」


 各地で謎の無双系冒険者が暴れまわっているからだろう、断じて自分の所為ではないとクレイスは否定してみるが、やっていることは同じである。


 所変わって、ペルンまで戻ってきた一向は、この街で一番の高級宿に部屋を取ると、早速王女が目的を話し始めた。


「単刀直入にお話しします。クレイス様は命を狙われております」

「俺が?」


 このギフトの異常すぎる性能を考えれば、こういった厄介事に巻き込まれる可能性は予想していたが、思ったよりも遥かに事態の進行が早い。


 ビクッと身体を震わせ、猛烈な勢いでスレインが謝罪をしてくる。


「申し訳ございません! わたくしの力が及ばずこのような事態を招いてしまいどうかお許しください! この不手際の始末は必ず――」


「スレイン様に謝っていただくわけにもいきませんが、何故そんなことに?」

「クレイス様、わたくしのことはスレインとお呼びください。口調も気にして頂く必要はありません。御使い様に様などと呼ばれているとミラに知られればどのような目に遭うか……」

「ミラ?」

「い、いえ。こちらの話です! お気になさらず」

「はぁ」

 

 ミラ。その名前には何処かで聞き覚えがあった。

 具体的に言えば、つい最近新聞で見たような。

 ついで言えば、ダーストンにいる【聖女】だったような。


 ガクガクと震えていたスレインだったが、ゆっくりと事の顛末を話し始めた。


「――今から6日前のことです」

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