12/78
第12話 堕ちた剣聖
宿の一室。
森から抜け出し、クレイスの死を受け入れられないまま憔悴している私に、誰かが温かいミルクを差し入れてくれる。本当は何も口にしたくなかった。
ただそれを飲むことで気持ちが楽になると耳元で囁かれ、自暴自棄になっていた私は何も頭で考えることが出来ずに、一口だけ口に含む。
なんの味もしない。
けれど、徐々に意識が朦朧となり、私は気を失う。
(アレ……私……なにを……ナニヲ…………?)
ベッドの上で意識を取り戻したとき、私はクレイスに捧げるはずだった全てを失っていた。
ズキリと下腹部に痛みを感じる。
それがもう取り返しのつかない痛みだと、気が付くことを心が拒否していた。
――私はなにをされた?
――思い出してはいけない
――思い出してはイケナイ……
――私はロンドに……
――ワタシノ……




