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Death of the Academia 〜十二人の生徒達が紡ぎ世界を巡る英雄譚〜  作者: 鈴夜たね
あの日の真実と、青年を助けた英雄編
96/124

Curse Walker: Defiant Believer(カース・ウォーカー:ディファイアント・ビリーバー)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


I組第二授業から、ずっと離れて戦っていた外部の冒険者達と、記憶持ちの生徒達。


そしてようやく語られる——彼等と別れた後、どんな激戦を繰り広げていたのか……


そして、ネリカが助かり記憶持ちに参加した真相も明らかに——


《Death of the Academia》をお楽しみください

「クレヴァス。貴方は、貴方が信じた道を行きなさい」


クレヴァスは酷く動揺し、体は寒さに怯えるように震えていた。

ティオルは、ノクトヴァールに騙されていても、自身の信仰心を貫き――志を共に持たない私へ剣を向けた。


——かつての仲間を突き放してまで。


「私は、貴方が敵になろうと――味方になろうと、目指すべき場所は変わらない。信仰心を裏切っても、仲間を裏切っても、後悔しない決断を下しなさい」


クレヴァスは、迷い彷徨う様子で――鞘に手をかける。

震える右手で剣を握ろうとした時、彼は不思議と呟いた。


「……何かを捨てなければ、前には進めない」


クレヴァスの中で、迷いが消えたようだった。

震えていた右手は力強く柄を握り、真っすぐ私達を瞳に映している。


「俺はどちらの味方でもない。けれど、貴方が信仰心を貫いたように――俺も信仰を貫きます!」


雷鳴が迸り、私達の間を裂くように——刹那の一閃が闘技場を揺らした。


「雷鳴の型、竜神ノ雷(りゅうじんのいかずち)


クレヴァスの斬り裂いた空間から、雷竜がティオルの腸に喰らいつき、唸りを上げながら地へ叩きつける。


何度も、放電する光を放ちながら舞っている。


「俺はずっと、貴方の背中を追ってきました。……だけど、ノクトヴァール神が代行者を操っていると聞いて、俺の中に疑問が生まれたのです」


雷竜が咆哮を上げ、ティオルを壁に投げつけると——彼は小刻みに震えていた。


やがて、竜は稲光が消えるように消え去り——私やノクトヴァールは、クレヴァスの決意を見据えていた。


「まぁ………その程度の忠誠心だった、というわけです。本当に、俺の知っているティオル・マキリスなのか分かるまで、どうかご自愛ください」


クレヴァスが刀を向けると、刃が淡い光に包まれ——その光は腕のように伸び、壁に項垂れたティオルを抱き上げる。

そして彼を、アリーナに立つ自分の足元へと横たえた。


裏切りの中でも、ティオルに対するクレヴァスの想いは――決して曲がっていない。


「良かったの? ティオルじゃなくて私を選んで」


「構いません。でも、貴方を選んだわけじゃない。――自分がついていく主を見定める為の過程にすぎません」


もしティオルこそが最も必要な主だと判断すれば——彼は再び私達を裏切る。そんな未来も……というわけね。


****** ****** ******


驚いたよ。僕達からすれば、クレヴァスは突然裏切ったように見えたんだ。


これで、少しでもいい方向に行くと――思っていたんだけどね。



「神に対しての信仰心……良い心がけである。しかし我に仇なす者は、排除する――!」


ノクトヴァール神は、大太刀を容赦なく振り下ろす。

その瞬間――眠っていたティオルの瞳が、ギラリと開いた。


大太刀が地を割った刹那、アリーナは真っ二つに砕け、白煙が噴き上がる。

エラリア神とクレヴァスはその勢いを利用して、高く跳躍した。


「しまった……! ティオル様がっ!」


——白煙を裂いて、紫の閃光が奔る。

宝石のような輝きは、一直線にクレヴァスの刀を貫かんと迫った。


「――っ! エラリア神は、ノクトヴァール様を!」


やはり、行く手を遮ったのは——ティオルだった。

エラリア神に向かって、彼は必死に叫ぶ。


彼女は突き刺さった太刀を足場のように駆け上がり、刃に光属性の魔力を集束させてノクトヴァールの顔面へと——狙いを定めた。


眩い閃光が天を切り裂いた刹那——

ノクトヴァールが大口を開き、糸状に細い黒煙のブレスを吐き出した。


「エラリア……!」


アーサーの弱り切った叫び。

エラリア神は素早く体勢を切り替え、一本の剣で闇息を断ち切っていく。


その姿を見ながら、クレヴァスはティオルと刃を交えつつも、扉の結界を解き放つ。


——そして僕達は初めて、闘技場の床を踏みしめた。


「リゼルドは、クレヴァスをお願い! 俺はエラリアを助けるから」


「分かったよ。こっちは任せておきなさい!」


僕は足元に扉を開き――地中で出口に繋がる扉、ティオルの元へ泳いでいく。

その間も、激しく剣と刀がぶつかり合う音が、耳を劈く。



刹那――

金属が弾ける鈍い衝撃音が響き——僕はティオルが次に放つ一撃を読む。

クレヴァスに迫る刃先を遮るように、地中から出口の扉を開いた。


思い切り扉を開け――剣を突き出し、ティオルの攻撃を寸前で弾く。

刃と刃が擦れ合い、火花が舞い散る。


今だ――!


一瞬の隙を見逃さない……! ティオルが衝撃で体制を崩した瞬間――僕は地中に開いた出口の扉から、全身を投げ出すように躍り出た。


剣を円を描くように薙ぎ払い、その勢いのまま振り下ろす――

だが、黒い霧が再びティオルの身を包み込む。


だけど――今の僕には、関係ないよ!


振り下ろした刃が霧を裂き、閃光を奔らせて闇を貫く。

その奥から、狂気を孕んだ瞳が射抜くように僕を待ち受ける——


次の瞬間には、刃と刃が噛み合い――甲高い金属音が悲鳴を上げる。

交差する刃を通して伝わる圧力は、ただの戦いではない。

——心の奥底まで覗き込まれるような、異様な圧力だった。



やがて、ティオルの剣がうねりを見せると――黒炎玉が膨れ上がる。

自分に放射される光景を前にして、反射的に光の玉を生み出し——迫りくる炎を包み込むように爆ぜさせた。


轟音とともに白煙が舞い上がり、視界を覆いつくす。

だけど、もう迷わない――


僕は煙を切り裂き、迷いを断ち切るように一歩を踏み出した。


「これで……終わりだ――!」


剣を振り抜こうとした、その時——

視界に映ったティオルの姿に、思考が止まる。


剣を構えることも、身を翻すこともなく、ただ人形のように立ち尽くしていたのだ。


そして――

傀儡めいた動作で、右手を天へと掲げる。


「全員、止まれ!」


クレヴァスの鋭い叫びが、戦場を切り裂いた。

誰もが動きを止め、時間そのものが凍りついたかのように静寂が広がる。



「見えなくても分かるでしょう……この人が、何をしようとしているのか」


全員の視線が、掲げられた掌に集まる。

僕は視線だけを滑らせ、封印された神々の方へと向けた。


何も見えない。だが直感で悟る。

ティオルの掌から伸びる鎖が、あの鏡の中に眠る——神に繋がっていることを。


「今から、一歩でも動いてみろ……貴様等に、神の鉄槌を下してやろう」

最後まで読んで頂きありがとうございます!

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