Curse Walker: Slumber of the Divine(カース・ウォーカー:スランバー・オブ・ザ・ディヴァイン)
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
I組第二授業から、ずっと離れて戦っていた外部の冒険者達と、記憶持ちの生徒達。
そしてようやく語られる——彼等と別れた後、どんな激戦を繰り広げていたのか……
そして、ネリカが助かり記憶持ちに参加した真相も明らかに——
《Death of the Academia》をお楽しみください
「先の戦いがあったばかりだと言うのに……何か策でも講じるおつもりですか?」
ティオルとは正反対に、クレヴァスはノクトヴァール神との対話を、あっさりと受け入れた。
だが、エラリア様の言う通り――ほんの数分前まで剣を交えていた者の言い分など、容易に信じられることじゃない……
「いいえ、丁度いい機会だと思ったのです。あの大戦の後……俺を助けてくれたティオル様が正しいと、信じていますから」
その瞬間、ティオルの肩がわずかに震えた。
すぐに平静を装ったが、その奥に潜む影は隠しきれていない。
まるで、良くない未来がすぐそこに迫っているかのように――
「それに、俺もどうして選別をするのか――理解していない。だから、ノクトヴァール神に直接聞いてみたいのです」
あぁこれ……仲間にも嘘ついてるんじゃない?
選別をきちんと理解していない者――それは、闇の洗脳に侵されている可能性があるということだ。
「…………良かろう。それで、エラリア神とクレヴァスが、納得するのであれば構わぬ」
クレヴァスの発言により、閉ざされた道が――再び形を成して開かれようとしていた。
「決まりだ。……外部の人間は立ち入れないかもしれないけど、アーサーも同行してくれる?」
「もちろん! クレヴァスも、どこまで本心なのか分からないし……見張りとして、神と代行者の護衛人として、一緒に行かせてもらう」
あの光輪……今はないけど、もしティオル達が、まだ何か企んでいるなら……僕の魔力と合わせて、抗えるかもしれない。
「ありがとう、アーサー。それじゃあ封印場所を言って……扉を開くから」
僕の能力ならこの世じゃなくても、場所さえ示してくれれば好きに通れる。
神の代行者とあらば、それくらいの小細工は間違いなく行っていると思うし……
「ここより遥か西の孤島がある。人の足跡ひとつない――龍脈と神が封印されし地だ」
この異空間を作った時、外の風景にはなにがあったっけ……?
確か……森を抜けたその先には——街も人も、怪物さえもいない。
ただ、果てしない緑が広がっていたはず。
そこから西と考えれば――
僕は目を閉じて、該当する道と場所を探っていく。
かつてアラリック達と出会うきっかけになった、小屋を通り過ぎる。
そこから少しして、すぐに海が地平線の彼方まで続いていた。
……その無限の海に、不自然な影がぽつりと浮かんでいるのを見つけた。
「……あった。多分ここだね」
封印されているとはいえ、微かに今まで感じたことのない魔力の気配を、帯びていた。
おそらく龍脈の力だろう……
僕は杖の形に武器を変化させ、虚空に黒き扉を描き出す。
閉ざされた扉を通じて、静寂に包まれた孤島の景色がゆっくりと浮かび上がった。
それは、静寂に包まれた孤島の景色が広がっていた。
「うん。これなら海に落ちる心配もないし、大丈夫そうだ」
こうして僕等は――誰一人逃げも、隠れもせず扉をくぐった。
大きな坂道を登った先に、建物が微かに姿を見せていた。
波打つ音と、カモメの群れが鳴き声を上げながら優雅に空を飛んでいる。
振り返れば、そこにあった自分の国も、大陸さえも、影を失っていた。
海と空だけが広がり、伝承に存在する聖域だと——思い知らされる。
「………この先に、神が眠っておられる。封印を解くのも私の仕事だ……ついて来るがよい」
ティオルが、クレヴァスを伴いながら先導して歩き出す。
僕達も、その背中を追って坂を登る。
一歩ずつ足を踏みしめるたびに——地面から生命力のような重い魔力が、全身を伝って奔っていく。
世界を保つ龍脈に、近づいているからだろう。
やがて、黄金のピラミッドが姿を現す。
六属性の精霊を思わせる光の粒子が、段をなぞるように一段一段、周囲を舞いながら昇っていた。
「龍脈には――流石に手を出してないみたいで、安心したよ」
皮肉を込め、僕はティオルへ言葉をぶつける。
もし龍脈が闇に侵食されるなどということがあれば、世界だけじゃなく――一つの国すら、容易に滅亡へと追いやられるだろう。
「この龍脈の地下から、屋敷に繋がる通路が存在する」
ティオルはピラミッドの入口に漆黒の魔法陣を描き出す。
直後、大地を震わせる轟音とともに、暗闇へと続く隠し階段が姿を現した。
坂を登っていた時も、龍脈に辿り着いた今も、耳に届くのは空を渡るカモメの鳴き声と、たまに交わす僕等の声だけ。
世界はずっと、張り詰めた静寂に包まれていた。
やがて暗闇の階段の中に、六属性の光を宿した燭台が浮かび上がり、揺らめく光が影を映す。
その時、緊張を滲ませるエラリア様の横顔に、アーサーが小さく声を掛けた。
「あの、大丈夫ですか」
ルルナの正体が神エラリアだと知ってからのアーサーは、彼女に対し声の調子が固くなっていた。
「うん、大丈夫。……それより、アーサーの喋り方、少し硬くなってるよ。いつも通りでいいから」
「そ、そう。……ありがとう」
この賭けが、どんな結末を迎えるかはまだ分からない。
けれど――アーサーが愛するのはルルナ《妻》か、それともエラリア《神》か。
いずれ決断を迫られる日が来るのかもしれない。
そして僕等は、暗き地下へと降りる階段を一度渡り、更に光を求めて登り切った。
眩い光が差し込み、思わず目を細める。
その瞬間――視界に飛び込んできたのは、遥か古代の伝承に伝わる屋敷だった。
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