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Death of the Academia 〜十二人の生徒達が紡ぎ世界を巡る英雄譚〜  作者: 鈴夜たね
あの日の真実と、青年を助けた英雄編【プロローグ】
90/124

Curse Walker: Story Prologue(カース・ウォーカー:ストーリー・プロローグ)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


カルテットデスゲーム。

及び、ヴェイル達による命懸けの戦いが幕を閉じた。


しかしその中で、代行者の一人でもある{グラン・マウロ}が突然の死を遂げる。


同じ志を持った外部の仲間——リゼルドが学園に赴き、記憶持ちと離れた後に、何があったかを語り始める。


《Death of the Academia》をお楽しみください

「貴方は……俺達の味方? 本当に、アーサーさんの従者なのですね……?」


リゼルドという男は、目尻を和らげてゆっくりと、頷いた。

何故だか分からないが、彼からはアラリックさんに近いものを感じ取った。


穏やかな温かい光の魔力と、その奥底に潜む真っ黒な闇……

その雰囲気に、俺は自然と籠手から手を離した。


「どうやら、嘘は言ってないみたいっす。無礼な行動お許しください」


言葉を探すように一瞬息を呑み、慣れない拳と掌を合わせて頭を下げる。

微かに、俺のせいで関係に亀裂が入ったら――なんて考えが、脳裏に過った。


「大丈夫。そんなに、かしこまらないで」


その一言で、本当にアーサーさんの仲間だと確信した。

ゆっくりと頭を上げると、リゼルドさんはネリカさんの横たわる姿を見て、静かに呟いた。


「そっか……君が、アーサーの後継者だったんだね」


瞼にいっぱいの涙を浮かべて、ネリカさんの頭を優しく撫でた。

「後継者」という言葉の意味は理解できても、何故そんな言い方をするかは理解出来なかった。


「あの……後継者ってことは、アーサーさんは――本当に……」


ネリカさんの頭からゆっくりと手が離れ、瞼にたまった涙も一度に拭うと、リゼルドさんは俺に告げた。


「多分、アラリックは一目見ただけで分かっちゃうと思うから……先に君に全部話すね。――記憶持ちの皆と離れた後、僕達がどんな戦いをしてきたか」


話を聞く前に、一つ思い出したことがある。


そうだ……俺は聞かなきゃいけないことがあるんだった。

あいつが、ティオルが、アーサーさん達にどう関わっているのか。

そして――今どうしているのか……


「あの、ティオルって青年を知っていますか? 彼は……何か言っていましたか……?」


リゼルドさんは、ティオルの名を聞いた途端、目を細めて表情を曇らせる。

何か言いたくないことでもあるかのように、寮室には重い沈黙が落ちる。


「君については、何も言ってなかった……だけど、凄く苦しそうだったよ。あの子のあんな表情……初めて見た」


知りたい。あの男は神のように振る舞い、世界と人々を支配している存在だ。

そして、リゼルドさんから聞かされた小さな真実も……本当なら。

何がそんなに、ティオルの心を動かしたのか――


「どうか教えてください……!」


俺は息を呑んで、詰まりそうになる喉から振り絞った。


「どんなことでも……必ず受け入れますから」



同時刻——

コロシアムでは、瓦礫の山が片付けられ、まるで広場のように姿を変えていた。


崩れ落ちた壁からは、夜空が覗き風が吹く。

地面も至る場所に罅が割れ、いつ転落してもおかしくはない——戦場の跡地だった。


「ここも、しばらくは使えそうにねぇな……」


ヴェイルが変わり果てたコロシアムを見渡し、膝は微かに震えていた。


「なぁ、一つ聞いていいか……? ネリカが生きて、教師が死んでるのに……なんで冷静でいられるんだよ?」


ゼオンの問いに、ストリクスは、再び休ませていた思考がざわめき始める。

押し込めていた狂気の心が爆発しそうになった。

その時――ヴェイルの落ち着いた声が、場を宥める。


「俺達は当事者じゃないし、グランが死んだことも、何も思ってないわけじゃない。それに……真実を知りてぇなら、ネリカ本人に聞いた方が確実だろ?」


正論をぶつけるヴェイルに、ゼオンは図星だった。

意表を突かれたような、苦い表情でアラリックに問い詰める。


「じゃ、じゃあ。アラリックはネリカと一緒に、コロシアムにいただろ……! どうなんだよ!」


サイラスとエニアルの視線も、同時に浴びるアラリック。

しかし、返ってきた回答は意外なものだった。


「悪いけど……僕も知らない。駆けつけた瞬間に、倒壊したから」


ヴェイルもストリクスも、それが真実ではないことを、すぐに悟った。

それでも——誰一人問いただすことなく、アラリックは振り返らずに歩き去る。


残された背中に、ゼオン達は言葉を失い立ち尽くしていた。



そして、アラリックが向かう場所は——ネリカの寮室。

帰ってきたリゼルドの元へ、足早に進んだ。


震える左手で、ノックもせずにドアノブを捻った。

重たい音を立てて扉が開き、灯りの差し込む室内が目に飛び込む。


振り返ったのは、変わらぬ穏やかな笑顔を浮かべる、リゼルドだった。

その存在を確かめた瞬間、心の奥底で絡みついた後悔が、少しだけ解けた気がした。


「……久しぶり。アラリック」


柔らかい声色が、懐かしさを呼んだ。

あの日の約束や、剣を交えた時間——

リゼルドと過ごした一日が脳裏を過ぎると、アラリックは深く安心した。

明日から新章本編開幕です!

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