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Death of the Academia 〜十二人の生徒達が紡ぎ世界を巡る英雄譚〜  作者: 鈴夜たね
水属性と記憶持ちの賭けバトル編【第二幕】
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Aqua Hand in Joker: Finally Decided(アクア・ハンド・イン・ジョーカー:ファイナリー・ディサイデッド)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


カルテットデスゲームを利用し、脱落者を助ける作戦に乗り出したヴェイルとストリクス。


その中で選ばれたネリカは——

仲間を信じて、自分の信じた道を歩む為に、剣を向ける。


救世主となった、アラリックとリオライズの力を借りて彼等の、戦いの行く末は——


《Death of the Academia》をお楽しみください

僕の心は、ずっと揺れてた。

この世界が間違っていると、正そうとする彼等の姿勢は……常人とは思えないほど狂気だ。


だけど、そうじゃない。

その狂気の正体は、大切な人と、自分達の世界を守る為。


だから、手段も選ばない――

それが……彼等に残された、唯一無二の戦い方と心の在り方なのだろう。


僕だって、最初はどうして命を懸けて戦うか分からなかった。

だけど——今なら分かる……


戦う時だけ歪んで、心を鬼にする……!

もう迷わない。


「僕は”優しい”って言われるのが大好きです。だけど……

貴方達と対峙する時だけは、容赦はしません!」


そう叫んだ瞬間――

僕の体内から、結晶化さんの魔力が溢れ出し、氷の宝石となって宙へ舞い上がった。


手に握っていた氷のハンマーを折ると、瞬く間に双剣へと姿を変えた。


「僕に、力を貸して!」


双剣の刃先に、水色に澄んだ魔力が触れた瞬間――

凍てつく吹雪が、僕の全身を包み込み、肌を刺す冷気が脈打つように広がっていく。


波紋のような霜が足元から走り、コロシアム全体を一瞬で白銀に染め上げる。


同時に、僕の体にも変化が訪れた。

両腕、右頬、そして左の額に、氷の結晶を象った紋章が刻まれていく。


「これは……結晶化さんのくれた魔力?」


これまで感じたことのないほど濃く、重厚な水属性の魔力が、血潮のように全身を巡っていた。


——その時、アラリックが地を踏みしめ、再び湖を生み出そうとしていた。


「いらない! 大丈夫。それに不思議と力がみなぎってくる……」


アラリックは、その言葉に何故か安心を覚える。


離れていても、共に戦ってくれているからだ。

アーサーを……仲間を……僕は信じているから。


こうして、アラリックは地中に込めていた魔力を解除した。




「グラン先生、最後の勝負です! 恨みっこはなしですよ!」


双剣の切っ先をまっすぐ突きつけ、決戦の火種を切る宣言を放った。

――彼等の思惑、次の脱落者との戦いは大詰めを迎える。


「――――」


グラン先生の瞳は、光も揺らぎさえない目で、僕を見据えた。


そして——

轟音が、世界を引き裂いていく。


コロシアム全体が倒壊を始め、地面に深く黒い罅が走る。

その揺れは、立っていることすら困難にするほど激しく、観客席の石材が次々と砕けると、白煙を上げながらアリーナへ降り注いだ。


「例え……貴様が脱落しなくとも、この揺れに違和感を覚えた者が、コロシアムへやってくる……」


まさか、結界を張ってないから記憶持ちじゃない人達が……!


グランの暴走を悟った僕は、必死に声を張り上げた。


「もうやめてください! 貴方達は、世界の為じゃない……! こんなの、無差別殺人と変わらない!」


「悪に語る口などない!」


倒壊したコロシアムの瓦礫が、龍のようにうねりを上げ螺旋を描いて僕に突き刺さる。

空気は悲鳴のように裂け、鋭い石片が光を反射して閃いた。


けど——僕は、絶対負けない!


双剣に宿した魔力を全身に巡らせ、一帯を覆うように解き放つ。

氷の閃光が走り、迫り来る瓦礫は一つ残らず砕け散り、粉雪のような破片となって宙を舞った。


「僕は、貴方の敵であり“味方です!“」


この優しさは、狂気と見えるのだろうか。

それでも、僕は何があっても……


だが、今のグランには一切届かなかった。

右手に禍々しい魔法陣を展開し、その視線はフラーナを人質に取るアラリックへと突き刺さる。


次の瞬間、その右手から土の刃が猛然と上がった。


「――っ!」


鋭い衝撃音とともに、アラリックの胸を貫くき、空中で血飛沫が舞う。


土の牙は、瞬く間にその色を吸い込み、赤黒く染まっていった。


「……やれ、ネリカ……!」


掠れた声が届く。

最後の一撃を託された僕は、迷いなく地を蹴った。


「グラン先生、僕は貴方の心を折ってでも——勝利に食らいつきます!」



氷の双剣を振り抜こうとした瞬間――


崩壊寸前だったコロシアムが、遂に限界を迎えた。

残された岩壁の罅が、音を立てて広がり崩れ落ちる。

石床も、波打つように足元から消え去っていく。


世界そのものが終わっていく感覚を味わいながら、最後に目にしたものは——驚愕の光景だった。


グラン先生の表情が確かに見える。

ゆっくりと口角を上げて不気味に嗤う。


まるで、最初から計画していたかのように。

そして僕の意識は、暗闇に沈んで消えていった——


「自分も、彼等の仲間になりたい」その一心で、戦い続けたリノ・ネリカ。

彼の待つ結末は、”希望か”絶望か――

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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