表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Death of the Academia 〜十二人の生徒達が紡ぎ世界を巡る英雄譚〜  作者: 鈴夜たね
水属性と記憶持ちの賭けバトル編【第二幕】
86/124

Aqua Hand in Joker: Because We Stand Together(アクア・ハンド・イン・ジョーカー:ビコーズ・ウィ・スタンド・トゥゲザー)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


カルテットデスゲームを利用し、脱落者を助ける作戦に乗り出したヴェイルとストリクス。


その中で選ばれたネリカは——

仲間を信じて、自分の信じた道を歩む為に、剣を向ける。


救世主となった、アラリックとリオライズの力を借りて彼等の、戦いの行く末は——


《Death of the Academia》をお楽しみください

「気を付けて! そいつは相手の行動をコピーする“人間の目”を持ってる……!」


駆け出すリオライズに向かって、ストリクスが鋭く叫んだ。


ケルベロスの片目に宿る、紫色の人間の瞳。

四方八方に眼球がせわしなく動いた次の瞬間、もう片方の目も同じ人間の瞳へと変貌する。


「なるほど……これは気持ち悪いっすね。でも――」


リオライズが拳を握り直して、空気を裂く勢いで踏み込むと、ケルベロスの頭部めがけて一閃を描いた。


籠手の刃が風を巻き込み、その先端が微かに触れた瞬間——


轟音とともに衝撃波が迸る。

ケルベロスの頭部が遠くへと吹き飛ばされた。


地下監獄は悲鳴のような揺れを見せ、リオライズは一瞬だけヴェイル達へ視線を送った。


その視線と意図に気付いたヴェイル達。

落ちた首の断面へ炎を浴びせ、再生の芽を断ち切った。


「良いアシストっすね! ありがとうございます」


ケルベロスは、かろうじて足を僅かに痙攣させるだけになっていた。

もはや、前方を捉えることすら難しくなり、致命的な損傷を負った体は、死を待つだけの獣と化していた。


「じゃ、ヴィンティス先生からもらったもの……ここでお返しさせて頂くとしましょう!」


籠手全体が緑の光を放ちながら、脈打つように次第に全身へと広がっていく。

一歩踏みしめた瞬間、その衝撃だけで周囲の空間が軋み、砕け始めた。


刹那――

リオライズの拳が、疾風とともに突き出される。


「全てを斬るウィンド・ファング!」


竜巻に包まれたケルベロスの体は、一瞬で八つ裂きとなった。

監獄の天井が、下敷きにするように崩れ落ち、白煙でリオライズの姿も消えてしまった。



「リオ……! 大丈夫か!? ……返事しろ!」


ヴェイルが再び涙目になりながら、リオライズの名前を叫ぶ。

ストリクスも、動揺する気持ちを抑えながら、ただ煙が晴れるのを見届けた。


すると、二人に向けて強風が打ちつける。

その温かく、安心できる風魔法に目を見開いた。


「ヴェイルさん、その呼び方はまだ容認してねぇですよ」


霧が晴れ、ようやくその姿が再び目の前に現れる。

満面の笑みでリオライズが立っていた。


「……っ良かった。リオライズ!」


ストリクスも、肩の荷が降りたように体が楽になる。

ヴェイルと顔を合わせると、小さく微笑み前を向く。


「あとは……アラリック達の勝利を信じて……か」


月明かりの下で、願うように呟いた——




「これって、どうしたら勝ちってことにしてくれるんですか?」


まるで舞を踊るように、氷結の槍をグランへ突き出す。

湖と化したコロシアムのアリーナの上で、二人の青年が肩を並べ、戦っていた。


「知らぬ。だが、貴様が俺を瀕死の状態に持っていくことができれば……認めてやらんこともない」


「そう……ですかっ!」


ネリカは高く舞い上がり、槍を振りかざす。

着地と同時に水面が悲鳴を上げるように砕け、その破片が瞬時に白く凍りついた。


氷は波紋のように広がり、グランの体を一気に包み込む。


湖に勢いよく着地し、新たな武器・氷のハンマーを作り出す。

とどめの一撃を刺そうとした瞬間、グランの体が小刻みに震え、凍結を砕いた。


「ぬるい……その程度で倒せると、本気で思っているのか?」


嘲笑とともに放たれる声。

だが、ネリカはその挑発の奥に潜む隙を知っていた。


「別に、貴方を倒すのが目的じゃない。こちらは、人質が取れればそれで済む話です」


その言葉と同時に視線が泳ぐ。

隣で戦うアラリックを、一瞬だけ見る。


フラーナ、やっぱり君が救援に来たのは間違いだったね……

君が好きで、君を好きな人にとっては、心なしか焦っているように見えるよ。


そして——

グランを射抜くその瞳は、氷よりも冷たく優しさを帯びない恐怖にまみれた色をしていた。


「自分が相手に卑劣な真似をするということは……貴方自身も、覚悟を持って牙を向いているのでしょう?」


吐き出す声は柔らかく、それでいて刃のように鋭い。

その奥底には、静かな恐怖が潜んでいた。


「いい度胸だ……そこまで言うのなら、俺達を楽しませよ」


人質――

その言葉が示すのは、フラーナだった。


アラリック。

戦いにおいて——剣術、魔術、武術。

全ての指標が、他の生徒達より優れている天才。


入学時のトライアウトでは、彼が真っ先にフラーナを打ち倒したことで、今コロシアムという戦場で再戦が始まっている。


無口な二人は、声ではなく、魔術と技巧をぶつけ合う。


水面が震え、次の瞬間、天を突く氷柱が形成される。

アラリックがひと蹴りを放つと、その氷柱は粉砕され、無数の氷礫となってフラーナめがけて降り注いだ。


だか、そう簡単に猛攻が通るわけもなく——

マリゲータ戦で目にした、あの奇妙な光景が再び広がる。


何十匹もの兎が現れ、互いを抱きしめるように融合する。

まるで骨を砕かれるような音を鳴らしながら、降り注ぐ氷礫を全て呑み込んだ。


「なるほど……貴様自身は、戦闘要員ではないのだな」


水面に立った兎の群れ。

「キュウキュッ」と鳴き声を上げると、フラーナの指先の合図とともに、アラリックにを包み込むように一斉に飛びかかった。


白い毛並みが全身を覆い、ミイラの包帯のように締め上げる。

鋭い爪が肉を裂き、肩や腕から血が滲む。


「アラリック! しっかりして!」


ネリカの叫びが、水面を越えて届く。

その直後、アラリックの右目の色が変わり、オレンジ色のトパーズに輝いた。


瞬間――

光はコロシアム全体を満たし、湖の水が一気に干上がる。

兎の群れは音もなく散りに帰り、フラーナの体から力が抜け落ちた。


「なんです……? 魔力が吸われていく……」


やがて、瞳の色が元に戻ると、アラリックから放たれていた光も、徐々に薄れていった。


僕が安堵の表情でアラリックを見た時、彼の目は悲しみと怒りを備えたような目つきだった。


鞘からレイピアを引き抜いて、フラーナ先生の首筋と隣り合わせに、剣先を置いた。


あぁ……本当に手段を選ばない人なんだ。

自分が悪に成り下がろうと、世界の為なら何でもする……


「最高じゃん……僕も、仲間に入れて欲しいな……!」


心底歪んでる。

だけど、僕は仲間と自分の信じた道を真っすぐ往くと——決めたから!


自分の命と、仲間の命運を賭けた、リノ・ネリカの戦いが遂に決着——

最後まで読んで頂きありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ