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Death of the Academia 〜十二人の生徒達が紡ぎ世界を巡る英雄譚〜  作者: 鈴夜たね
水属性と記憶持ちの賭けバトル編【第一幕】
80/124

Aqua Hand in Joker: Two Pair Light Rope(アクア・ハンド・イン・ジョーカー:ツー・ペア・ライト・ロープ)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


【追憶の海底】にて過去の自分の記憶を見て、再び託された使命に向き合ったアラリックとリオライズ。


一方、彼等が不在の学園では、選別阻止の為——

二人の青年が、大きな賭けに出る。


《Death of the Academia》をお楽しみください

暗闇に漂う、星屑のような光と、幾千の声。


怒りと悲しみ、温もりと慈しみ——誰の記憶なのかも分からない。

しかし、その全てが渦巻き、耳の奥に直接流れ込んでくる。


ここがどこなのか、なぜ声が聞こえるのかも分からない。

ただ、何かが確かに届いていた。


「じゃあ始めようぜ! 二期生イベントを……!」


——そして、目が覚める。

重い瞼をゆっくりと上げて、辺りを見渡す。

そこは、自分の寮の部屋だった。


隣には、ストリクスが静かに座り、心配そうにこちらを見ている。


包帯で巻かれた体。

俺はすぐに、状況を理解した。


「ネリカは、どうなった……! あれから、何日経ったんだ!?」


焦るヴェイルの手を、そっと押さえるようにして、ストリクスが言った。


「落ち着いて……ヴェイル。あの授業ゲームが終わってから、数十分しか経ってないから……」


その声色には、確かな安堵と疲労が入り混じっていた。


「ヴェイルには悪いけど、もう時間は残されてない……ネリカを助けるなら、その体を無理矢理でも動かして、作戦に移らないと」


窓の外は、日が落ちかけていた。

薄暗く、不穏な空気が漂い始める。


「あぁ……大丈夫だ。“アラリック達がいなくても、出来るんだぞ”って分からせてやるチャンスだしな!」


待ってろ……クソ教師ども。

俺等が必ず、目にもの見せてやる!



一方その頃――

追憶の海底にて、自身の過去と向き合い、前に進んだ二人の青年。

アラリックとリオライズ。


彼等は、学園で待つヴェイルとストリクスの元へ、駆け出していた。


「そういえば、アラリックさん。故郷はここの近くでしたよね?」


複雑な森の一本道を、華麗にくぐり抜けながら、リオライズが問いかける。

そう――アラリックも、北の大地で生まれ育った者。


追憶の海底の存在を知った時から、微かにも意識してしまっていた。


「もちろん、あの二人の現状が、この場で知れるなら行きたいけど……今は問題ない」


……この人、気を遣ってくれたのか? 他人の故郷を差し置いて、自分だけみたいな。

――分かんない。だけど、きっとそれが……今のアラリックさんにとって、最善手なんだろうな。


「そうですか……じゃあ帰りましょう。学校へ……二人が待つ戦場へ――」


***** ****** ******


やっぱり僕が間違ってたのかな……

あの二人は、利害が一致していなくてあんなことに。


ネリカは、爆発に飲まれ意識を手放した後――一枚の置手紙で全てを悟った。


ヴェイルとストリクスが意気投合して、この世界の謎に踏み込もうとする僕を、助けようとしたんだと思ってた……


でも、実際には違ったんだ。


その手紙には、グランからこう書かれていた。


ストリクスは、何かの目的のために動いている。

そしてその達成のために、貴様を助けたに過ぎん。


一方でヴェイルは、貴様の邪魔が入らぬよう始末しようとした。

どうやら、自分以外の仲間が増えることに、突如として嫌悪感を覚えたらしい。


もしも、自分を貶めた人間が憎いなら、我々に協力し敵を討て。



なんで、ただの先生が……こんなことまで知ってるんだろ。

本人たちに直接聞いたのかな……? 

でもいいや、別にそこまで憎んでないし……“僕はもう死ぬ覚悟が出来ているんだから”


だが心のどこかで、この手紙の内容を否定していた。

「妄言であってほしい」と願いながら、彼は扉がノックされる音を聞いた。



「ここが……?」


遂に、作戦実行に移るヴェイルとストリクス。

彼等は、ネリカが終わりを迎え、かつての犠牲者も足を踏み入れたであろう地《地下監獄》に続く道を、ストリクスが見つけていた。


「あぁ……正直盲点だった。まさか職員室に、“隠し通路”が存在するなんて……」


「よく分かったな、ストリクス。でも、こんだけセキュリティが甘いってことはよ……」


二人が顔を見合わせた。

互いに通じ合うように、ゆっくりと頷いた。


「用意周到で、ここへ僕達を導くつもりだ。きっとこの先に……ネリカも」


「罠がどんだけあろうと知ったことじゃねぇ。何があっても必ず勝つ……!」


互いに拳を合わせてグータッチを交わす。

そして——

隠し通路へ、二人は身を投じた。



そして、ネリカは一足先にグランに連れられ、地下監獄を歩いていた。

錆びつき、腐敗した匂いが鼻を刺激する。


彼は悟った。


そうか……アイレンも、この人たちの思惑通りに殺されたのか。

Ⅰ組の最初に脱落した人も、きっと――


そしてグランは、ネリカに対し一つの質問を投げかける。


「リノ・ネリカ。――貴様も、我々の組織で復活するつもりはないか?」


その問いかけに、ネリカの心は揺れる。

相手に寝返り、生を続けるか。寝返ることなく、死を受け入れるか。


それとも――

一か八か、仲間を信じて戦うか。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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