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Death of the Academia 〜十二人の生徒達が紡ぎ世界を巡る英雄譚〜  作者: 鈴夜たね
水属性と記憶持ちの賭けバトル編【プロローグ】
74/124

Aqua Hand in Joker: Backup Move(アクア・ハンド・イン・ジョーカー:バックアップ・ムーヴ)〈前編〉

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


【追憶の海底】にて過去の自分の記憶を見て、再び託された使命に向き合ったアラリックとリオライズ。


一方、彼等が不在の学園では、選別阻止の為——

二人の青年が、大きな賭けに出る。


《Death of the Academia》をお楽しみください

アラリックとリオライズ。

各クラス最上位二名が、追憶の海底へ赴いた、数時間後の出来事へ巻き戻る――


「……見慣れた天井だ」


天井を、ぼんやりと見上げながら、ヴェイルは朝の静けさを感じている。

窓から差し込む、温かく柔らかい朝日。

スズメのさえずりが、いつもと同じように朝を告げる。


そして、今日――

リーダーであるアラリックの助けを借りず、ヴェイルとストリクスは、自分達だけの試練と戦う朝を迎えた。


ゆっくりと起き上がり、制服に袖を通す。

ワイシャツのボタンを一つ一つ留め、赤いネクタイを締める。

黒いコートを羽織り、腰に剣を携えて、寮室の扉を開けた。


「おはよう……ヴェイル」


扉を開けると、目の前には同じ志を持つ仲間——

ストリクス。

淡いピンクの長袖セーターに、真紅な瞳。

陽光を反射するような白銀の髪。


眠たそうに目を細めながら、腕を組んでヴェイルを見据えていた。


「おはよ。あんま寝れなかったのか?」


「僕らしくもない……頼れる人間が一人いなくなっただけで、震えと緊張が止まらなくて……」


——ん……? 待てよ……“頼れる人間が一人?” もしかして、俺とリオライズ頼りにされてなかったのか……!?


「ま、まぁそうかもな。――でも、必ず試練を成功させようぜ。あの二人が、目ん玉ぶっ飛ぶくらいの!」


拳を突き出すヴェイル。

ストリクスは、静かにグータッチを返し、口元に微かな笑みを浮かべる。


「選別阻止の為には、大人達に勝つ必要もある。足引っ張るなよ」


「おう! ったりめぇだろ!」


頼れる仲間がいない朝。

初めて託されたミッション。


互いに背中を預け、覚悟と信念を胸に——選別を阻止する戦いに、足を踏み出していく。



朝食を終えて、しばらく経った頃――

I組の生徒達に、教室への招集が告げられる。


各自の部屋で待機していたヴェイルとストリクスは、それぞれ扉を開けて廊下へ出ると、自然と目が合う。

言葉を交わさずとも、覚悟の決まっている二人は、静かに頷く。


その時――

丁度同じタイミングで、招集を聞いたレンリーとゼフィリーが、廊下を曲がりながら姿を現す。

彼等もまた、ヴェイルたちの顔を見つけ、穏やかに声をかけてきた。


「ようやく、授業再開か~ 体感的には、凄い待ちましたよ~」


純粋で飾り気のない性格の持ち主、土属性を得意とする生徒――レンリー・ノア。


普段はほんわかとした雰囲気で、周囲を和ませる存在だが、一度戦闘となれば驚くほど変貌する。

第二授業では、暴走時の魔力を抑制する術をティオルから学び、先日行われた対人戦も、安定した力を発揮していた。


「そんな、呑気なこと言って、今日の授業の脱落者になっても、おかしくないんだよ」


落ち着いた口調と面倒見の良さが光る、真面目で誠実な生徒――ゼフィリー・フィオラ。


学園入学前から、自身が風属性の資質の持ち主だと、信じて疑わなかったゼフィリー。

だが、第一授業で深い洞察力により、出された課題の意図に気付き、火属性へと進化を遂げた。


彼等は、“デスゲームが正当化されている“と信じている――

まだ世界の本質を知らない、呪われし生徒達の一人だ。


Ⅰ組第二授業で、アーサーやルルナと特訓した僕等と違い、敵対関係にある、ティオルとクレヴァスと特訓した二人は――学園の謎も、世界の闇も知る由が無い。


しかし、レンリーの飾らない笑顔は、時折、僕等が背負っている苦しみをふと忘れさせてくれる。


ゼフィリーも、アラリックが不在の今にとっては欠かせない存在。

破天荒なヴェイルやレンリーとは対照的に、落ち着いた雰囲気を持つ彼のような人間こそ、記憶が無くとも今の僕には必要だ。



「あれ? ここ、I組の教室ですよ〜?」


廊下の先に視線を向けたレンリーが、不思議そうに声を掛けた。

視線の先には、戸惑った様子で立ちすくむⅡ組の生徒達がいた。


「うん。そうなんだけど、“今日はⅠ組の教室に集まって“って言われたから」


答えたのは、リノ・ネリカ。

中性的な容姿と穏やかな物腰が印象的な、水属性の使い手の一人。

レンリーとは一度……授業内の対人戦で剣を交え、その柔らかい性格から、誰とでも自然に打ち解けられる愛嬌の持ち主。


今の僕達に最も必要なのは、水属性の資質を持ち、集団をまとめる力を備えた存在。

土属性のアラリックが、アズレインから継承したとはいえ、そこまで酷使出来ない以上……狙いは決まった。


「なら、別に僕達も気にしないから早く入りなよ。レンリーも、早く授業受けたいみたいだし」


「……あっ。そうですね。じゃあ、中に入りましょう!」


そう言って扉を勢いよく開けたレンリーは、戸惑うゼフィリーの手を取ると、そのまま教室へと入っていった。

ネリカ達も、それに続いて、Ⅰ組の教室へ足を踏み入れた。


ストリクスはヴェイルの足を軽く踏むと、小さく指を立てて合図を送る。


中指と小指を立てたサインに、ヴェイルが気付いたのを確認すると、ストリクスは中指をゆっくりと折り曲げた。


“水と風で、今一番必要なのは水だ”


ストリクスのハンドサインを、確認したヴェイルは言葉を交わさず教室に入っていくと——

まるで、指の関節を鳴らす直前のように、親指で人差し指を押さえて”OK”のサインを返した。


まずは、奴等が今回の選別にどんなデスゲームの口実を作るのか……話はそこからでもある。

——それにしても、ヴェイル……あれだけ気を張っている割に、”任せておけ”なんて……本当に、あいつらしい。



そして遂に、新たなデスゲームの授業内容が伝えられる。

ヴェイルとストリクスの二人が、選別の命運を賭けて、もう一人の仲間を探し出す――

最後まで読んで頂きありがとうございました

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