Death Game: Challenge of the World(デスゲーム:チャレンジ・オブ・ザ・ワールド)
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
アーサー達から語られた、アラリック達と出会う前の、真実とルルナの正体……
そして、アラリック達から語られる、次なる目的とは——
《Death of the Academia》をお楽しみください
「じゃあ。俺はヴェイルさんと、ヴィンティス先生達に話してくるっす。調べ物については二人に任せました」
作戦の実行日は、すぐにやってきた。
真実を聞き出した翌日、彼等は行動を開始した。
二戦目の対人戦を辞退して、Ⅱ組担当のマリーナとヴィンティスにも、真実を吐かせること。
そしてアラリック達は、昔ストリクスが使っていたという、廃墟にも近い図書館へと赴くのだった――
「その図書館、昔から通ってたのか?」
「うん。当時は無属性だったから、どうしたら目覚めるのかを調べてた。あんまり参考にはならなかったけど……」
「だが、人気が少ないのは良いことだ。誰にも邪魔されず、調べられる」
昇降口へ向かう廊下で、二人が向かう図書館について、ストリクスが昔の情報を話していた。
「それにしても本当に、学園の外に出るんだな……アラリックは、もう二回目かもしれないけどさ」
「何を言っている? 貴様も対人戦で、一度外に出ただろう」
「……あれはカウントしないでしょ」
他愛もない話で盛り上がっていると、ふと、こちらに向かって歩いてくるグランと目が合う。その瞳には、何か含むような光が宿っていた。
しかし、言葉は交わさずすれ違い、小さな昇降口の扉に手をかけた時、グランが振り返りもせず、話始める。
「世の中には、”知らない方が幸せだった”ということがよくある……お前達は、自分達の行いに向き合えるのか?」
その言葉と言い方は、まるでこれからアラリック達が何をしようとしているのか、分かったような口ぶりだった。
それでも、アラリックは動揺を一切見せず、言葉を返した。
「だって、これは戦争ですから。勝つ為には、力を手に入れなきゃならない。――手段を選んでる暇はないんです」
昇降口の扉が、引きずる音を立てながら、アラリック達は外へ出ていった。
一方、リオライズとヴェイルは、Ⅱ組の職員室へ足を運び、マリーナとヴィンティスに話をつけるのだった。
職員室の扉の小さなガラス窓から、様子を探る。
「風の魔力の反応ありっす……」
リオライズは、同じ風属性のヴィンティスの気配を察知した。
ヴェイルは、反対側の扉のガラス窓から、マリーナを探す。
――すると、青い長い何かが通ったように見えた。
「マリーナもいるっぽいな……行くか」
ヴェイルが、状況を報告して、合図する。
気合十分のリオライズは、掛け声と同時に職員室の引き戸を思い切り、こじ開けるように開いた。
「失礼するっす! 御二方」
リオライズ達の予想通り、彼女達は職員室へいた。
振り返った二人が、“待っていた“というような表情で見据えている。
「あら、リオライズ。それに珍しいお客さんも連れているのね」
ヴェイルにも、視線を送ると状況を即座に理解したようだった。
彼等に対して、皮肉にも近い言葉を投げかける。
「もしかして、対人戦の情報を盗みにきたのかしら? でも残念。貴方達がどれだけ同じ境遇の人間で、分かち合える存在でも、口実の為、戦い合わなくちゃいけないもの」
その言葉に、リオライズは嘲笑するように言い返す。
「フッ……フフ……その逆っすよ、先生」
黙って話を聞いていたヴィンティスが、ここで初めて口を開いた。
「どういう意味です?」
「俺達は、第二戦の辞退の報告と、“貴方達二人に宣戦布告を正式に行う為、ここへ来たんすよ”」
職員室に、冷気が走るような静寂が満ちた。
軽く優しい目つきとは一変。鋭く睨む目つきへ変わったリオライズは、そのまま話を続ける。
「残念すっけど、あんたらの陰謀は、外部の人達から粗方聞いている……学園の生徒達以外の人間のことも、全て聞きました」
余裕があるような顔で、つまらなそうに聞いているマリーナ。
最後に彼は、二人に問う。
「改めて聞くっす……まず一つ目は、アイレンさんをどうしたのか。もう一つは、本当に二人は、今の選別のやり方が正しいと本気で信じているんですか?」
徐々に震えていく、リオライズの声。
始めにヴィンティスが口を開いて、答え始める。
「アイレン・セウリーに関しては、表面上は強制退学として扱いました。しかし、彼にはまだ、戦う意思があったので選別の為の試練と向き合うのを条件に――開放しました」
「言っている意味が分からないんすけど、要するにアイレンさんは生きてて、学園で行われる試練とは別の選別の試練を生き延びるために受け入れたと……?」
「そのような解釈で間違いありません」
「……嘘だ……」
「ヴェイルさん?」
突如、掠れた小さな声で、絶望に満ち溢れるようにヴェイルが呟いた。
「もしそうなら、ソニントはどうなる……? あいつだって、同じ条件なら……生き延びてるはずだろ……!」
肩を震わせて、どんどんと怒りの感情へ変わっていくヴェイルの声は、職員室内に響いた。
それでもマリーナ達は、顔色一つ変えず淡々と答え続ける。
「グランもフラーナも、自分に対して興味を無くした人間の面倒まで、見れない生き物なのよ」
その言葉に、ソニントの全ての真実が詰め込まれていた。
グラン達と協力関係を結ぶか、世界の謎が暴かれた時、他の生徒達と一緒に戦うかを――
そして、ヴェイルは全てを悟った時、膝から崩れ落ち、静かに涙を流して自分に言い聞かせる。
落ち着けヴェイル。仲間が死ぬたびに一喜一憂なんてしてたら、みっともないぜ……そいつらの分まで報いるって決めたんだろ……?
涙を隠すように、両手で顔を覆う。
弱い自分を憎むように、嘘をついている自分とは違う感情が押し寄せる。
あぁ、でも。いつか壊れてしまうかもしれない……こんな日常が当たり前になるのは、やっぱり………耐えれない……
その姿を横目に、リオライズは本気で仲間の死を悲しむ者がいて、改めて腐ってしまった世の中だと、認識した。
「そして、二つ目の、“選別を信じているかについて“だけど、簡潔に言えば――信じているわ」
「何故……?」
「神の意志の下、そしてその代行者に選ばれし人間。あの方たちが言っていることは、何一つ間違ってないからよ」
「貴方は他者の言葉だけを信じるのですね。デタラメかもしれないと、疑うこともなかったのですか?」
Ⅰ組の入学前の記憶が戻った生徒達が行っていた、自分達で異変に気付くかどうかの、試みも一瞬で塵に変わった。
「神の意向は絶対なのよ。デタラメだなんて――聞き捨てならないわね」
初めて強い感情を出したマリーナから、冷気が横切る。
この時点で、マリーナ達は選別される世界が、本気で正しいと思っていることが、確定した。
「最後に一つ良いことを教えてあげる。——“真摯に世界を変える為に頑張っているようだけど、II組からもう一人脱落者を出すことを決めているわ”」
その言葉に、リオライズは目を見開いた。
焦る瞳と声で、マリーナに理由を問いただす。
「どういう意味っすか……?」
「簡単な話よ。対人戦の二戦目をやらなくとも、選別を行う。ということよ」
不気味な笑み。側から見れば、悪女の笑みとしか見えない物だった。
そして、静かにリオライズの元へ足を運び、耳元で氷が突き刺さるような冷たさを帯びて囁いた。
「貴方達の攻略が早いか、選別が早いか、”楽しみね——“」
アラリック達の懸念していた、II組から出る、もう一人の脱落者——
それでも今は、仲間を信じて歩き続ける。
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