Death Game: Burdened Mission(デスゲーム:バーデンド・ミッション)
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
土、火、水、風の四属性をメインに、戦う生徒達と対峙する冒険者達。
アーサー達の視点から語られる、”あの日の真相”とは……
そして、アラリック達が彼等との約束で、どう行動していくのか——
《Death of the Academia》をお楽しみください
「そんな……ことが……」
アーサーは、自分が異変に気付いてあげられなかったことを、悔やむように表情が暗くなっていった。
「今まで……ずっと一緒にいたのに気付いてあげられなくてごめん……」
そして、遠くで何かに罅が入る音が聞こえる――
「き、気にしないで! 私が言わなかったのが悪いの! 本当に黙ってて……ごめんなさい」
「おそらく、アラリックは気付いていたのかも……」
今度は二回、大きく罅割れる音が聞こえ、暗い破片が一枚宙に舞い、砕け散った。
「どういうこと……?」
「ルルナの正体が神だと気付いて、自分達を、世界をこんな風にした張本人だと思えば、気持ちは分かるから……」
「そういうことだったのか……」
そして遂に、蠢く闇を抱えた結界が、音もなく崩れ落ちた――
「でも、私は世界を元通りにする為に、この姿を借りて旅をしているの!」
崩れた結界の裂け目から、禍々しい二つの手が、アーサー達に伸びていく。
「貴方の告白をお待ちしておりました。エラリア神……」
不気味にも、明るい二面性を持つ声。
――そう、ティオル達の狙いは、ルルナに正体を自白させることだったのだ。
「アーサー!」
闇の結界内で浮かぶ小屋をめがけて、ティオル達は迫る。
リゼルドの声に応じるように、アーサーはルルナを横抱きにして、ティオル達の攻撃を交わした。
その威力は凄まじく、闇が収縮する鈍い音を立てながら小屋は、原形を失った。
「悪いけど、この子は今“エラリア”じゃなくて“ルルナ”だから」
「ア、アーサー……」
崩れ落ちる結界の中でそっと足をつく。そして、睨むようにティオル達と視線を交えた。
「結界の再発動に、少し時間がかかる! それまで、足止めをお願い!」
「分かった! ルルナ、立てる?」
「う、うん……」
横抱きの状態から降ろして、リゼルドは結界を張り直す為、魔力を空間へ注いでいた。
そして、不思議そうにルルナはアーサーに、問いかける。
「アーサー……どうして、私なんかを……」
「言ったはずだよ。どんなことがあっても君の味方だって」
最後に叫んだ言葉、ちゃんと届いてたんだ……! 良かった。私は果報者ね
目頭を熱くさせながら、神エラリアとして、ルルナとして、ティオル達と対話を試みる。
「ごめんなさい……残念だけど貴方達と一緒には行けないわ」
「何故、貴方のような御方が、その不届き物を庇い立てなさるのですか?」
一拍子置いて、ゆっくりと話し始める。
「ティオル達と私とでは、全く利害が一致していない」
「私は、“闇の神ノクトヴァ―ルの決断が間違っていると証明する為、《神の初代代行者》ルルナ・キュリアの体を依り代に、戦っているの」
神……代行者。昔聞いた話では、闇の神が、初代代行者を決めてから数日後に、暴走を始め、六属性の代行者のうち、光と闇の代行者以外は、全員死んだと聞かされていた。
アーサーは、昔の記憶を辿りながら、今話されている内容に一つ一つ紐づけていく。
「グラン達は、代行者の二代目……? ティオル達が選別した、選ばれし人間……」
「……ようやく気付いたか。貴様の余計な行いで抗っている子供達も、“いつかは、全ての神の封印を解き、消滅させる“」
「でも、一つ安心してほしい。もしも、抗うことを諦めて代行者の言うことを聞いてさえくれれば、何もしないから」
クレヴァスが、何の安心にもならない戯言を並べて、アーサーは酷く苛立っていた。
「そう……か。でも君が神の封印を解いたところで、神も一緒に消滅させれば良いだけだ…」
アーサーは、顔色は分からない。それでも一つ一つの声で、怒りが増しているのは分かった。
そして、剣を構えると再び、右側の首から頬にかけて結晶の紋章を現すと、殺意に満ち溢れた瞳で、ティオル達を見据えた。
「ダークバリア……リスタート!」
リゼルドの結界の再発動が完了した合図とともに、ティオル達は目を瞑り、黒く濁った低い声で宣言した。
「そこまで、従う気がないのなら、“貴様らの墓をここで建てるとしよう!”」
ごめんねアラリック。暫く君の手助けは出来ないかもしれない……
それでも、君に今出来る最大限をぶつけてほしい……
最後にリゼルドは、心の中で、アラリックに暫しのお別れを告げるように、呟いた――
そして、時計の針は――リオライズが、アラリックにⅠ組の真意を聞き出す時間へ戻る――
アラリックの寮の自室で、リオライズは全ての真実を聞いた。
一番に記憶に目覚め、孤独と戦っていたこと――
第二授業で外部の人間と、約束を交わしたこと――
同じ境遇の人間を探す間も、奴らの犠牲になった人物がいたこと――
そして、記憶や地位を利用して、一時的に奴らを契約で脅していることも――
「俺達なんかより、ずっと頑張ってくれてたんすね……」
しかし、リオライズには到底理解しえない内容だけが、続いていた。
少しだけ、俯くとクスッと笑うようにアラリックは話す。
「しかし、貴様が話を聞いている時の顔は、中々見応えのあるもだったぞ」
リオライズは咄嗟に、両手で包み込むように自分の頬を隠した。
「マジでふざけないでくださいっす!」
頬を赤らめながら、照れくさそうにするリオライズ。
場は少しだけ柔らかくなり、そして真剣な空気へ戻る。
「それで、次の目的はどうするんすか……? その、アーサーさん達に、何か伝言でも貰ってるんすか」
「そう……一つ確認しなくてはならないことがある……」
アラリックは静かに立ち上がると、リオライズの視線を真っ直ぐ受け止めた。
「まずは、自分達が取り戻していない、幼少期の記憶を取り戻す。その為には学園の外へ出て、この世界の歴史を全て知る必要がある……」
「結界が解かれたとは言え、そんな簡単に出入りを許してくれるんすか……?」
対人戦が始まる少し前に結界を解いて、再発動はされていないようだった。
それでも、アラリックの言葉に疑問が残った。
「もし、本気で僕達をこのまま閉じ込めておくつもりなら、結界が張り直されていないのはおかしい……」
アラリックは冷たく、言葉を続ける。
「つまり、奴らも僕達に攻撃してくるように、僕らも攻撃の手段と権利があるということだ……」
殺意。いや、仲間との約束を果たす為の、絶対的決意の瞳だった。
アラリックの、ブラウンの瞳は、色が変わった時のように美しく輝いていた。
「僕には昔の記憶が一切ない。それでも家族のことは覚えているし、教えられたであろう知識も微かに残っている。――だから十八年間の記憶を辿って、奴らを上回る強さを手に入れるのが、第一段階だ」
そして、記憶についてリオライズも、思い当たる節はあった。
アラリックと同様、昔の記憶が一切存在しないことと、ゼオンのように無邪気で、頼りがいのある人物が、何故懐かしく感じるのか。
そして、自分も過去を見てみたいという気持ちが強くなり、床で正座をしていた体制を解き、アラリックの瞳を見据えた。
「俺も、自分の過去が気になるっす。それに、貴方の話す限り、対人戦二戦目は辞退するってことっすよね」
「勿論。その間に、奴らが何を仕掛けて来るか分かったものじゃない……」
「なら俺に任せてください。俺がマリーナ先生達に掛け合っている間に、記憶を辿れる地と、この世界の歴史について調べてきてください――」
忘れし幼少時の記憶と、世界がどうしてこうなってしまったのか――
アラリック達、入学前の記憶を取り戻した者達も、更なる核心へ迫る。
最後まで読んで頂きありがとうございました!




