表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/124

Cursewalker: Aria of Hope(カースウォーカー:アリア・オブ・ホープ)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


土、火、水、風の四属性をメインに、戦う生徒達と対峙する冒険者達。

アーサー達の視点から語られる、”あの日の真相”とは……

そして、記憶持ちの生徒が懸念している、事態の真実も明かされる――


《Death of the Academia》をお楽しみください

アーサーの心の変化によって、ティオル達の動きが一瞬止まった――

砂埃が起きるのと同時に、アーサーとルルナは全速力で、森の出口へ駆けていく。


土が舞い上がった、その瞬間——

その煙幕を切り裂くように、リゼルドの身体が空を駆け、ティオル達の前へと飛び出した。


名前を呼ばれた刹那、彼は鋭く牙を剥く。


「リゼルド!」


「任せておきなさいっ!」


ティオルの青黒いブレイドと激しく火花を散らしながら、剣がぶつかり合う。


その間に、クレヴァスはアーサー達を追って森の出口へと駆けていった。


「貴様の能力を、少し見誤っていたようだが……扉を作らなければ、あいつらは犬死にだぞ?」


「ご忠告どうも。でも別に、二人だけ逃がすつもりは、毛頭ないから」


剣を交えながらも余裕を崩さず、どこかに策を秘めたような声音で、リゼルドはティオルを挑発する。


「君達こそ、僕等に好き放題暴露されてたみたいだけど……大丈夫なの? あっ……でもそっか。――君はあんまり、呪いかけるの得意じゃないんだっけ?」


そう。こいつは、グラン達が学園を創設した際に行われた、呪術の譲渡――

死者の声を通じて、それを知っていた。

その時から、僕はずっと逆転の一手を探し続けていたのだ。


「見くびったな。お前にかけられた呪いなんて、実際何の影響も及ばない……それは、アーサーやルルナも同様に」


静かに、それでいて確かに届く、希望を帯びた声。

リゼルドは、宣戦布告のように続けた。


「“神に選ばれた人間の割には、大したことがなくて助かったよ。”

最初は痛かった呪いも、譲渡のお陰で緩和され、外部の人間である僕達が、犠牲となる生徒達と接触させてくれた」


一度、剣を弾いて間合いを取る。

そして最後の一言を、深く刺すように言い放つ。


「でも感謝してる。“だから――もう死んでくれ“」


瞬間、光が閃く。

爆発音と共に巻き上がる土埃の柱が、空高くまで吹き上がった。


「僕達は君等の、犬じゃない。仮に犬であっても反抗するのは当たり前でしょ?」


やがて土埃が晴れていき――

そこに、無傷のままブレイドを構えて立つティオルの姿があった。


まるで、それ自体が“厄災”を告げているかのように――



そしてティオルが、空へ向かってブライドを振ると、空全体が軋む音と、怒号のような音が地を揺らした。


「貴様が、我々に宣戦布告をするというのは、“こういうことだ」


空を見上げると、一つの小さな裂け目から、黒く禍々しい巨大な岩が、出てこようと降下していた。


「なるほど……これが君達の“本気”ってわけか」


異様なまでに落ち着いた声で、リゼルドは呟いた。だがその刹那、ティオルが追い打ちの呪術を発動する。



ブライドを地に突き刺すと、魔力が流れ込み、リゼルドの足元に闇を象徴とする紫色の魔法陣を、発動させた。


重力に押しつぶされるような鈍い音と、腕や足を縛る鎖の音を響かせながら、リゼルドは、膝をついた。



しかし、岩は無慈悲にリゼルドめがけて墜ちていった。


「これで分かっただろう……我々に挑み、勝利することが、如何に愚かな思想で、行動かが……」



全身を叩き潰すような、骨の軋む音が響いた。次の瞬間、リゼルドを押し潰して巨大な岩が大地を揺らす。




「我々も、貴様の言う通り未熟な点は確かにあった……」


岩の下から、流れ出れる出血……しかし、ティオルは構わず言葉を紡ぐ。


「貴様等がどれだけ戦力を上げようと、俺達には、“全てを凌駕する、術を持っていることを忘れるな”」



直後――背後から牙が、向けられる。

額から血が流れ、足も腕も有り得ない方向に曲がるのを、無理に直したような姿で、リゼルドはブレイドを振るった。


「瀕死な状態のお前が……俺に勝てると思うな!」


リゼルドの決死の反撃は乏しく、読んでいたティオルは胸ぐらを掴んで、森の出口へ投げ飛ばした。


そして、アーサー達がクレヴァスと対峙していた地点まで吹き飛ばされた。

その威力は凄まじく、地面に激突した瞬間に、空前絶後の激しい痛みが襲った。


「リゼルド……? っまさか!」


アーサーは、驚異的な存在感を放つ、ティオルの登場で酷く動揺していた。



僕は死なない……あの時、二人を守ると……決めたから。そして、アラリックや他の子達の為にも、どんな絶望も痛みも…………耐えるのは“光属性の特権だ”――


暗闇の中で意識が朦朧とする中、リゼルドは事切れそうになりながら決意した。そして、誰の耳にも届かない、消えてしまいそうな声で詠唱を唱える。


「光は呪い……光属性に生まれし者は、皆不幸者という運命からは……逃れられない。……死んでしまったほうが、ずっと楽だった。それでも選べない、我のような愚か者に……どうか、慈悲を……」


リゼルドの胸元から、じわりと光が漏れ始める。それを目にした瞬間、ティオル達の身体が本能的に動いた。剣が、一斉に振り上げられる――


「――させない!」


そのティオルに向けて、ルルナが巨大な火の玉を放ち、リゼルドを守る。アーサーはクレヴァスの剣を押さえた。


そして、最後の詠唱が唱え終わる――


「アル・パーフェクト・ヒール……」


小さかった光が、突如大きく照らして、リゼルドを包み込むように、体の傷と骨が治っていく。


骨が体内で元の位置に戻っていく様子は、まるで聖なる光が舞うかのように、外からでもはっきりと視えた。


その姿に圧倒された四人の前で、リゼルドは完全なる復活を遂げる。



ひょいっと、横になっている体制からジャンプするように、起き上がった。

あまりにも、元通りになったリゼルドに、アーサー達は疑惑の目を向ける。


「リ、リゼルド?」


暗闇のような瞳は、どこか遠くを見つめていたが、アーサー達を見た途端、光が戻り、元気に復活したことを告げる。


「ごめんね二人共。心配かけちゃって……でも、もう大丈夫だから安心しなさい」


いつもの頼もしい時のリゼルドが戻って来たと、安堵するアーサーとルルナ。

続けて、リゼルドは衝撃的な言動に走る。


「まぁ……気になることはちゃんと話すよ。今は取り敢えず――」


ルルナを担ぎ、アーサーの手首を、左手の小さな魔力を使って包帯で巻き上げて掴むと、ティオル達に背を向けて、足が少し浮くと流れ星のように、飛んで行った。


「ちょ、ちょっと!」


あまりにも破滅的行動に、ルルナ達が聞き出そうとしても、風を切る音が声を遮る。



アーサーは、後ろを振り返ると、小さくも確実にティオル達が追ってきているのが分かった。


「リゼルド……! 一度スピードを落として話を聞かせてくれ!」


必死な叫びが届いたのか、ゆっくりと足が地に着くと、そのままの体制でスピードを落として対話する。


「あの時、酷い怪我を負っていたのに、一体何をしたの?」


アーサーの質問に、きょとんとした表情を浮かべた後、誇らしげにリゼルドは語る。


「回復は光属性の特権。そして、ティオルとの決闘に関しては、身代わりの術。――簡単に言えば、自分の分身を使って、本体に受けるダメージを緩和する力を使ったんだよ」


「でも、重症だったでしょう? あれで本当に緩和されていたの?」


「勿論。もしも、身代わりの術を使わなかったら、確実に岩の下敷きになって死んでいたからね」


「呪い、……呪いはどうなったの!?」


身代わりの術に関しては、リゼルドの能力を持ってさえすれば、容易なことであるのは、想像がついた。

そして、アーサーはもう一つ。呪いについて、思い出したかのように問いかける。

風を切る音だけが、世界を包んだ――


「呪いに関しても、《パーフェクト・ヒール》で完全に解けたよ……」


その瞬間――アーサーの頬を涙が伝った。今まで、戦闘中は幼児退行を見せていなかったこともあり、希望を胸に過ごしてきた。

そして今、その夢が現実となったのだ――


「だから大丈夫だよ。君達の知ってる、昔のリゼルド・グレイアスが帰って来たから、新しい使命を抱えて、二人を全力で守るから……」


こうして、元に戻ったリゼルド。試練は続くも、再び希望を見出したアーサーとルルナ。

暫くして、日は完全に暮れ、夜空に輝く草原が視界全てを独り占めした。



「さぁ、ここから安全な所へ!」


リゼルドが、異空間への扉を開き、一斉に足を踏み入れた。


ティオル、君の言う通り、今の状態では勝てないと思った。

だから今日は、君の勝ちだけど、次会うときは僕らが勝たせてもらうから……


こうして、異空間へ繋がる扉は閉ざされた。初めてティオル達に反抗し、光を見つけた冒険者一行。

しかし、更なる疑惑と試練が三人を試していく――

最後までご覧頂きありがとうございました!

まだまだ深まる謎を追求していきますので、引き続き応援よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ