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Cursewalker: My First Blade(カースウォーカー:マイ・ファースト・ブレイド)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


土、火、水、風の四属性をメインに、戦う生徒達と対峙する冒険者達。

アーサー達の視点から語られる、”あの日の真相”とは……

そして、記憶持ちの生徒が懸念している、事態の真実も明かされる――


《Death of the Academia》をお楽しみください

扉を通り、学園へ出発した森の中に転移した。そして、地に足がついた瞬間に二つの刃がアーサー達を襲う。


一つは、刃は太く、薄い刀身の青黒く禍々しい光を放つ両手剣。

そしてもう一つは――剣ではない。“手”だった。

異様に長く伸びた人間の腕が、まるで刃のように、ルルナの変身の鍵となる結晶を、正確に狙って迫っていた。


今まで、君たちの指示にずっと従ってきた。でもそれは……何もしていないのと同義だった。だから君たちに初めて剣を向けるよ……!


二つの刃を斬るように、アーサーは剣を抜いて、地面の土埃を呼び起こす如く先端を一瞬引きずると、そのまま振り上げるようにティオル達に放った。


「――っ」


細かい砂粒とともに、舞い上がる土埃。ティオル達は、茶色く視界が埋められると、一瞬でアーサー達は森を抜けるように駆け上がった。


「リゼルド!」


「任せておきなさいっ!」


ティオルのブレイド、そしてリゼルドの術による武器変換で、形状が殆ど同じなブレイドが火花が散った。


その刹那、雷鳴のような音が森を切り裂き、まるで空間そのものが拒絶の悲鳴を上げたかのようだった。


「ちっ――クレヴァス、奴らを追え!リゼルドの相手は俺が引き受ける」


「仰せのままに」


刀を抜いて、猛スピードで森を駆けて行った。その姿を見たリゼルドは叫ぶ。


「アーサー!ルルナ!そっちに、クレヴァスが向かってる!」




まるで最初からそこにいたかのように、クレヴァスは森の暗がりから一歩踏み出し、門番のように彼らの行く手を塞いだ。

息が上がり、二人は一度足を止めた。人間の姿のままのルルナが怯えるように、アーサーの袖を強く握った。


「アーサー……」


不安で押しつぶされそうな瞳で、ルルナは見上げた。アーサーは少しでも、安心させるように耳元で呟く。


「今度は、俺が君を守る。だから君は――どんなことがあっても、その水晶だけは守り抜いて」


その言葉に、ルルナは目を見開いて驚いた。そして、アーサーを見つめ返すと、柔らかく微笑む愛しい夫の姿に、大きく一回頷いた。



そして、首飾りの真珠を両手で隠すように守り、アーサーは微笑みから一変、鋭い目つきでクレヴァスを見据えた。


風の靡く音が聞こえる……それと連動するように、遠くでリゼルドとティオルが、戦っている衝撃音も耳に残った。

そして、アーサーの背後で土埃の柱を立ったのを合図に、剣と刀が重なる。


鉄と鉄のぶつかる鋭い音が鼓膜を貫く。そのまま、剣を持った腕ごと払うように、クレヴァスは唱える。


「雷鳴の型……風神羅刹斬(ふうじんらせつざん)……」


「その古風な感じ、ほんと好きだよねぇ……」


銀色の刃に、雷光を帯びたような黄色の閃きが走る。

払われたことにより、無防備な状態になったアーサーは、大きな風が吹くかの如く斬り裂かれ、全身が痺れる感覚が襲った。


「別に……昔からの趣味だし。お前の方こそ、大口叩いて約束を破った割には、余裕そうだね」


皮肉を皮肉で返されて、アーサーは何も言うことは出来なかった。

それでも、痺れる腕を何とか動かし、最後に振り下ろされるクレヴァスの剣を防ごうとした。


刹那――横から、大規模な火の魔法が放たれた。簡単に交わしたその魔法は、森の奥で大きな爆発を迎えた。


「言ったはずよ、クレヴァス。アーサーに手を出すのは許さないって」


「そのまま大人しくしておけば良かったのに……」


鋭く睨みつける冷たい瞳。ルルナは少し萎縮するも、水晶を強く握って真っ直ぐにクレヴァスを見据える。


「貴方こそ、見くびってたら死ぬわよ」



振り返る隙は与えない……! ありがとう、ルルナ。君は僕の最高のパートナー(最愛の妻)だよ!


澄んだ水が、アーサーの剣に纏い、氷結へと姿を変えていく。

氷が作られていく、冷気の音。次第に割れるような音を立てながら、変貌した。


そして、一閃――クレヴァスの右目を狙って一剣と一緒に回転するように、アーサーは一撃を打ち込んだ。


「なんで、水属性に……あのお方の呪いは、どうした……」


右側の首から頬にかけて、氷の結晶のような紋章が現れていた。

ルルナの顔を見たアーサーは、頬を赤く染めて、今にでも抱きしめたい気持ちに駆られた。

それでも、気持ちを抑えてクレヴァスに次々、攻撃を繰り広げる。


甲高い音を立て、氷の粒を散らしながら、アーサーは右に左に身を回しながら、クレヴァスを追い込んでいく。


右目が完全に凍結し、視界が制限されると、クレヴァスは、アーサーの剣撃に追いつくのが限界だった。


――そう。私があの時放った魔法は、脅かす為でも、倒す為でもない。

アーサーは水属性で、私は火属性……掠りでもして火傷を負い、それが機転となって呪いの解除が出来るかもしれない。いわゆる私達は“賭け”に勝ったのだ。


「あのお方の呪いを破るなど……何様のつもりだ……!」


「さあ……知らないけど。君のご主人様は、呪いをかけるのが得意じゃなかったんじゃない?」


目を見開いて、刀を自分の右目突き刺した。

貫かれた瞳から、ボタボタと血が流れる。それでも、クレヴァスは、悲鳴も上げることなく、瞑れた右目から剣を抜いた。


そして、何事もなかったように右目が再び開かれると、真っ白な眼球に新しい瞳が蠢いていた。

その異様すぎる光景に、二人の背筋は一瞬寒さを覚えた。


「じゃあ、これで仕切り直しってことで……」


血で染まった刀を払うと、返り血がアーサー達の頬を濡らした。

すぐに、水の魔力を作り出し、顔に当てて血を流す。ルルナにも同様、かかった血を消して、アーサーは柄を強く握り、クレヴァスを睨んだ。


「敵の血を浴びたまま戦ったら、どうなるか分からなかったから……ところで君は、どうして俺達に執着して来るの?」


「意外と、人の内面って分からないものだよ……? どれだけ愛し合っていても、隠し事の一つや二つは当たり前にしてると思うけど……」


クレヴァスは、ルルナの目を見て不気味に言い放った。それでもアーサーは、ルルナはそんな隠し事なんてしないと、信じて剣を向ける。


「馬鹿なやつ……近いうちに痛い目見ると思うよ」


その瞬間、リゼルド達が戦っている方角から、花火が打ちあがるような、風の音が近づいてくるのを感じた。



そして、自分達の横を何かが通り過ぎ、後ろで大きな爆発の音が聞こえた。

振り返ると、土が弾け、地面は割れて吹き飛ばされた者の正体は――リゼルドだった。


「リゼルド……? っまさか!」


リゼルドが飛ばされた方向から、夕焼けの赤い光に照らされながら――まるで、真っ赤な血の海を象徴するように、その男は、姿を現した。


「ティオル……!」


繰り返される、希望と絶望の連鎖。アーサー達は、一体どんな結末を辿るのか。

そして、思い出されるリゼルドとアラリックとの第二授業の真相が明らかに――

最後までご覧いただきありがとうございます。

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