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Cursewalker: Parting in Trust(カースウォーカー:パーティング・イン・トラスト)

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


土、火、水、風の四属性をメインに、戦う生徒達と対峙する冒険者達。

アーサー達の視点から語られる、”あの日の真相”とは……

そして、記憶持ちの生徒が懸念している、事態の真実も明かされる――


《Death of the Academia》をお楽しみください

「アーサー! 君のお陰で火属性になったよ。……本当に、本当にありがとう」


涙ぐみながら、深々と頭を下げてストリクスは、感謝の言葉を綴った。


「じゃあ。約束通り、俺の話をしよう」


誰に話しても、相手にされず……ひたすら、呪いで苦しめられてきた日々。


この子に話して、また呪いが発動したらどうしよう……そんな、気持ちで緊張が、胸を締め付ける。

でも、例えどんな苦難が待ち受けていようと、戦うことを決めたなら前に進むだけだ――


そして、全てを曝け出すように吐き出した。

最初は一人旅で、ルルナと森で出会ったこと。

沢山旅を続けていた時、ダンジョンで大きな敵に出くわして、絶体絶命を迎えた時――リゼルドが助けてくれたこと。


そして、誰もが聞く耳を持たず呪いで苦しんだ、ティオル達の真実も全部、ストリクスにぶちまけた。


「至る世界の人間を、属性持ちにした後で選別する、謎の宗教団体に襲われて、俺達は呪いをかけられた。――もしもあの時、俺だけが犠牲になっていたら何も失わずに済んだのかな……?」


胸が痛む、今までとは軽度の呪いだったが、中々慣れるものではなかった。

しかし、これまで白い目を向けられ続けた話の内容に、ストリクスは真剣に信じるように聞き入れてくれた。


「選別で生き延びたのは、“苦しみながら死ね”という意図もあったかもしれない。でも……これでも、まだ楽な方なんだ。昔は、真実を口にするたびに、呪いに襲われていたから」


「今は……大丈夫なんですか?」


「うん。君に話した時も、少し胸が痛んだだけで大した事は無いよ」


「早く治ると良いですね……もし、困った時は僕達も協力するので言ってくださいね」


「頼もしいね……これで俺の悩みは終わり。君に話せて良かった」


初めて真実を最後まで話せた喜びと、ストリクスの言葉で心が救われた気がした。

こんな状況で、嫌な現実に巻き戻してしまっても良いのかと。罪悪感が生まれ始める。


それでも心を鬼にして、ストリクスの目を真っ直ぐ見つめて問いかける――


「ところで……ずっと気になっていたんだけど、君は、君達はどうして——この学園の“デスゲーム”を、そんなにも自然に受け入れているの? 

最初に聞かされた時、何かおかしいとか、疑問には思わなかったの?」


その言葉に、青ざめるストリクス。

急な様子の変化には動揺も見えていた。

そして、彼から衝撃的な言葉を聞かされることになる。


「……だ……って……普通だと思って……いたから……」


「デスゲームが普通? それは入学前に説明を受けていたってこと? 契約書にサインしたとか、同意の上で、十二人の生徒達は蹴落としあってるの?」


言われて、初めて気付いたような顔を浮かべ、次第にストリクスから自分と似た呪いの気配が、溢れ出した。


「確かに……言われてみたらそうだ……質問しようとした時には、流されてた。……なんで今まで……気づかなかった」


ストリクスは、徐々に自分達の置かれている状況が不自然なことを自覚し始め、アーサーは急いで思考を止めるように必死に諭した。


「落ち着いて……!深呼吸して一旦考えるのを辞めるんだ」


しかし、呪いは構わずストリクスを蝕む。

激しい吐血と、乱れた呼吸がアーサーを絶望に追いやる。


とにかく、自分の持っている属性の術を体内に送り込んで、呪いを抑制することを伝えないと……!


「――っ」


彼に伝授しようとした瞬間、一度目よりも強く自分の胸が痛んだ。

そして、代わりに術をかけたくても、属性汚染と火属性ですらない自分は、何も出来ないと、深く絶望し心の中で助けを呼ぶ。


誰か……リゼルド――ルルナ


自分の無力さを呪いながら、声にすらならない叫びで助けを待つ。

その時、答えてくれるかのようにヴェイルとルルナが、駆けつけた。


「……な、何やってんだ。アーサー!」


声の方に顔を向けると、安心と申し訳なさで自分の気持ちが、ぐちゃぐちゃになった。

そして、状況を即座に理解したルルナは、的確な指示でストリクスの治療を行った。


「同じ火属性だし、一旦これで凌げるはず」


ストリクスの吐血は止まり、呼吸もゆっくりと元に戻っていった。

自分の弱さ、無能さの自責に、釘を刺すように咎め続け、最終的には学園へ一度帰ると、判断が下った――



学園へ到着して、真っ先にストリクスは寮の自室で安静にしてる他なかった。

ルルナが、機転を利かせてアラリックとの対話の時間を作り出した。


ストリクスの治療を行っている時に、「アラリックは、全部知っているみたいだった」と口にして、気遣ってくれたのだろう。

廊下で一緒に待機していたタイミングを見計らって、思い切って声を掛けた。


「アラリック、少し良いかな?」


記憶の戻っていない生徒達を、教室へ戻して、アラリックの寮の部屋で話を切り出す。


「……単刀直入に聞きたい。君は、どこまで真実を知ってるの?」


聞くのは怖かった。思い違いの可能性だって捨てきれなかったから……

それでも、アラリックは気付いていると信じて問いかける。


「……この学園の異常と、真の黒幕に関しては……ある程度、目星がついています」


再び、あっさりと淡々に答えるアラリック。彼は続けて静かに話を続ける。


「それよりも、術の緩さには安心しました。呪いをかけられているとは言え、自分の過去と、学園の謎について踏み込めるのですから」


その言葉に、アーサーは少しだけ俯いた。ティオル達の存在も気付いている中で、もう一つ残酷な未来が待ち受けていることを……


「……いや。ティオル達は平然を装ってるだけで、学園から帰ったら——俺達は死ぬと思う」


学園に赴く前に、散々警告を受けながら、約束を破り真実へ踏み込んだ罪があった。しかし、そんな言葉を聞きながらアラリックは、きょとんとした表情を一瞬見せると、ストリクスと同じように希望に溢れる言葉を紡いだ。


「貴方達に死なれるのは困る……出来る限り生きてください。そうしたら……僕が責任を持って全てを解放します」


自分を駄目な人間だと、蔑んできたアーサーにとって、アラリックは希望の光となる人間だった。

自分も頑張る、だからアラリックにも、同じようにエールの言葉を感謝として送った。


「頼もしいね……倒せることも、解放出来るのも分からないのに、前を向いて歩く姿は美しい」


そして、少しでも希望が生まれるようにゆっくりと、続ける。


「——約束して、アラリック。何か困って、誰にも話せないほど苦しんだら、君を一番に考えてくれてる人間に、助けを求めて挑戦し続けることを……忘れないでね――」



こうして、数時間後にはグラン達も到着し、冒険者一行はお役御免の時が近づいていた。


リゼルドが扉を作り、外部の人間の出口専用の出現させると、最後にアーサーは、アラリックを見据えてゆっくりと頷いた。

「きっと、生きてみせるから」と言うように……


そして、扉を潜った瞬間、ティオル達の裁きの刃が伸びるのだった――

次回は、初めて明かされるアーサー達のその後の真相となります。是非お楽しみに!

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