Death Game: Truth After the Duel(デスゲーム:トゥルース・アフター・ザ・デュエル)
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、学園の謎について迫っていく——
生き残るのは真の才能がある人間のみ
誰が生きて誰が死ぬのか完全オリジナル作品
《Death of the Academia》をお楽しみください
嘘のないグランの真っ直ぐな瞳を、ヴェイルたちは無言で見つめた。
静寂が広がり、重く張りつめた空気がその場を支配する。
その中で、アラリックが最初に口を開いた。
「貴方の言い分は分かりました。……だからと言って、人を殺して良い理由には全くなりませんが、約束は守ってくれた。何より、嘘もついてるとも思えない……」
グランが話している間、ずっとフラーナに向けていた氷の刃を解いた。
「でもよ……アラリック。ここで、契約内容②を選んだってことは、俺達は二日後、II組の連中と対人戦して、グランの選別も止めなきゃってことなのか……?」
「選別はさせない……少なくともII組との対人戦が全て終わるまでは、大人しくしてもらう」
一拍の沈黙の後、彼は仲間たちに告げた。
「——僕達は、この対人戦を通して、II組の中から必ず同じ境遇の生徒を見つけ出す。それが今回の”目的だ”」
三人は戦うことよりも、まずは対話で探りを入れる。
アーサーの救いを、無駄にしない為にも道を切り拓いていく——
「——考え出したら止まらないっすけど、”見返す為に対人で黙らせる”って何か違う気がするんすよね〜 裏がありそうな予感がするっす」
寮の自室で、喋り方に特徴のある生徒が一人……澄んだ緑色の小さく結んだ髪を解きながら、呟いていた。
朝日が昇る前の時間に、契約書を出してから数時間後。
I組の寮に、アナウンスが響き、教室へと招集が掛かる——
「二日後に行われる、II組との対人戦のルールを説明する」
記憶に気づいた者は……目の奥に、かすかな疲労の色が滲んでいた。
ストリクスは、呪いから体が完全に良くなった様子で、既に出席していた。
「今回の対人は二回戦で行われる。まず、一戦目は——対象を撃破すれば、何でもありの”イレギュラーデュエルマッチ”だ」
……二回戦、イレギュラーデュエルマッチか……元々この形で行くつもりだったのか、ご機嫌を取る為に改変したのかは分からないが、これならチャンスがありそうだ。
アラリックが、最初の説明を聞いてすぐに、分析を始める。
「基本は1対1で戦い、相手の首飾りの真珠を壊せば、対象を撃破したことになる。
——そして、相手が居なくなった者は、他のデュエルマッチに乱入が出来る。対戦相手に関しては、互いに同意した場合のみ成立し、最終的に、全ての真珠を破壊したクラスの、勝利となる」
「教師達の乱入は一切なく、完全な生徒のみの、戦いとなります。ですから……作戦も生徒達、誰が誰と戦うのも、全て皆さんの考えにかかっています」
淡々と、どこか気まずい雰囲気で話すグランと、フラーナ。
“生徒達の考えにかかっている”という言葉に、アラリックの眉が動いた。
時間は、アラリック&リゼルドの第二授業に変わる——
アラリックが、斬撃を受けてから目覚めるまで、時間はかからなかった。
瞼をゆっくりと開けて、アラリックが体を起こす。
「リゼルド……?」
「あぁ、起きたんだね。おはよう」
起きて早々、何か悩みを抱えてる瞳で、アラリックがリゼルドに訴える。
「何か悩みがあるなら、全部吐き出した方が良いよ。
悩みがあると、人はストレスやが溜まって、どんなことも最大限の力が出せなくなる……なんか悩みがあるなら聞いてあげるよ〜」
「”学園の闇と対人戦に向けた指揮の取り方について”、教えて下さい——」
時間は再び、対人戦のルール説明の時間へ戻る——
リゼルドからは、”指揮をしたいなら相応の実力と信頼を”
“学園の闇”についても、これまで誰にも言えなかった事を全て吐き出させてくれた。
「指揮を取る人なら、ランキング順通り、アラリックで良いんじゃない? 他にやりたい人とか、本人がやりたくないって言うなら別だけど……」
ストリクスが、保険をかけるように、話を持っていく。
“まるで呪いを利用するように”——
「指揮官の決定は後で、話し合って決めると良い。そして、二回戦は”トレジャーワン•アタック”を行う——」
「一回戦が終わった後で、改めて説明いたしますが……簡単に言えば、1つの宝を死守しながら相手の宝を取りに行く。
といったルールです」
「朝食を終えた後、作戦会議室へ案内する。——これにて、対人戦の説明は終わりだ。何か質問は……?」
「念の為の確認ですが、負けた時のペナルティや、脱落などはありませんね?」
食い気味にアラリックが声を大きくしてグランに問う。
少し考える素振りを見せた後、ゆっくりと答えた。
「問題無い。誰が最初にデュエルで負けようが、クラスが負けようが……誰も落ちることは無い」
自分が一番嫌としている、”子供に脅されたのが悔しかった”のか、単純にヴェイル達の”騙されている”という言葉に揺らいでいるのか、グランの瞳は物悲しく、語っていた——
——朝食を終えて、会議室へと案内されると、予想外なことに、グランは寮の奥の壁を指差していた。
「んなところに、あるわけねぇだろ……!」
信じ難い場所に、ヴェイルは毒気を含んだ声で嫌味を言いつつも、渋々壁に手をかける。
——すると
「——っうわ!」
壁が音もなく一回転し、ヴェイルは真っ暗な空間へと吸い込まれた。
「で、電気を……!」
炎で辺りを照らし、慌てて電気のスイッチを探す。
ぱちりと明かりが灯った瞬間、後から続いた五人の瞳も驚愕に見開かれた——
天井から下がる大きなシャンデリアが、柔らかな光を放つ。
壁一面にぎっしりと並んだ書物の数々。
資料用の魔法の紙が山積みされ、机の上には実際の戦場を模すように配置されたチェスの駒が整然と置かれていた。
「驚いたか……? ここなら声が外に響くも何も、II組の寮は真反対だから、気にせず話すと良い」
「凄い……!凄いです!グラン先生」
レンリーが再び無邪気に、喜びと尊敬に満ちた声で興奮する。
「内通者が居た場合、防音設備は欲しかったところですが、及第点といったところでしょうかね……」
「じゃあ、早速始めましょう!」
——それぞれ、円形の会議卓に腰を下ろして作戦を話し始める。
「……そういえば、ストリクスは”リーダーに良いのはアラリックだ”って言ってたけど、僕も異論は無いよ」
「ぼ、僕もアラリックさんが良いと思います」
「……分かった。対人戦の指揮は僕が取る」
「ヴェイルもそれで良いよね?」
ストリクスが呼びかけるように、ヴェイルに問いかける。
しかし、何かを探している様子で気づかなかった彼に、アラリックが呆れた声で話しかける
「見惚れて無いで、早く——」
アラリックの言葉を遮るように、ヴェイルが口を開いた。
「なぁ!やっぱり作戦会議ってことは、敵の情報が必要だろ? この紙使えねぇかなって……」
四人が顔を見合わせて、きょとんとした表情を浮かべる。
次第に少し笑みが溢れた。
「貸してみて。昔よく故郷で使われていたから知ってるんだ」
ゼフィリーが、ヴェイルの持っていた魔法の紙を受け取り、円卓に置いて、魔力を注ぐ。
「”この学園のII組の正体を全て記したまえ”」
真っ白の紙が、青い光に包まれて、段々と文字が浮かび上がってくる。
「これ、全部本当のこと書いてあんのか?」
「うん、ヴェイルが教えてくれたし、先に見ていいよ」
大興奮のヴェイル。後ろから覗き込むように、ストリクスとレンリーが見ていた。
「これすげぇ……!」
ヴェイルが、元気に見せているだけか、本当にまた洗脳されてしまったのかは、分からない反応を見せていた。
「ゼフィリー、今の術は誰でも出来るのか?」
アラリックの左手を見たゼフィリーは、少し考えた後に答え始める。
「出来ると思う。仮に出来なくても、僕が居るうちは大丈夫。書くことは出来ないけど、読むことは出来るから」
「——そうか、頼りにしている」
呪いがまだ掛かっているとは言え、この能力は使える……
おそらく書くことが出来ないのは、魔法で文字を教えられる日常だったからだろう……
——その時、何者かが近づく気配と、ただならぬ雰囲気が来るのを感じた。
ゼフィリーとレンリーは気づかなかったが、記憶の戻った三人は緊張する空気に、喉を締めた。
「ど、どうしたんですか? ヴェイルさん。……やっぱり何か変?」
「——っ……悪りぃ、悪りぃ。俺、寮に忘れ物してきたの思い出した。すぐ取ってくるから待っててくれ」
急ぐように、会議室を後にしたヴェイル。扉を一回転して、寮に戻った途端、冷たい表情に変わりゆっくりと視線を上げる。
「——初めまして、お初にお目に掛かります。——私、II組第一授業1位ランクイン……”リオライズ•ニイタ”と申します」
ヴェイルは動揺を見せながらも、冷静に言葉を返す。
「……何しに来た。結界は? ……今まで一度も顔を見せなかったのに、どうして……」
「対人戦が始まる日が近くなってきたから、結界を解いたそうっすね。折角なので、I組のご尊顔でもと思い……」
「……そうか、随分と余裕そうだな」
記憶の戻ったヴェイルに余裕なんて無く、皮肉じみた言い方でリオライズに言い放つ。
何かに気付いたように、リオライズが驚きの顔で問い返す。
「もしかして、貴方は……?」
「……なんだ? 言いたいことがあるなら、はっきり言え!」
「いいえ……貴方と対戦できることを、楽しみにしてるっす……」
突如現れた、II組生徒リオライズ•ニイタ。
彼の登場によりヴェイルは、”対人戦がいよいよ始まる”と深く認識させられた。
そして、リオライズが記憶の戻った人間かもと、疑いながら会議室へ戻るのだった——
これにて一旦、”学園の謎、空白の入学前の記憶”編は終了です。
次回もお楽しみに!




