Death Game: Mysteria Academy(デスゲーム:ミステリア・アカデミー)
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、学園の謎について迫っていく——
生き残るのは真の才能がある人間のみ
誰が生きて誰が死ぬのか完全オリジナル作品
《Death of the Academia》をお楽しみください
喜ぶストリクスを見て、一呼吸置いたアーサーは剣を交えた時に約束した、悩みについて話すのだった。
「じゃあ。約束通り、俺の話をしよう」
口角は上がっていたが、目はどこか遠くを見ていた。
「すみません……つい嬉しくて。お話聞かせてください」
ふと、どこからか水の滴る音が聞こえた。
その一滴がやけに大きく響くほど、場の空気は張り詰めていた。
まるで、過去の記憶の扉を叩く合図のように——
「もう聞いていると思うけど、俺達は冒険者で旅をしていた。最初は一人旅だったんだけど、最初に森で一人の女の子を見つけた。
深い傷を負いながらやっと逃げてきた感じの子。そしてその子が今、妻として俺を支えてくれるルルナだ」
「じゃあ、あのウサギの姿は、自分の術で変身しているんですか? アラリックの反応的に、良くない感じでしたけど……」
ストリクスの問いにアーサーは、少し表情が曇り、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「——それから一年……二人で旅をして、いろんな街を見て、山も谷も超えて……」
「でも、ダンジョンの帰りに、あれに出くわしたんだ。でかい、信じられないくらい強いモンスターに」
「そこで助けてくれたのが——リゼルドだった。あいつがいなきゃ、俺たち、あの場で終わってたよ」
「なら、アラリックの勘違い——」
ストリクスの言葉に被せるようにアーサーは強く言葉を投げる。
「そう……三人旅で凄く楽しかった。男の子が加入ってだけで最初は、慣れなかったけど時間が経てば、一緒に冒険できることに喜びを感じてた。——でも事件は起きた」
【二年前】
街外れの一つの宿に泊まった時のこと——
それぞれの部屋で眠りについた頃、宿の女将の悲鳴で目を覚ます。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
「——アーサー!」
ルルナとリゼルドが、焦る顔でアーサーの部屋へ飛び込んだ。アーサーもまた、何が起きているか分からなかったが、異常事態であることは、察しがついていた。
「すぐに下へ行こう!」
しかし階段を降りて見たのは、二人の青年と、その背後に控える多数の従者。その傍で血を流して死んでいる女将の姿があった——
冷徹な黒い声が響く。
「武器を置け……。抵抗すればこの女と同じ末路を辿ってもらう」
その中でもリゼルドが一番優秀だった。
武器を置くふりをして、刀を薙ぎ払い、奴等の隙をついて俺達を外へ連れ出してくれた。
「一体何者なの!?あいつら」
「聞いた話だと、宗教団体らしい。至る世界の人間を、属性持ちにした後で選別する団体だ」
リゼルドは、死者と話せる力を使って奴等の素性を、明確に話してくれた。
「この先を曲がれば、人がいるはず!」
希望を見つけた。女将も後で見に行けば良いと、そう考えていた。
その刹那——金髪の三つ編みを肩に流した青年が、俺達の目の前にいて、気づいた時には宗教団体の拠点へいた。
声が出ない……体が上手く動かない……死んだのかな……
……頭が、回らない……何があったかも……分からない……
「——辞めなさい!これ以上、アーサーを気付ける真似は許しません」
……聞こえてきた声は、自分の1番愛しい人間の声。ゆっくりと、揺らぐ視界を上にやると、ルルナとリゼルドが俺を守るようにして立ちはだかっていた。
「———辞め……ろ……」
声を振り絞って、ルルナ達を守る為に立ちあがろうとする。
しかし既に、俺には属性汚染の呪いがかかっていて、呪いに耐性も無かったのも相まって、動く事が出来なかった。
「アーサー…!」
振り返るルルナの顔が切ない……嬉しいような、悲しい顔を浮かべて俺を見る。でも奴等は待ってはくれない。
——そして、すべてが終わった後、俺たちはそれぞれ違う“代償”を背負わされていた。
ルルナは人の姿を奪われ、簡単には戻れない呪いを。
リゼルドは心の時間を奪われ、過去に囚われる呪いを。
……俺には、全てを守れなかった罪だけだった——
語り終えたアーサーは、ほんのわずかに目を伏せ、静かに息を吐いた。
空気が再び、現在の世界へと引き戻されるように震えた。
ストリクスはゆっくりと顔を上げ、口を開く。
「その時の宗教団体の敵って——」
「——察しが良いね。君の思っている通り、その団体のリーダーは——ティオルとクレヴァス。彼等の見張りの元、俺達は旅をしている」
「……嘘……」
ストリクスは、今まで普通に接していた仲間内で、こんな壮絶な過去があったことを知り驚愕した。
「襲われた理由も、”選別”だろう。二人の言うことを聞いていれば、いつか呪いを解いてもらえると……信じてる」
今まで息を忘れたかのように、アーサーは大きく深呼吸して、言葉を続ける。
「選別で生き延びたのは、“苦しみながら死ね”という意図もあったかもしれない。
でも……これでも、まだ楽な方なんだ。昔は、真実を口にするたびに、呪いに襲われていたから」
「今は……大丈夫なんですか?」
「うん。君に話した時も、少し胸が痛んだだけで大した事は無いよ」
「早く治ると良いですね……もし、困った時は僕達も協力するので言ってくださいね」
「頼もしいね……これで俺の悩みは終わり。君に話せて良かった」
絶望の中でも希望を失わず、信じるものを守り続けるアーサーの姿に、ストリクスはふっと微笑んだ。
緊張で凍り付いていた空間が、ようやく少しだけ和らいだように感じられた——
だがその静けさも、束の間のものだった。
アーサーがふと、何かを思い出したようにストリクスへ視線を向ける。
「ところで……ずっと気になっていたんだけど、君は、君達はどうして——この学園の“デスゲーム”を、そんなにも自然に受け入れているの?
最初に聞かされた時、何かおかしいとか、疑問には思わなかったの?」
空気が再び凍りついた。その言葉を聞いたストリクスは酷く動揺し始めた。
「……だ……って……普通だと思って……いたから……」
「デスゲームが普通? それは入学前に説明を受けていたってこと? 契約書にサインしたとか、同意の上で、十二人の生徒達は蹴落としあってるの?」
言われて初めて気づいたように、ストリクスの顔色はみるみる、青ざめていく。
その瞬間——唐突な吐血と、体の奥から熱を帯びる感覚が襲った。
「確かに……言われてみたらそうだ……質問しようとした時には、流されてた。……なんで今まで……気づかなかった」
「落ち着いて……!深呼吸して一旦考えるのを辞めるんだ」
アーサーが諭すように、ストリクスに呼びかける。
自分も呪いが発動した時と、同じ気配を感じ取っていた。
とにかく、自分の持っている属性の術を体内に送り込んで、呪いを抑制することを伝えないと…!
「——っ」
口を開いて、声を出そうとした瞬間に胸の痛みが一度目よりも、強く感じた。
代わりに術を掛けたくても、属性汚染のアーサーには何も出来ず、ひたすら誰かの助けを待つしかなかった。
その時アーサーの叫びに答えるように声が響く——
「……な、何やってんだ。アーサー!」
声の方を振り向くと、異変に気づいたルルナとヴェイルが駆けつけていた。
「ストリクス君を、すぐに横にしてちょうだい!」
状況をすぐに理解したルルナがアーサーに呼び掛ける。
「ヴェイル君は入口を見張っててくれる?」
「わ、分かった」
何が起きているのか分からないまま、言われた通りにヴェイルは入口で何者かが入って来ないかを見張っていた。
「もう大丈夫よ。これで少しは良くなるはずだから」
横になって、呼吸の荒いストリクスにすぐに、ルルナが術を流し込む。すると荒かった呼吸が、ゆっくりと息をするように変わった。
「同じ火属性だし、一旦これで凌げるはず」
「ありがとう。助かったよ」
そのまま寝息を立てて眠る、ストリクスを見たルルナは下唇を噛みながら、怒りと悲しみに溢れた声で呟いた。
「……どうして、罪も無い子にこんな事が出来るの?このまま、この姿でいられるなら”殺してやりたい”」
「——最初に俺達に攻撃してきたアラリックって子。あの子は全て分かっているようだった。この学園のことも、俺達のことも……」
「——とにかく一度学園へ戻りましょう」
ずっと、入口を守っていたヴェイルは、不思議そうな目でアーサー達を見ていた。
「自分も何か忘れていることが、あるのかな——」
そして、更なる学園の謎に迫る転機が、舞い降りる——
第4章(学園の謎、空白の入学前の記憶)編を開幕!
次回もお楽しみに!




