Deathgame: Color Ignition(デスゲーム:カラー・イグニッション)ストリクス・アルヴィオン編
十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー
土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、新たなる試練【対人戦】に向けた戦いに駒を進める——
生き残るのは真の才能がある人間のみ
誰が生きて誰が死ぬのか完全オリジナル作品
《Death of the Academia》をお楽しみください
大体の人間は六歳の時に、自分の属性に目覚めて成長していくのが”普通だった”
でも僕は普通じゃなかった——
「どうしてなの、ストリクス!!何故貴方に火属性の力が目覚めないの!」
「落ち着けよ。そんなぴったりに来るとも限らないだろう」
「でも……」
母は泣き崩れ、父は悲しげな表情だった。
——それから僕は、死ぬ程努力した。属性が目覚めるように、仮に目覚めなくとも2人を守れるくらい最強になると誓って。
しかし、時が早過ぎたのかもしれない。もしかしたら長過ぎたのかもしれない……”十八の時に、ある学園へ入る事を勧められた”——
「大丈夫? 顔色悪いよ」
過去の記憶を振り返っていると、ストリクス試験担当の、アーサーが顔を覗き込んで聞いてきた。
「少し、昔の事を思い出してただけ……問題無いよ」
「そっか……ところで君は、無属性状態でありながらも、それを逆手に取って自分自身の戦い方を、作り出した。と……」
「グラン先生から、聞いたのですか?」
「まぁ、そんな感じ。——とにかく始めに、属性を目覚めさせる必要がある。その為の試験を今から行います——」
そこから、アーサーからいくつか質問を投げかけられた。
「君の両親は、どの属性の持ち主だった?」
「微かにしか覚えてないですけど、僕達家族は全員、火属性の家族でした」
「君が属性持ちじゃ無いと知った時、両親はどうしてた?」
「幻滅したような表情を、今も忘れられない。それを振り払うように、僕は努力した……
もう一度、ちゃんと見て欲しくて頑張ってたのに。きっと子供の十二年と親の十二年は、天と地の差だったのだと思います。十八の時、この学園に追放されるように送り出されました」
「反論とかは、しなかったの?」
「利害の一致。勿論、属性に目覚める為に、毎日鍛錬して努力して、両親を助けた事だってあった……だから決めたんです。必ず見返す為に、この学園で”自分の色”を見つけるって」
洞窟の中に、沈黙が満ちていた。
アーサーは静かに目線を合わせ、まるで自分を重ねるかのように、ストリクスを見つめた。
「君は素晴らしい子だ。きっとこの学園で生き残れば、両親も認めてくれる……取り敢えずこれを、連れて行って、一旦実戦と行こうか」
そう言ってアーサーが掌を掲げると、そこから現れたのは、宝石のように輝きを放つルビー色とオレンジ色の蝶。
蝶はまるで意思を持つかのように羽を広げ、ストリクスの周囲を舞い始めた。
「これは“属性の蝶”と呼ばれる特別な存在なんだ。節目の六歳に属性に目覚めなかった者に、一度だけその力を与えることができる——ただし、1日一回だけね。
誰でも簡単に使える訳じゃないし、君が火に適性があるのか、土に惹かれるのか。それは蝶たちが決める。……風や水の蝶もいるけど、今の君には、この二匹が相応しいと思ったんだ。家族とのことも……ちゃんと見てるから」
舞い踊る蝶を一瞬見つめたストリクスは、そっと微笑み、
そしてアーサーと視線を交わす。
——その瞬間、瞳の奥に宿る光が変わった。静かに、しかし迷いなく剣を抜く。
「頑張ってね。期待している」
アーサーも剣を抜いた。
水の雫が、洞窟の岩を伝って一滴、地面に落ちる音が響く。
そして、もう一滴——その音が合図となった。
2人の剣が、静寂を裂いて火花を散らした。
「アーサー。どうして君はそんなに、不安そうな目をしているの? “何か隠してる?”」
「……もし君に属性が目覚めたら、その時に話そう」
「不安になる程、悩みがあるのは否定しないんだね」
不安そうな目をしながら、アーサーは笑ってみせた。
すると、ストリクスの周りを舞っていたオレンジ色の蝶が、溶けるようにレイピアと融合した。
——アーサーは、一度距離を取って説明する
「”今は土属性を試しなさい”ってところかな? 試しに初の属性攻撃放ってみたら良いんじゃない?」
自分の選んだ制服や、レイピアの色もオレンジ色に変わり、
ストリクスは剣を向ける。
初めての属性を持った彼は、無属性とは違う感覚を呼び起こして感動していた。
これが属性持ち……自然と基礎的な、技も脳内に流れ込んでくるし、ありがとうアーサー。
その時、地面が一瞬黒いラインが走り、目で追うと小さな紋章が現れていた。
「砂薔薇の抱擁!」
ストリクスがアーサーにレイピアを一閃突き出す。かすり傷を負うと、——刹那大きな砂嵐が起き、アーサーの体を包み込むと、砂薔薇へと姿を変えた。
「……これは」
アーサーはその中で、巻きつく花びらに拘束されながらも、静かに目を閉じる。
「初めての属性攻撃でこれとは……すごい。でも少し荒削りだね」
その瞬間、薔薇の左右から巨大な灰色の手が現れ、アーサーに襲いかかる。
——だが、薔薇が砕け散った一閃とともに、それらもろとも斬り払われ、空から砂の雨が降る。
「……っ!」
アーサーの服の中に砂が入り込み、ザラリとした感触が残る。
そして、最も衝撃的だったのは——
「蝶が……割れた……?」
砕けた蝶の欠片が、地面に落ちる。ストリクスの顔から血の気が引く。
「土属性は、駄目だったのか……火属性の蝶も……」
「——諦めるな!」
静かに見守っていたアーサーが、今度は強く声を張った。
「まだ諦めちゃ駄目だよ。確かに、土属性は違ったかもしれない、でも火属性の子はまだ生きている。最後まで諦めずに立ち続ければ、必ず良い事が起きるから」
周りを見渡すと、こちらへ向かって羽を広げて飛んでくる、ルビー色の蝶だった。
その光景に、目頭が熱くなり再び剣を取る。
「……そうだ。よく考えたら、この学園に入る時も面倒なんて見てくれないと思い込んで、参加してた。
でも、合格したのは“無属性でも戦える”って、ちゃんと評価されたから……」
「でも、無属性のまま終わりたくない——!」
突然、洞窟内の空気が熱を帯びた。ストリクスの体は火を纏い、青色の瞳も、燃えるような赤い瞳に変わった。
「……これが、火属性……!」
レイピアが燃え上がり、熱風がアーサーを包んだ。
「ありがとうアーサー
……母さん、父さん、……ようやく、僕は“僕のまま”で、あの日の続きを始められる気がする。ちゃんと家族の一員として変わるから見ててね」
燃え上がるレイピアの炎が、螺旋を描くように空間を舞った。赤く光が交差し、まるで一輪の花が空中で咲いては散るかのようだった。
その軌跡に沿うように、ストリクスの動きは加速する。
無属性の頃とは比べものにならない速度と、重み——
剣の一振りが、空気ごと斬り裂いた。
一撃ごとに熱風が吹き荒れ、洞窟の壁に焼け跡が刻まれていく。
アーサーは、その姿を見つめながら、静かに目を細めた。
「……良かった。君は本当に”素晴らしいよ”」
その姿は、もはやかつての無属性の少年ではなかった。
静かに、しかし燃えるような眼差しでアーサーを見つめ、レイピアを一閃。
「……これが僕の、“始まり”だ」
地面を蹴ると、彼の周囲に螺旋状の火炎が生まれた。
それはまるで、空へ向かって咲き乱れる、紅蓮の華。
猛火が描く螺旋の軌道を、そのまま身体ごと貫いて突き進む。
「赤く美しく排除する(スカーレット•バニッシュ)!」
炎は、ただの攻撃ではなかった。自らの過去を焼き払い、
迷いを燃やし尽くす、新生する意志の象徴だった。
空気が、音を失った。
洞窟の壁が、時間差で焼き裂けるように崩れ、足元には赤い螺旋の焼痕が、花弁のように残された。
アーサーの頬をかすめた熱風が、彼の心に灯をともす。
それは、ただの攻撃ではなかった。
“自分の色を見つけた者の決意の一撃だった”
炎の花が散った後、空気がゆっくりと動き出す。
——青白い光が彼の手から滲み出る。焼けた皮膚が少しずつ再生し、痛みが引いていく。
ふぅ、と息をついたアーサーは、ストリクスの方を振り返る。そこには、燃え尽きたあとの静寂の中で、どこか誇らしげに立ち尽くす少年の姿があった。
「……おめでとう、ストリクス。君は、ようやく“君自身の色”を手に入れたんだよ」
その声に、ストリクスが驚いたように振り向いた。
こちらへ走って満面の笑みを浮かべてアーサーに言葉を送る。
「アーサー!君のお陰で火属性になったよ。……本当に、本当にありがとう」
涙ぐみながら頭を深く下げて、感謝を伝えるストリクス。
アーサーは柔らかな微笑みを浮かべていた。
そしてストリクスと約束した、アーサーの悩みという名の過去、そして遂に真実に一歩近づく学園の謎が迫る——!
皆さん大変お待たせしすぎましたが、遂に学園の謎へ迫っていきます。
次回から何話かかけて、話を作っていきたいと思いますので応援よろしくお願いします




