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Death Game: Battle Within the Devil(デスゲーム:バトル・ウィズイン・ザ・デビル)レンリー・ノア編

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー

土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、新たなる試練【対人戦】に向けた戦いに駒を進める——

生き残るのは真の才能がある人間のみ

誰が生きて誰が死ぬのか完全オリジナル作品

《Death of the Academia》をお楽しみください

昔から、僕は弱虫で自己肯定感が低い子供だった。

怒られるのが怖くて、強い声には頭が上がらなくて。

——けれどある日。まるで“化け物”でも見るような目で、その連中は俺を見てきた——


「抑制の訓練って具体的に、何をするんですか?」


教室でティオルから聞いた話を、洞窟に移動してから再び

問いただす。


「君の中には、悪魔が宿っている」


「……はい?」


「グランから聞いてるよ。それに君を見た時、体の内側から禍々しい雰囲気が漂ってたから、すぐ分かった」


「ちょ、ちょっと待ってください。僕が覚醒状態になったのは、能力向上じゃなくて……ただの暴走……?」


「厳密には言えば、その二つが重なった状態かな」


「そう……だったんですね」


「だから今日は悪魔に取り憑かれずに、能力だけを底上げする抑制の訓練を一緒にやろう」


「が、頑張ります」


「そんなに固くならなくても大丈夫だよ。一応特殊な術を使えてね、早速やってみようか——」


「十字架と抑制(アル・クルスレスト)


ティオルが掌をかざし詠唱すると、空中に光と闇が交差し、禍々しくも神聖な十字の紋章が浮かび上がった。


「これで一度、覚醒状態になってみてもらえる?」


自分で意識して覚醒状態に持っていくのも、ティオルの中では訓練の1つだった。レンリーは深い集中状態になると、突如、心臓が痛く、強く叩くような鼓動を感じた


——ドクン、ドックン


痛みに耐えきれずレンリーは膝をつき、胸を抑えて響き渡る程の声で叫ぶ。


「あぁぁぁぁぁ! 痛い……痛い。今まで……意識……してやった事がっ……無かったから、このまま、死……ぬ?」


すぐに景色は暗闇の精神内へ変わる。

後ろから微かに足音が聞こえて、振り返ると鏡に映したように同じ顔の“自分”が立っていた。そして、そいつは僕の中に入って語りかける。


『この世界の連中が憎いのだろう……? 俺がいれば、お前の望む物は全て手に入るぞ……』


『だ……まれ……ゲテモノ。僕の中から出て行って——!』


「……落ち着いて、君も抗うんだ。こんな所で訓練が出来なかったら、対人戦で君だけが生き残っても皆死んでしまうよ……」


必死にレンリーを諭して、声を掛け続ける。

しかしティオルも内心、莫大な力を持つ悪魔に驚愕しながら術をかけていた。


荒い呼吸、痛む声が聞こえなくなり、洞窟は水滴の音だけが響いた。

ティオルは異様な雰囲気に万一と思い、顔を覗き込んだ瞬間——レンリーの剣から土煙が立った。


「やはり駄目か。それでも心の何処かで、君も抗う事を忘れていないのは、良い事だ」


レンリーが顔をあげると、顔の左半分が黒く禍々しい紋章が現れていた。しかし顔の右半分は、自我を保ち悪魔に抗い続けていた。


「ヒヒヒッ……やっと獲物の登場だ。——あぁ……黙れゲテモノ……僕の体で勝手に遊ぶな…!」


剣先が鎖のムチに変化して、助走をつけてティオルに迫る。


——ガシャァァァァン


避けた拍子に攻撃は、壁へと当たり一気に崩れ落ちた。


「はぁ、はぁ……くっそ………が……」


「一旦、強制解除させるしかないか」


その言葉に、レンリーは力尽くで自分の攻撃しようとする手を抑え付け、指も剣から剥がすように動かした。


「レンリー!腕を退けて!」


その言葉に反応するように、抗うレンリーは腕を退けて、悪魔のレンリーは鎖ムチをティオルに向かって打ちつける。


致命傷は回避して、ティオルは顔に切り傷を負った。

しかし、そんな事も気にせず浄化の光に溢れる術を発動して、レンリーのお腹にそっと触れた。


「悪魔の浄化(アル・ルーメン・クロス)


次第にレンリーを光で包み、衝撃で彼は遠くへ投げとされるような格好で倒れ込んだ。

倒れたレンリーからは禍々しい雰囲気は、少なくとも今は力を失っていた。


「これで一旦は安心だ」


体が突如重くなる。

そして、精神世界で、暗闇の海に沈んでいくレンリーは、ゆっくりと目を開けて過去の自分の姿を見る——


最初に見えたのは、自分より少し堅いの良いリーダーの、ヤンチャ三人組で、痩せ細って小さな体のレンリーを標的にいじめを繰り返していた。


「今日は……何?」


「また金になりそうなモン寄越せ!」


「……可哀想」


「あっ?何言ってんだよ」


幼少期ながら金の価値に気付いたリーダーの少年と、糸目の少し背の高い少年が、レンリーを威嚇する。


「本当に、可哀想。親を含めて、お前らみたいなクズな集団を産んでしまった神様が」


「てめぇ……」


挑発に耐える二人を横目にもう一人の無口系の、たるんだ瞳をした少年が拳を作ってレンリーを殴った。


そこからリンチのように蹴られ、殴られレンリーはただその場で、蹲る事しか出来なかった。

そして暴力に耐えながら、細目でヤンチャ組を見た彼の心に闇の感情が生まれてくる。


……殺したい……ころしたい……コロシタイ……


——そして母は死んだ。

遺った形見も、奪われ、壊され、燃やされて……最後に遺ったのは、母が死ぬ直前まで着けていた紫と狐色に輝く首飾りと、僕に言った言葉だけだった。


母は元々父が先に死んでから、病に侵された。

そこから奴らに見つかり、家に篭っていれば窓ガラスを割られ、外に出れば暴力を受ける。

日常茶飯事になってきた僕は、誰にも期待せず、次第に何も感じなくなっていった。


そして——決定打になり得る出来事が起こったのは、母が死んでから数日経ったある日の事。


首飾りが消失して、家と外を疲れてでも探していた。

夕暮れ時に、再びあいつらが現れて首飾りを自慢げに見せつけてくる。


「落とし物はこちらですか〜 レンリーさぁん」


「くそダセェネックレス。親が親なら子も子だな」


あまりにも空回りな発言に、鼻で笑ってしまった。

すると逆上したリーダーが首飾りを踏みつけて、粉々にした。どうして世界は、こうも不平等なのだろう——


そして暗闇の中に包囲される感覚。目の前には自分の大人になった姿の人物が現れた。そして男は僕に話しかける。


『力が欲しい?』


『力は要らない……でも殺してやりたいと、心の底から思ってる。だから”強さ”が欲しい』


『お前の望みに応えてやろう——』


暗闇の空間から帰ると、ゲラゲラと気持ち悪く笑うヤンチャ三人組。


今すぐに殺して欲しいと強く願った、その瞬間——


土の刃のような物が目にも見えないスピードで、無口系のヤンチャの首を刎ねていた。


——ブシャッ

首が取れる鈍い音と、ゴロゴロと転がる少年の首。

何が起きたか分からなかったリーダーと細目のヤンチャは腰を抜かして発狂する。




「う、うわぁぁぁぁ!」


「わ、悪かったよ……謝るから俺たちは見逃してくれ!」


「今更命乞いだと……? 図々しいにも限度がある。身の程を弁えろ…!」


明らかに雰囲気がいつもと変わって、攻撃的なレンリーを見たヤンチャ組の二人は、震えながら走ってその場を逃げていく——


『どうする? 皆殺しちゃう?』


『全員殺して。これは命令だ』


『……了解した』


暗闇の中で、再び二人は対話する。

現実世界では、物凄いスピードで大地を駆けて気付けば全身に返り血を浴びていた——


そして意識が普通のレンリーに戻ると、何の記憶も残っていない彼は目の前に広がった光景に驚愕した。

同じ村の住民が全員血を流して死んでいたのだ……


「……何だ……これ?」


状況が飲み込めない彼は、夜が明けるまで一人で過ごした。

そして、大人のレンリーは一言告げた。


『何があっても、側にいる。だから安心すると良い……』


そしてたまたま通りかかった騎士団に保護されて、レンリー・ノアという人物は、心にもう一人の自分を抱えながら彼等に育てられていったのだった——


そして洞窟の中で、静かに涙を流しながら眠るレンリーの姿を見たティオルは、ほっと胸を撫で下ろした。


「後は、闇に堕ちた自分と決着をつければ抑制術は完成する。どうする、レンリー・ノア——」


『ここに来るのは、最後になると思うから……もう、闇には囚われない』


『どうして、その結末を辿る事にした?』


『確かに僕は君に助けられた事が何度もあった。最近だと、第一授業の時かな? 君が体を乗っ取って僕を助けてくれたんだ』


『……それで?』


『でも、もう要らない。だって学園には君が思っているより、優しい人間が沢山いる!』


『アラリックさんは、口下手で大体誰かを怒らせちゃうけど、それに見合う実力の持ち主で、同じ属性の先輩で頼り甲斐があって、尊敬しています』


レンリーは、第一授業で必死にアズローラの民を助け、シークレットチャンスに成功していたアラリックの実績を思い出し、自分のことのように口元を緩めた。


『ヴェイルさんは、頑張り屋さんでどんな時も全力で喰らいつく姿がとてもかっこよくて、性格はツンデレですけど素直な一面もあって良い人です』


レンリーの脳裏には、第一授業後のアラリックとの微笑ましい会話や、時に本気でぶつかる姿を思い出す。


『ゼフィリーさんは、人に優しく時に厳しくして、真の実力に目覚めたら誰も勝てない程の魔法使いだと、一目で分かりました』


『ストリクスさんは、第一授業後に崖っぷちだった状況で、僕に話しかけてくれたんです。”君と僕は似ているかも”って。それだけで凄く嬉しかった……』


『それがお前の俺を裏切る理由か?』


『裏切る訳じゃありません…!だけどもう、一人脱落したんです。これ以上誰かが欠けるのは許容出来ない……』


『戦場はいつ命を落としてもおかしくない……そんな綺麗事を並べた所で、現実は変わらない』


『でも、僕のせいで誰か死ぬのは絶対に嫌だ! それは、自分の責任になりたくないとかじゃなくて、心の底から嫌なんだ……ティオルも、それを分かって僕に抑制の術を教え込もうとした!君はもう要らないんだよ』


レンリーは闇のレンリーに、自分の気持ちを正直に真っ直ぐに伝えた。

暗闇の中で静寂が貫き、レンリーは続けた。


『でも、君が居ないと僕は全然駄目なのも認める。だから最後の力を貸して欲しい』


『最後の最後になんだ?』


『君の力で僕に抑制術を授けて欲しい。そして、意図的に君を使えて自我を持ったまま戦える力を貸して!』


『君に支える者として最後の望みを聞き届ける』


案外潔く受け入れた闇のレンリーは、普通のレンリーの手を取って、そのまま溶けるように姿を消した——


一方ティオルは、レンリーに再び紋章が浮かび上がり、戦闘態勢に入る。しかし紋章の大きさが1回目と違うのと、悪魔が放つ闇のオーラが優しく感じて取れた。


「もしかして……君は」


体を起こして涙を静かに流しながら、レンリーが起き上がる。その表情は嬉しさと悲しさを表しているようだった。


「出来……ました。抑制術が完成……しました」


悲しさを纏っていた涙は、嬉し涙へ変わったのが分かり、ティオルは少しだけ微笑むとレンリーに告げる。


「ここまでは出来て当たり前のライン。早速実戦で力が暴走しないか、確かめるよ」


「——はい!」


こうして、悪い者として演じていた闇のレンリーの力により、今のレンリー・ノアは新しい扉を開けたのだった——

最後まで読んで頂きありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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