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Death Game: Restart Fighter Flame(デスゲーム:リスタート・ファイター・フレイム)ヴェイル・イグニス編

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー

土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、新たなる試練【対人戦】に向けた戦いに駒を進める——

生き残るのは真の才能がある人間のみ

誰が生きて誰が死ぬのか完全オリジナル作品

《Death of the Academia》をお楽しみください

「貴方の目指す姿を教えて……」


「俺は、弱い……第一授業で、でかい態度取った割には4位だったし、無属性相手にも一瞬で負けて。それで次の試合じゃ一丁前に勝って…… 一人の学園生活を終わらせたんだ……」


「自分が、憎い?」


「憎い……憎いよ。俺は俺が嫌いだ……あの時アラリックに怒鳴ったのも、ただ自分の弱さの怒りを、誰かにぶつけたかっただけで、時折本当に……消えてしまいたいと思う」


「そっか。じゃあ最後に貴方の答えを、聞かせて」


「俺は……強くなりたい。誰もが認める、火属性最強の戦士になりたい。嫌な事も全部克服して、何でも出来るようになって、それで…!」


「分かったわ。なら再スタートを切りましょう! この授業で私は全力で貴方と向き合い、鍛えてあげる事を約束する。

だから貴方も全力で授業に挑む事」


暗闇の中、感情を押し殺すように語っていたヴェイル。その心の奥に差し込むように、ルルナの声が届いていた。

目を開けると、女神のような笑顔で彼女は言った。


「それじゃあ、訓練を始めましょ——」


——こうしてヴェイルは再び立ち上がるのだ


「じゃあまずは基礎からなんだけど、剣に火を纏わせる事は出来る?」


「出来ますけど……」


「やってみて」


鞘から剣を抜いてみると、右手から炎が宿りそのまま剣先を辿って赤く燃え上がった。


「……これは」


「どうやら、その反応だと今までそんなに、使ってこれなかったみたいだね」


「どういう……事ですか?」


「貴方は今、目指したい場所があるから術が答えてくれたって事。今までは目的無しに使っていたから発動回数が少なかったのよ」


「そうだったんですか……でも確かに何でこの学園に入ろうと思ったか、自分で理解していなかったと思います」


「……取り敢えず、その剣を私に向かって放ってみて」


「良いんですか!?でも……やっぱり」


「アーサーのことは気にしないで。私がいいって言ってるんだから。それにね……“相手にも家族がいる”なんて、戦場で考えてたら、戦えないわ。——これが戦争よ」


ルルナの言葉には、何処か説得力があった気がした


「——分かりました。全力で行きます!」


ヴェイルは剣を強く握り、炎がそれに答えるように再び燃え上がる。


「はぁぁぁぁぁぁ!」


炎を纏った刃を、気合いと共に振り抜く。轟音と共に火柱がルルナへと迫る。

ヴェイルの術を受け止めるように、手をかざすと段々と弱まっているのを感じた。


「良い調子よ。今回の試験の内容は、貴方の剣術が私に一撃でも掠りでもしたら合格にしてあげる」


次第に火柱は黒い煙をあげて、姿を消した。


「手応えはどうだった?」


「当たりはしませんでしたけど、今までと違う感覚がしました」


「良し。このままトライアンドエラーを繰り返して、更に技術を高めていきましょう——」


恐らく一発目から、あの術を使うのは愚策だ。最初に接近戦を繰り広げて必殺技として、あの術を放てばもしかしたら……


ヴェイルは地を蹴って、一歩目でルルナとの距離を詰めて

一閃——剣を突き出す。


ガキィィィィィン!

激しい衝撃音と共に、洞窟の地面が割れる程の力を込めて、ぶつかった。


「いい作戦ね。ちゃんと自分で考える頭も持っている」


「大分煽りに聞こえますけど、貴方こそ素手で剣を止めたって事ですか?」


「この手は、自分や大切な人を守る為の手なの。これくらいは朝飯前よ」


ルルナの掌は鉄のような色と形をしてヴェイルの剣を受け止めていた。

そしてヴェイルも惨めだった自分は消えて、ルルナとの剣術訓練を楽しんでいた。

表情が柔らかくなったのを感じたルルナは安心した表情を見せてヴェイルとぶつかる。


剣と盾(人を守りし手)がぶつかる音が響き、激しい戦闘を繰り広げる。

再びヴェイルが剣を突き出した瞬間に、ルルナは弾いて無防備になったヴェイルに一撃を撃ち込もうとしたその瞬間——


「守って——!」


ヴェイルが本能のままに叫ぶ。

その瞬間、剣が共鳴し、轟音と共に火の壁が立ち上がる。

ルルナの拳が触れる寸前、ヴェイルの体を紅蓮の壁が包んでいた。


「ふぁぁぁ!」


驚いたルルナの声が反響して聞こえる。咄嗟に距離を取って防御体制に入ろうとした時、ヴェイルの剣は今までと間違える程の炎を纏っていた。


「この瞬間を待っていた——!」


剣の炎が渦を巻き、まるで意志を持ったかのように刃を包み込む。


「全てに打ち勝つ炎(アル•イグナリス)!」


燃え上がる炎の剣撃をルルナに向かって放ち、洞窟が一瞬にして炎の海へと姿を変えた。

それでもヴェイルは決して油断せず、次の相手の攻撃がどう飛んでくるのかを、考える。

——バチバチと火花が舞う中、ひとつの人影がこちらへ向かって歩いてくる。


「お見事……あなたの勝ちよ!」


出てきたルルナは、頬に赤く焼けた痕が残る。焦げた袖の隙間から、白い煙が立ち昇っていた

それでも、ルルナの瞳は満足そうに輝いていた


「ルルナ先生……しいです……」


「ん? なんて……」


ヴェイルが小さく呟いて、ルルナの方に顔を向けて、満面の笑みを浮かべてしっかり言い放つ。


「俺、今すっごく楽しいです!」


人は目標を立てれば、そこに向かって全力で走っていく。

目的を達成すれば、燃え尽き症候群にも成り得ないけど、

今の彼はスタートの階段を登ったわ。


ルルナは心の中で、再び安心して人間に戻れる首飾りをぎゅっと握り大きく深呼吸した。


「あの、この後少し休憩したら無属性でありながらも、スピードと一撃の重さを兼ね備えた相手との対戦を、イメージして鍛えてほしいです」


あまりの変化に少しきょとんとしつつも、ルルナは潔く受け入れた。


「良いわよ。それじゃあ一旦休んだら、再開しましょうか」


火の海だった洞窟は、ルルナの術により焦げ跡は残りつつも元通りに戻り、腰を下ろした。


あの最弱王決定戦(キング・オブ・ウィーク)で、ストリクスに手も足も出なかった。もしかしたら今後似た敵や、模擬戦だってあるかもしれない。だからこの時間で出来る事を、最大限やっておきたい——!


ルルナとの休憩時間にヴェイルは思考を巡らせた。

火傷痕を消し一呼吸置いた彼女は、勢いよく立ち上がる。


「私は休憩終わり!いつでも行けるわ」


「俺も行けます。よろしくお願いします」


二人は向かい合って視線を交わす。

ヴェイルの考えている事を、自分の中で読み取りルルナは、それに近しい攻撃を放つ。


「——こういうので合ってる?」


「再現性が高くて、良い訓練になりそうです」


ルルナの左手が腹部を払うように、刃が当たりヴェイルは剣で防御しようとしたが、間に合わなかった。

そのまま叩かれるように壁に打ち付けられた。


「……ぐっ……ってぇ……」


「今回の貴方の課題は、相手の攻撃を読む能力と、一撃の重さを耐えれる力強さが必要ね。でも1回目の特訓で連動出来てたし、そんなに時間はかからないと思うわ」


「それじゃあ成功するまで、何回でも来てください!」


ルルナが拳を一閃突き立てる——。その速さは凄まじく、ヴェイルは間一髪で剣で防ぐ事が出来たが、その衝撃は全身の骨を砕くように伝わり、膝をつきそうになったが痛みを耐えて、剣を振るう。


「アル・イグナリス!」


放った大技を繰り出して、放とうとした瞬間——

目の前でルルナが姿を消す。それでもヴェイルは読み切って

後ろを振り向く。


「——正直何処から来るかは勘だったけど、大抵の人間はそう来るよなっ!」


ヴェイルはルルナと視線を交わしながら、炎を纏う剣を振り下ろした。


「流石……もう合格ね」


人を斬った鈍い音が響いて、ルルナは倒れ込んだ。

しかし痛みや苦しみを感じている訳ではなく、少し頬を緩めて体を起こすと、ヴェイルに向けて言葉を告げる。


「貴方は目標を見つけた事で、更なる進化を遂げた。そして目標は幾つ持っていても良いのよ。きっとそれが自分の力になるから」


「自分の力に……」


自分の弱さに絶望していたヴェイルは、ルルナの導きにより

新たな目標を見い出し、第一授業とは比にならない程成長した。これからヴェイルは、I組にとってどのような存在になるのだろうか——

最後まで読んで頂きありがとうございました

ヴェイルは結構、頑張り屋さんなので応援したくなるキャラかなって思います笑

次回もお楽しみに!

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