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Death Game: Wind Rookie(デスゲーム:ウィンド・ルーキー)エニアル・シゼロ編

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー

土、火、水、風の四属性をメインに、二つのクラスに振り分けられた彼等は、各自提示された課題をこなして”自分の価値を証明する戦い”を繰り広げる——!

生き残るのは真の才能がある人間のみ

誰が生きて誰が死ぬのか完全オリジナル作品

《Death of the Academia》をお楽しみください

「貴方は何故私に勝てたと思いますか?」


リオライズの体の傷を治しながら、ヴァンティスが問いかける。


「勝った……というのは、形だけのものだと思うっす……」


「どうしてそう考えるのですか?」


傷を治す、淡い緑の光がリオライズを包み込む。


「俺は先生の放った攻撃を再現して返しただけ……自分の実力や、アイディアでは勝ってないんすよ。だから形では勝利しても、実力面では圧倒的負け……という考えです」


「……その為の努力はどのようにするのですか?」


考えたことも無かった。

今まで、実力は運動神経や、反射神経などに費やしてきた。

しかし攻撃面では、リオライズの記憶上、人真似以外で技がないからだ。


普通でも、自分に言い聞かせるように、ヴィンスティスの問いに答える。


「誰も見た事無い技を、頭フル回転させて作り出す……事です」


最後のリオライズの回答に静寂が訪れる中、ヴァンティスは

少し頬を緩めて、安心した顔を見せた。


「貴方は今の戦法でも、ずっと強さを持っていますが、それでも、這い上がろうとする姿勢は素晴らしいです。これからも期待していますよ…」


「どうもっす……じゃあエニアルさんが、実戦を早くやりたそうにしてるんで、俺は一旦バトンタッチすね——」


アリーナから体を起こして、エニアルと視線を交わす。

エニアル瞳と微かに感じる属性の気配……リオライズは期待に胸を躍らせた。


「自分の評価が良くないのに、他人の心配なんて柄じゃないっすけど……面白くなりそうっすね」


エニアルに掛ける言葉など要らない様子だった。

リオライズは、そのままエニアル横を通り過ぎて、ゼオンと共にアリーナへ足を運ぶのを見届けた——


「では、エニアル・シゼロ。貴方は属性持ちではありませんが、この二戦を見て掴んだ事はありますか?」


エニアルは、自分が感じたことを直球で言葉にぶつけた。


「この二戦で自分を投影させて見ていました。そしたら不思議と、自分の中で風属性を纏って戦っている姿が想像出来たのです。まるで……予知夢のように」


「……それで勝算はあるのですか?」


勝算。属性も持たない、ただの妄想にしか過ぎないかもしれない問いに、エニアルは一瞬喉が詰まった。


それでも、自分なりの答えを必死に声に出した。


「分かりません……でもこれだけは確実に言える……”必ず風属性が僕に力を貸すって”」



「……三分です」


「……え?」


「三分だけ時間をあげますから、自分に風属性を身に付けなさい。もしも三分過ぎても属性が出現しない場合は、無属性のまま戦って頂きます」


三分だけ、いや三分も与えてくれるなら、エニアルとっては十分過ぎるタイムリミットだった。


「ありがとうございます……それで問題ありません」


早速エニアルは眼を瞑り自分を投影させた姿と今欲しい姿を想像する。


——そして10秒ほど経った頃微かにエニアルの髪が風で靡く感覚で眼を開ける。


——あぁ……やっぱりずっと側に居てくれたんだね……

……今まで気付けなくてごめんね


精神内なのか、現実なのかは分からない……

それでも蛍のように、輝きを放つ風の玉に人差し指をそっと触れると、辺りが光に包まれ風の竜巻がエニアルを包み込んだ。


「これが……僕の力?」


「凄まじい魔力だ……ルーキーという立場でありながら、ここまで完成させるとは——」


ヴァンティスも感心する程の力を発揮させたエニアル。

次第に竜巻から、一本の杖が生み出される。


木で出来た緑の宝石を埋め込んだ神秘的な杖が……その光景にリオライズは興奮が止まらなかった


「スゲェすっよ……先輩。エニアルさんがあの実力なら、本番の対人戦、土属性の人間には、向かう所敵なしっすね!」


やがて竜巻は静まり出現した杖を手に取ると、問いかけるように、宝石が心臓の様に脈動し緑の光が一瞬彼の手を包み込み、エニアルは優しく語りかける。


「……うん、ありがとう。一緒に頑張ろうね……」


エニアルの中で、宝石と会話をしていたようだった。

きっとこの杖も今から放つ全ての術もエニアルにしか扱えないのだろう……


柔らかい優しい目つきから一変、ヴァンティスに視線を向けると鋭く獲物を狩る目つきへと変わり、空気も重苦しい空気へ変わった——


「いつでも準備万端です。この力で、貴方に全てをぶつけます……!」


「全力で来なさい。風に選ばれし者よ——」


今欲しい姿を再現しろ……あの時見たのは、二つの小さな風玉による爆発呪文。

時限爆弾の様だったけど範囲は広かった。

まずは実現しないと分からない……よね


杖を構えて魔力を込めると想像した通り二つの風の玉が、ヴァンティスめがけて駆けていく。


——動かないヴァンティスに対して、次第に光が強くなり大きな爆発を巻き起こし白い煙が舞い上がった。


「まずは一撃……」


——喜ぶのも束の間、白い煙を抜け、羽を広げて空を舞うヴィンティスの姿があった。


「観察程度にと思ったのです少々見誤っていた様です……

エニアル・シゼロ」


何か既視感のある状態だった。

ヴィンティスが空、自分が地に足をついている……


そう——


ゼオンが一撃目を受けた時と全く同じ構図になっていたのだ。


「逃げろ! エニアル」


遠くからゼオンの呼ぶ声が聞こえた。

しかし避けることは不可能と、感じてしまったエニアルは、杖を強く握り眼をぎゅっと閉じた。


強烈に吹く風の感覚が起き、恐る恐る眼を開けると、体に何も変化が無いことに安心した……


宙を舞う空気の音とともに、剣が地面に刺さる音が聞こえ、瞬間的にヴィンティスを確認する。

剣は鞘にしまった一本が腰にしまってあるだけで、本当に攻撃を回避したことを理解した。


「……もしかして君が守ってくれたの? ……そっか本当に、何から何までありがとう」


ゼオンの受けた攻撃、リオライズが再現した全てを破壊する威力の持つ攻撃を、どうやって回避したかは分からなかった。


——疑問そうな気持ちが顔に出たのか、ヴィンティスは刺さった刀を風で呼び戻して、エニアルにカラクリを説明する。


「今の貴方は私の攻撃を受ける寸前、属性解放の時のように、大きな竜巻が起きて、攻撃を受け流したのです」


ヴァンティスの説明で彼等が本当に助けてくれた、カラクリを理解した。


そしてエニアルは、一つの決意を胸に秘める。


接近されたら終わる……もう、あの風も何度は守ってくれないかもしれない。頼りきるわけにはいかない。

——なら届く内に叩くしかない!


意思を固めたエニアルは地を蹴り、風を纏って宙へと舞い上がる。


軽やかに、鋭く——

魔法使いとしての初めての空戦の覚悟を刻むように——


「これで終わらせる……だからもう少しだけ力を貸して」


“分かった”と返事をするように、杖は光を放って応える。

飛んでいるのも怖い自分を支えてくれているのは、杖の宝石だと理解した。


「何者でもない自分に風という力を与えてくれた事に、感謝しよう——そして全身全霊を賭けてぶつける……!

風の連続突進魔法(アル・マジック・ウィンドランス)!」


エニアルの周囲に、三重の緑色の魔法陣が展開された。

風が唸り宝石が煌めく——


そこから放たれるのは鋭く絞られた風の槍。

一撃また一撃と高速で撃ち出されるそれは、正確無比にヴィンティスを狙い空を裂いて連打を叩き込む。


——精度、威力、速さ。その全てが初心者離れしていた。


ゼオンと違うのは、当たっても何かしらのアビリティが発動しない事と、自分の動きと連動して魔法陣も動くという点だった。


ゼオンの場合は自分が地にいても、空からの攻撃が可能だったが、初めて魔法を扱うエニアルとっては無理な話だった。


「自分は自分なりの戦い方を全うする……だからもう投影はしない。ありったけの力を貴方にあげます!」


誰かと比べて悲観したり、強がったりするんじゃなくて、

自分なりの戦い方を作り出す——


エニアルは、最後に最大火力の、風の閃光魔法をヴィンティスに向かって撃ち放つ。


放たれた風の閃光は雷鳴のような咆哮とともに魔法陣を突き抜け、一直線にヴィンティスを貫かんと襲いかかる。


———ドォン!!!!


アリーナ全体が風の衝撃波に包まれた。

空までも揺るがす爆風、巻き上がる砂塵、空気が震える程の音圧が空気すら圧倒する。


あまりの変化にゼオンとリオライズも賞賛と驚きが入り混じる——


「凄い成長っす……! でも先生ならこれくらいでも大した事無いでしょうね」


「いや……そうでも無さそうだぞ……」



しばらくして煙が晴れる。

そこに立っていたのは、倒れていないヴィンティスだった。

全身は煤け衣服も一部が裂け、体には魔法の痕跡がくっきりと残る。


だがそれでも立っている——

表情は変わらず涼しげですらあった。


魔力を燃やし尽くした杖は、砕け散るように姿を消して、エニアルは息を切らしながら、ゆっくりと降下して静寂が広がる中、ヴィンティスの言葉を待つ———


「……正直私は貴方の再現性という面で、警戒心を強めていました。しかし精霊らしき者が本領発揮し、本当の姿を見せた貴方との連携に意識を持っていかなかった……これは私が計算しきれなかった故の——敗北」


深く強い威力だったのだろう……傷も今までのスピードより回復速度は遅かった。それでも回復する手は止めずに言葉を続ける——


「エニアル・シゼロ……貴方は自分の才能を自分で開花させた事とこの模擬戦の勝利を讃えます。おめでとう……」


自然と目頭が熱くなる……今まで気付かなかっただけなのに、ヴィンティスはしっかりと誉めてくれた。

まだ少し怖い印象も残る一方で、これからも自分の戦い方を貫く事を固く決意したのだった——

これにて第一授業風属性編は終了です!次回からは第一授業水属性編スタートです

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