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Death of the Academia 〜十二人の生徒達が紡ぎ世界を巡る英雄譚〜  作者: 鈴夜たね
あの日の真実と、青年を助けた英雄編
100/124

Curse Walker: Dialogue and Farewell (カース・ウォーカー:ダイアログ・アンド・フェアウェル)〈後編〉

十二人の生徒が命を賭けて挑むデスゲーム×学園ストーリー


I組第二授業から、ずっと離れて戦っていた外部の冒険者達と、記憶持ちの生徒達。


そしてようやく語られる——彼等と別れた後、どんな激戦を繰り広げていたのか……


そして、ネリカが助かり記憶持ちに参加した真相も明らかに——


《Death of the Academia》をお楽しみください

「リゼルド、貴様に話したいことがある」


ネリカとの対話を終え、黙って聞いていたアラリックが、ようやく口を開いた。


険しい表情——

その奥に、深い悲しみの影が覗く。


「オーケー。それじゃあ、場所変えよっか」


リゼルドが寮室のドアノブに触れると――木製の扉は黒鉄へと変わった。


「行こっか。アラリック」


初めてその能力を見たネリカとリオライズは、声も出す唖然とする。

——だがリゼルドにとっても、アラリックにとっても当たり前の光景だった。


「そう長くはかからないと思うけど……僕がいない間、学園の方はちゃんと見張っておいてね」


「は、はい……!」


そう言うと、アラリックさん達は足早にネリカさんの寮室を後にした――



暗闇の中、二人は扉をくぐって一つの部屋へ辿り着く。


アラリックは即座に悟った。

そこに横たわるの、アーサーの亡骸を——


「僕も話したいことがあったんだ。アーサーから君へのメッセージと、君の見た――過去の話を……」


リゼルドの真剣な言葉に、アラリックは沈黙を貫いた。

そして横たわるアーサーの元へ歩み寄り、英雄の顔を覗き込む。


衰弱し痩せ細った体は、かつて志を共にした姿の——痛ましい残骸だった。


「また死んだ。アーサー。貴方は………噓つきです――」


軽蔑と喪失の入り交じった、擦れた呟き。

僕は、アラリックと肩を並べて——静かに話し始める。


「アーサーも言ってた。『アラリック交わした約束、守れなくてごめん』って」


「いいえ、約束は一時的に破られただけで――まだ終わっていません」


その声に希望の色はなかった。

アラリックは恩師を、そして——壊れかけた心の支えになっていた英雄も死んだ。


ルルナと同様、もしくはそれ以上に――深い傷を残しているに違いない。

そして今——彼に残されたのは、狂気と復讐に似た黒い感情だけだった。


扉に手をかけたアラリックが、ほんの少しの沈黙を経て——ふいに口を開く。


「アーサーは、まだ僕達にとって必要な存在です。それは決して――雑に扱うわけじゃない」


「だったら、どうして……」


僕には理解できない。

何故、そこまでしてアーサー必要とするのか。

そして、アラリックは続けた。


「貴方の気持ちと同じですよ。例え戦えなくとも、彼がいるだけで……あいつらにとっては希望になる」


あいつら、ストリクス達のこと……?

でも今更、どうして——


「僕は別に、アーサーを諦められないなんてことは……」


「なら、答えてください。何故……埋葬もせずアーサーをこんな場所に、縛りつけているのですか……?」


アラリックの言い分に、僕は意表を突かれたように喉が詰まった。

それでも、――親友の二度目の死を見るのは……耐えられない。


「あぁ……そう。君がこんなに歪んで……ヴァルロス師も気の毒だろうね」


もう終わりにしよう――

僕達は、これで利害を違えた……どれだけ平穏な世界を望む者同士でも、これだけは譲れない。


「死人に感情なんてありません」


アラリックの声は、まるで悪魔の囁きのように冷え切っていた。


「――でもそうですね。もう二度と、貴方とは会いません」


殺意と失望に濁った瞳が、最後に僕を射抜く。

そこに光はなかった——


彼は無言のまま扉をくぐり――去っていった。



学園の廊下に戻ったアラリックは、一人歩き続けた。

感情を黒く塗りつぶした足は、無心にコロシアムへと向かう。


……その時、学園の昇降口から声が響いた。


「どうしたのレンリー! 落ち着いて」

「離して……離してください! 僕は、家に帰ります……!」

ということで、十章完結でございます!


次回から、第十一章『I組生徒の嘆きの混沌編』スタートです。


不完全燃焼で終わったネリカ奪還作戦、グランが死んだことによるレンリー達の末路は如何に——

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