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ギャルの自転車を直したら懐かれた【8月25日・第1巻発売予定】  作者: 生姜寧也


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99/225

99:ギャルにエールを送った

「……モデルになりたいって子も居た。もしかしたら成長してアタシのライバルになるかも。その時……アタシが不公平な手段で仕事を奪ってしまったらって……でも同時にアタシが居なかったら、あの子、モデルに憧れることもなかったかも」


「……複雑ですね。きっと星架さんが憧れるような綺麗な人たちも、決して綺麗なだけじゃないんでしょうね」


「うん。綺麗でいる為に、汚いこともする。大人になる、仕事で活躍するって、きっと……清濁併せ呑むって言うのかな。そういうのも必要なんだろうね」


「そう……かも知れませんが、僕としてはコネや美貌を、チートのように言うのはどうなんだろうって思います」


「え?」


「時々、星架さん、そういう言い方するでしょ? けどいっつも思ってたんです。じゃあ病気のことは? って。だって生まれ持ったモノって括りだったら病気だってそうでしょ? そこでハンデを与えられてるんだから、ご褒美があってもイーブンじゃないですか。なのに、自分に不利な所だけは我慢して、有利な所はチートなんておかしい。自分に厳しすぎる」


「康生……」


 少し呆気に取られていたけど、星架さんはややあって薄く笑った。


「今までそんな考え方したことなかったわ。けど、仕事奪われる方からしたら、ここで帳尻合わせすんな、って感じだろうけどね」


「それは……申し訳ないですけど、僕は星架さんの味方なんで」


「ははは。結局えこ贔屓じゃん」


 今度こそ歯を見せて笑った。そして握った手に力を込めて、


「アタシ、続けるよ」


 と宣言した。


「憧れてくれる子たちがいる。直接会って話せないから、実感が湧きにくかったけど、フォロワーさん、チャンネル登録者さん、その人たちも応援してくれてんだよね?」


「はい」


「千佳も雛乃もついてくれてる」


「はい」


「それに、美貌とかサラっと言ってくれるヤツも居るしな」


「ええ、そこ?」


「そこだっつーの。ドキッとさせんな」


 繋いだままの手の甲を指で突かれる。


「まあ、気張らずやるよ。どう仕事取ったかじゃなくて、どう喜んでもらえたか、そっち重視する。つっても、すぐには無理だろうし、完全にそう思えるほど図太くもない。相変わらず、本職にするのかも未定。またパパからは中途半端って思われそうだけど……でも続けたい。とりま今は喜んでくれる人のために。そして自分自身のキレイになりたいって欲求のために」


「はい。応援します」


「……ねえ」


 僕の肩に星架さんの頭がコテンと乗っかる。ヘアフレグランスの甘い匂いがした。


「ありがと……大事にしてくれて」


「はい」


 ヒグラシはまだ鳴いてるけど、もう寂しさは感じなかった。













 <星架サイド>



 あの後、家まで送ってもらって、シャワーを浴びてメイクも落として、アタシは自室のベッドに頭から突っ込む。俯せのまま横を向いて、康生ぬいの短い手足を見て、少し笑った。


「また好きになったんだけど……どうなってんの、これ。底なし沼かよ」


 てか、あんだけアタシのこと考えてくれて、慣れないイベント運営まで頑張ってくれて……これでまだ付き合えてないっておかしくね?


 付き合うどころか、まだ康生から確実な「異性として好き」のサインみたいなの、ほとんど感じられた事ないかも。


「そもそも友達までが長かったし……」


 それ以上を望むんなら、更にもう少し待たないとなのか。段々、キツくなってんだよな。てか待たせてる間に、全力でアタシのこと大事にしといて、向こうの恋愛感情だけ育ってないって、そんなんアリかよ。


「いや、ホントに育ってないのか?」


 実際、わかんない。何かフッとした時に、普通に「好きです」とか言ってきそうな雰囲気もあるんだよね。アタシの希望的観測かも知れんけど、あの子、ホント読めん所あるからな。


「はあ~」


 まあ何にせよ、こっちの事情でヤキモキさせて、色々と手助けしてもらったんだから……アタシの方だけ待てないとか言って自分勝手に突っ走ったらダメだよね。

 ……アタシが変わった、と千佳は言ったけど、本当そうかもね。昔だったらグワーッて行ってたかも。


「つか康生のことばっかだな。仕事のモヤモヤとかどこ行ったんだよ」


 不思議なほど、そっち方面は心が澄み渡ってる。

 別に何もかもが解決したワケでもないし、相変わらずコネへの罪悪感もあるハズなのに。中途半端でいる覚悟みたいなのが出来たって言うか。つーか、自分の仕事に割り切れない気持ちや、諦めて妥協してる所なんて、きっと皆あるんだろうなって。


 それでも続けられるのは、大事な人が支えてくれるから。そしてその大事な人に何かしてあげる為にはお金が要るから。アタシはそこにプラスで「仕事は好き」もあるんだから、むしろ恵まれてる方だ。


「大事な人」


 今日会って、原初の熱を思い出させてくれた子供たち。でも彼女たちとは、きっと基本的には一期一会。けど本当に大事な人、支えてくれる人は、絶対に一期一会にしちゃダメで。


 ここでも結局、同じ結論に至る。


 康生が欲しい。友達だけじゃ離れちゃうかも知れない。だからもっと先……


 頑張ろう。取り敢えず、次に会う時は元気な星架さんに戻っておいて、安心させてあげないと。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 星架さん、本当にいい女ですな。 [一言] さて、二人の中がこなれてきた感じな訳ですが… そろそろ康生のライバルか、星架さんのライバルが出てきてもおかしくはないはず! 信長さん:俺呼んだー…
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