そして四人
あれから数週間。森当くんは早々に馴染んでいた。
最初は話し方もあり真面目な子だと思っていのだが、他二人に負けじと個性的な……物怖じしないタイプであった。
「藤宮探偵、そこのティッシュを取っていただけませんか?」
呼ばれたひとねは文庫本を置き、ティッシュに手をかけて怪訝な顔をする。
「なんだいその変な呼び方」
「敬愛と尊敬を込めた呼び方です。変ですか?」
「……あまり好ましくはないね」
「なるほど、しかし僕はお気に召してしまいました」
「ええ……」
「まあ、流石に普段使いはしません。探偵業の時だけにしましょう」
「それなら……まあ」
折衷案みたいになってるけど騙されてるぞ、ひとね。
「じゃあ俺は助手か?」
「いえ、健斗先輩です」
「なんでさ」
「特別なのは探偵だけですから」
「ええ……」
「じゃあわたしは?」
ホワイトボードに落書きをしていた下里が自身を指して言った。
「くだりさん、ですね」
「ようやく名前で呼んでくれる人が現れた!」
「よかったな」
「この機会にお二人も呼び方をチェンジです! リピートアフターミー、くだりちゃん」
「下里」
「下里さん」
「なんでですか!」
いつしかやったようなやり取りを見て森当くんは笑っている。
そんなわけで図書部のメンバーは四人となったのであった。




