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90 女子高生も友人と帰る

「おーし、帰るぞー」


 放課後になっていつの間にかリンリンが教室に入って来てた。2年のクラスは上の階だし早すぎない?


「今日は久し振りにノラノラの家に行くぞ。ノラノラじゃないが最近寒過ぎてもふもふしたいから!」


 リンリンはいつも正直だから好感があるよ。それに来てくれるなら私も大歓迎。


「それなら、わたしもお邪魔してもいいですか? もふもふ、いいと思います」


 コルちゃんにも伝染したみたい。


「いいよ~。皆でもふもふしよっかー」


 という訳で今日は3人で仲良く下校。グラウンドも雪が積もって一面真っ白。道に出ても道路以外は殆ど雪に覆われてるから歩くのも大変。


 森の方も雪がすごく積もってて足を踏み入れたら抜けなさそうなくらい。木にも一杯積もってるから不用意に近付いて雪が落ちてきたら大変だからなるべく離れて歩かないとね。

 雑草もなくて真っ白な森を見るのは綺麗なんだけどね。


 それでぼうっと見てたら何か森の中で青い何かが飛んでるのが見えた。鳥かな、って思ったけど鳥にしてはゴツゴツしてる。ていうかトカゲ?


「あれって、瑠璃じゃね?」


 リンリンが言ってくれた。やっぱりそう見える? 瑠璃は森の中でフラフラ飛んでてキョロキョロしてた。何してるんだる。


「瑠璃ー。森は危ないよー」


 声をかけたら気付いてこっちに飛んで来た。と思ったら枝に頭をぶつけて木に積もった雪を思いっきり浴びて地面に埋もれた。大変!


 慌てて近くに行って雪を掻き分けたら瑠璃が雪の中から飛び出してきた。全身雪塗れだよ。


「外に出たらダメでしょ?」


「ぴ~」


「もしかして迎えに来てくれたの?」


「ぴ!」


 それは嬉しいんだけど道に迷ったら元も子もないと思う。というか学校は森の中にないよ。

 とりあえず身体についた雪を払ってあげよう。そしたらいつも通りに元気に飛びまわってる。


「ドラゴンは元気だなー。こんな寒い中でよく動けるよ」


 リンリンはコートに手を入れて寒そうにしてる。防寒してないとこの時期は本当に寒い。

 横断歩道を渡って住宅の近くを歩いてたら、住宅街の方で賑やかな声が聞こえてくる。

 見たら小学生くらいの子供達が楽しそうに雪合戦してた。ランドセルを背負ってるから帰ってる途中かな。


「子供は元気だなー。私にはあんな走り回る元気がないよ」


「リンさん、さっきから発言が年寄りみたいですよ」


 子供の時は何をしても楽しいから仕方ないよね。それで子供達もヒートアップしてるみたいで近くの方まで来てた。それで雪玉を思い切り投げたんだけど、当てようとした子が避けたからそれがリンリンの顔に当たった。その後に瑠璃の顔にも当たってる。


 リンリンが手袋で顔を拭いて子供を見てた。すごい満面な笑み。でも子供達はそれを見て笑って追い討ちしてた。


「よし分かった。戦争だな。ガキ共、覚悟しろ!」


「ぴ!」


「姉ちゃん切れた!」


「玉補充しろ!」


 リンリンと瑠璃が何か燃えて子供達の方に歩いて行く。さっきまでの発言はいずこにって感じだけど。


「何か盛り上がってるし待ってよっか」


「そうですね」


 とりあえず待ってる間に雪だるまでも作ってようかな。あ、隅っこの方に雪が結構積もってる。これで何か作ってみよう。コルちゃんと仲良く雪像を地道に作る。こういう地味な作業は嫌いじゃない。


 遠くから悲鳴とも楽しんでるとも言える声がして今日も平和だなーって気になる。


「はぁっはぁっ! 今日はこれくらいで勘弁してやる!」


「ぴっ!」


 とか言ってこっちに戻って来た。どっちも全身雪塗れなのを見て勝敗は察したよ。ああいうのって子供の方が知恵が回るよね。


「そんで何してんの? スノウアート?」


「そうだよ。はい、完成」


「なんだそりゃ。ソフトクリームか?」


「違うよ~。正解はシロちゃんの尻尾でした~」


「分かるか!」


 あの大きなもふもふした尻尾は見てるだけで癒しだからね。雪だからもふれないのが辛い。


「わたしもできました」


「コルコは……雪だるま、の半身か?」


 綺麗に丸くしてある。これは雪だるまではないね。


「分かった。スライムでしょ?」


「ノラさん正解です」


「分かるかっ! どっちもマニアックすぎだろ!」


 微妙に楕円を利かせてたから分かったよ。せっかくだから写真撮っておこう。私の力作とコルちゃんのスライム。


「リンリンもおつかれ」


「まったくよ、あいつらはもう少し手加減というのを知らないのかね」


「ぴーぴ」


 手加減してもらわないと勝てないというのを認めたみたい。


「リンリンって子供に好かれやすいよね。フランクだから?」


「私は誰にでも平等に接する主義なんでな」


「大人気ないだけじゃないですか?」


 リンリンがそれは言わないでって顔をしてる。


「しかし寒いな。もふもふはまだか」


「じゃあ私が温めてあげるね。ぎゅー」


「あー、ノラノラあったか~」


 リンリンも雪で濡れてるわりには普通に温かい気がする。


「ノラさんはあれですね。知らない内に相手を口説いて落としてるパターンですね」


「えー、そう?」


「異世界に行っても皆さんノラさんに対する好感度が高い気がします」


 それは向こうの皆が良い人で優しいからだと思うけど。


「いいか、ノラノラ。こうやって誰彼構わず抱き付いたらダメだぞ。あんまり節操なく抱きついてたら、この人は誰にでもこうなんだって思われるからな」


 リンリンが力説してるわりに私から一向に離れてくれない。体は正直って奴?


「女同士でも?」


「余計ダメだろ!」


 でも離れてないよね。


「ああもう、分かった。私の負けでいい。このままノラノラの胸の中で眠ってしまいたい」


 リンリンが何かを悟ったみたいに寄りかかってくる。こういう時どうしたらいいんだろう。

 コルちゃんに助けを求めてみる。


「リンさんはノラさんに妬いてるんですよ。ずっと異世界に行って相手してくれないのがです」


「はあぁぁぁ! コルコ何言ってんの! そんなんじゃないし!」


 これは図星みたい。


「ごめんね。最近リンリンともあんまり遊べてないもんね」


「……別にいいし。ノラノラがどこに行こうが自由だし」


 これは重症だなぁ。


「じゃあ今日は特別にこのままでいていいよ。それで許してね」


「……ん」


 よかった。リンリンの機嫌は治ってくれたみたい。


「聞いてください、瑠璃。ノラさんは幼馴染に浮気したみたいです。寂しいですね」


「ぴー?」


 まさかのコルちゃんまで? 今日は2人してどうなってるのー!


「えーっと、えっと。コルちゃんも来ていいよ」


「わたしはおまけですか?」


「その聞き方ずるいー。私は皆と仲良くしたいんだよー」


「ふふ、知ってます。ちょっと悪戯したくなっただけです」


 コルちゃんが健気に笑うからこれは完敗。私の負けだよ。


「コルちゃん、ごめんね。この責任は明日学校でとるから」


 何の責任かはよく分かってないけど。


「いいですよ。楽しみです」


 もう何かよく分からないけど成る様に身を任せるしかない。そんな気がしたよ。

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