表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/221

73 女子高生も友人と甘味処に行く

 今日は祝日。学校に行かなくていいからリリと一緒に庭で縁側で寛いでる。リリは柴助に寄られてるから頭を撫でたりして、猫丸と猫じゃらしで遊んでくれてる。うーん、私の時は遊んでも全然食いつかないのになー。


 リリが遊んでる間にこん子とたぬ坊の餌をあげる。ミー美、瑠璃は先にあげたけど瑠璃はまだ食べたそうにドッグフードをジッと見てる。仕方ないなー、ちょっとだけだよ?

 手に少しだけ出してあげたら瑠璃が嬉しそうに食いついた。


「それにしてもノノの家は従魔がたくさんね」


「皆良い子だよー」


「うん。最初はびっくりしたけど皆人懐っこくてかわいいわ」


 リリも我が家のもふもふ達を気に入ってくれたみたいで嬉しい。

 それにしても金髪の人が動物と遊んでるのは絵になるなー。そうだ。


「ねー、リリー。写真撮ってもいい?」


 ヒカリさんじゃないけどこれは収めておきたい。


「写真ってヒカリでしてたあれ、だったっけ?」


「うん。リリがかわいいから保存したい」


「かわ……。いいけど、ポーズとかした方がいい?」


「そのままで大丈夫だよー」


「ん、分かった」


 リリが猫丸と遊んでる所をスマホに収めた。後、せっかくだからこん子とたぬ坊と一緒の所と柴助を撫でてる所も。うん、やっぱり良いね。ヒカリさんが写真撮るのが好きな理由が分かったかもしれない。


「な、なんか恥ずかしいわね。それ、ずっと残るんでしょ?」


「じゃあ一緒のも撮ろー」


 リリにくっ付いてツーショット。これなら恥ずかしくないよね。そう思ったけどリリは顔が赤くなってた。んー、やっぱり写真撮られるのは緊張するかー。

 今日はこれくらいにしておこう。


「おーい。遊びに来たぞー」


 声がしたからサンダルを履いて出たら家の前にリンリンとコルちゃんが来てくれてた。連絡したけどまさか一緒とは。


「丁度歩いてたらリンさんと一緒になったんです」


「それは偶然だねー。入ってー」


「お邪魔します」


「入るぞー」


 私の友人も招いて庭に来ると2人共リリを見て驚いてた。


「リリルじゃん! こっち来てたのか!」


「リリルさん、久し振りです」


「リンにコル。久し振りね」


 リリが来てるのは内緒にしてたからびっくりしてくれた。サプライズ成功だね。


「リンリンとコルちゃんも呼んだんだよー。せっかくだからリリにこの町を案内しようと思って」


「そうだったのね。でもよく呼べたわね? どうやって教えたの?」


 リリが不思議そうにしてたからスマホのライン画面を見せる。それで試しにリンリンにウサギのスタンプを送ったら変なスタンプが帰って来る。


「こんな風にやり取りできるんだよ」


「ほえー。これは便利ね。鉄の箱もそうだし、この国の文明の進化には驚かされるわ。あ、それかわいい」


「でしょー? あとこれとかもお気に入りでね」


 これのおかげで今もこうして皆で集まれてるから本当に文明様様だね。


「こうして見ると帰国子女にしか見えませんね」


「あーリリルな。でもそれ言ったらコルコもそうじゃん?」


「そうなるのでしょうか? 自分がそうだと実感湧きませんね」


「皆友達だからオールオッケー」


 髪の色の違いなんて些細な問題だよね。皆も揃ったことだし早速家を出て出発。

 何気ない歩道だけど皆と並んで歩いてるだけでそれだけでキラキラしてるように感じられる。


「それにしてもリリルがこっちに来るって珍しいじゃん。何かあったの?」


 リンリンが何気なく聞いてきてリリがちょっと困った顔をしてる。


「うん。この前夏祭りに来たでしょ? それでこっちの世界に興味を持ったから呼んでみたんだ」


「なるー」


 リリも多分許婚云々はあまり言いたくないだろうし、まだ気持ちにも整理が付いてないと思う。それにこっちの世界に興味があるのも多分本当だろうし嘘にはならないよね。

 リリが耳元で「ありがとう」って言ってくれた。友達だからって何でも話すのもちょっと違うよね。


「それにしてもあの鉄の箱、よく走ってるわね」


 リリが通り過ぎていく車を見て呟いてる。


「遠くへ移動するならあれを使うのが確実ですからね」


 コルちゃんが代わりに答えてくれた。


「へー。でもあんな速く走れたらかなり遠くまで行けそうね」


「この辺は田舎だからねー。どこかで遊ぼうって思ったら結構遠くまで行かないと駄目かも」


「そうなの? 見てるだけでも楽しいけれど」


 リリが田んぼとか電柱を見て興味深そうにしてる。


「リリル、安心しろ。ノラノラと一緒なら退屈なんてしないぞ」


「それは同感ですね」


「あー、それは分かるかも」


 何か皆で納得して同調してる。すごく嬉しい発言だけど。


 皆でお喋りして歩いてたら甘味処まで着くのもそう長く感じなかった。徒歩だと半時間以上もかかるし、結構入り組んだ住宅街の中にあるから普段だと学校帰りでも早々に来ない。

 古風な赤い暖簾が特徴で、昭和の玄関みたいになってる。ガラガラって戸を開けたら中から甘い和風な香りがしてくる。


「いらっしゃいませ~」


 若い女性の店員さんが笑顔で出迎えてくれた。外の見た目は古風だけど中は綺麗で新しさを感じる。ショーケースみたいのがいくつもあって、その中に和菓子が色々と展示されてる。どれもおいしそー。


「これはまた変わった食べ物ね。どれも見たことないわ」


「私のオススメはみたらし団子かなー」


 どら焼きも捨てがたいけどやっぱり団子が好き。


「えー。そこは黄粉だろー」


 リンリンが抗議してくる。こればっかりは譲れないよ。


「わたしは普通のが好きですね」


 コルちゃん、それは通だね。

 そんなわけで皆で別々のお団子を買った。リリには私からみたらし団子をあげる。


「こちらで食べられますか?」


「食べますー」


 店員さんが聞いてきてくれたから好意に乗った。店内の隅の方に座って食べれるスペースがあるんだよね。それと小さなテーブルもあってそれがかわいい。あと、ここで食べると何と無料で美味しい緑茶が飲めるんだよね。それがすっごく贅沢!


 さっそく店員さんが店のロゴの入った陶器のコップで盆で運んで来てくれた。4つ分小さい机に置いてくれて笑顔でお辞儀をしてから戻っていく。こういう些細なサービスがあるから今もこの店が続いてるんだろうなぁ。


 皆で頂きますって揃えてから団子を頬張る。うん、モチモチしててそれにタレも程よい甘さですごくいい感じ。ここのお団子を食べたらスーパーで売ってるのが食べられなくなるんだよね。


「なにこれやわらかー! それにこのタレ美味しい!」


 リリが目を輝かせて言ってくれる。私と殆ど同じ感想でちょっと嬉しくなる。


「和菓子なんてめったに食べませんけど、こういう店のを食べると改めていいって思いますね」


「あー分かるな。うちの親もよくカステラとか買ってくるけど私殆ど食べないわ」


 甘いのって言われるとやっぱりチョコとかクリームの入ったのが印象強いよね。

 団子を一旦紙の上に置いて緑茶を飲んだ。うん。熱々で身に染みるね。


「リリ、これも美味しいから飲んでー」


「ん。ってあっつ! このまま飲むの? 風魔法で冷ましたら駄目?」


「熱々で飲むのが美味しいんだよー」


「そうなのね。この国の習慣ならそれに倣うわ」


 それでリリが緑茶を一口飲んだけどやっぱり熱そうにしてた。和菓子には熱いお茶が定番だよね。すごく合う。


「けどさ、改めて見て思ったけどコルコとリリルが並んで座ってると外国行った気分になってくるな」


 リンリンが2人をジーッと見て言ってる。確かに髪の色も白と金だしどっちも食べ方が上品だから余計に際立ってる。


「これは写真に収めないとだね」


 スマホを取り出してシャッターチャンスに備えてみる。


「ノラさん、そんなお姉ちゃんみたいな」


「今の私はヒカリさんモードだよー。はい撮れたー」


 美少女のツーショットを手に入れたよー。団子食べてる姿も絵になるー。


「まてまて。せっかくなんだからノラノラも混ざれって。その方が映えるだろう?」


「えー。じゃあ交替で皆で撮り合いっこしよー」


 結局最終的に店員さんに頼んで皆で集まったのを撮ってもらって甘味処を出ることになった。


 それからリリを連れて色んな所を回ってお喋りしてたら時間はあっという間に過ぎていく。気付いたときには空が薄く暗くなってた。陽が沈むのも早い。


「それじゃあまたな」


「今日は楽しかったです」


 リンリンとコルちゃんと手を振って別れた。それでリリと一緒に家に帰る。

 でもリリは足を柵に寄りかかって川の流れる方を見てた。風が吹いてリリの髪がゆらゆら揺れててすごく大人びて見える。


「あのね、ノノ。やっぱり私、家に帰ろうと思う」


 リリがそう呟いた。


「大丈夫? 無理してない?」


「うん。それに今日皆と過ごして分かったの。私、やっぱり皆とこうして過ごす時間が好き。今まで友達もいなくて、親に与えられた道を歩くだけだった。きっと、許婚が出来たら私の道はまた無機質な物になっていくんだと思う。だから、お父様とちゃんと話して断ろうと思う」


 リリの目は真剣そのものだった。今日、楽しんでくれてたのは本心だと思うけど、ずっと心の奥にそのことが引っかかってたのも事実だと思う。


「1人で大丈夫? 私が男装して恋人の振りする?」


「あはは! それいいかも。なんてね。大丈夫、これは私の問題だし、それにノノと一緒にいて分かったから。私は皆との時間をこれからも過ごしていたい。いつか、結婚とかそういうのを考えなくちゃならないのだろうけど、それは今じゃないって思う」


「そっか。でもまた何かあったら何でも言って。私だと話を聞くくらいしかできないけど、出来る事なら手伝うから」


「ありがとう。私、ノノと知り合えて本当によかった。だから、ありがとう」


 そう言ってリリが満面の笑顔を見せてくれた。こんなリリの笑顔初めてかも。この様子だと吹っ切れたみたいだね。


「私もリリと知り合えてよかった。頑張ってね」


「うん。また笑顔でノノに報告するね」


 それでリリを異世界に見送るために手を繋いだ。そのときだけリリの手が温かくて優しく感じられたのはどうしてだろう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白く一気に読ませてもらいました これからも更新頑張ってください 応援しています [気になる点] 投稿頻度が遅いのと過去にエタっているっぽいのでそこがちょっと不満点というか懸念点か…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ