72 女子高生もお嬢様を招く
ずぶ濡れになってリリと一緒に家に帰ったらお母さんがすごく驚いて、すぐにお風呂を沸かしてくれた。それでリリと一緒にお風呂に入って身体を洗って出た。私のパジャマを貸して仲良く水色のパジャマを着てる。それで今台所にお父さんとお母さんも集まって皆で椅子に座ってる状況。
「えっと。私の友達なんだけど」
「リリアンナ・リリルです。突然不躾に訪問して失礼しました」
リリがペコリと頭を下げた。それを見てお父さんとお母さんが感心してる。
「まぁ。とても日本語が上手ね。留学生かしら?」
「え、えっと?」
お母さんの質問にリリが困ってる。確かに金髪の女の子が日本語ペラペラだとそう思うよね。
「お母さん、リリは私の異世界の友達なんだよー。外国人じゃないんだよ」
「異世界? あなた、また野良が変なこと言ってるわ」
「よく分からないが良い子というのは分かった」
お父さんの楽観的な言葉にお母さんが呆れて溜息吐いてる。やっぱり異世界は信じてくれないかー。
「少しの間、リリを家に泊めてもいいかな?」
「勿論いいぞ。可愛い娘が増えたようで嬉しいもんですよ。いたぁ!」
お父さんが軽口を叩いたからお母さんに頭を思い切り叩かれてる。うん、今の発言はちょっと余計かな。
それでリリが椅子から立って棚に置いてある自分の小物を手に取ると机の上に真っ赤なブローチを置いた。見るからに高価そうですごく綺麗。
「えっと、今はこんな物しかありませんが売ったらそれなりの値にはなると思います。泊めてくれる宿代としては少ないかもしれませんが……」
リリが差し出そうとするとお母さんが優しい顔を見せてくれた。
「リリルちゃんと言ったわよね。そこまで気を使わなくても大丈夫よ。何もない所だけど好きなだけゆっくりして頂戴」
「せっかくだし今夜は鍋でもしようか。野良も身体が冷えただろう?」
「うん。ありがとー」
そんな感じでお父さんの作ってくれた鍋を皆で囲んでわいわい楽しんだ。リリもさっきまでの不安も少し和らいだみたいで楽しそうにしてくれてよかった。
~食後~
ご飯もお腹一杯食べてリリと一緒に部屋で寛いでる。何もない場所でちょっと申し訳なくなるけど。
「いい両親ね」
リリが体育座りしてベッドにもたれながら言ってくれる。
「うん。私もそう思うかな。瑠璃やミー美を飼っても許してくれてるし」
「あんな良い両親ならノノの性格も納得かなぁ。はぁ、私もノノの家で生まれたかったなぁ」
リリが嫌な現実を思い出したみたいで深い溜息を吐いてる。
「養子になっちゃう?」
「え、本気? そうなったら私とノノが姉妹?」
「リリって何歳だっけ?」
「16だけど」
「私と一緒だー。それなら双子だね」
「え? 同い年だったの? なんか無意識にノノは年上って思ってたわ。ノノってすごく落ち着いてるし」
そうなのかなぁ。でもリンリンにもそんな風に言われた覚えもあるけど。
「双子姉妹だねー。じゃあリリがお姉ちゃんで」
「えー? 私お姉ちゃんらしくできないよ?」
「私お姉ちゃん欲しいって思ってたんだー。リリお姉ちゃーん」
「う。何かノノに言われると悪い気がしないわ」
ならこれで姉妹結成だね。でもお喋りばかりもリリが退屈だろうし何か遊べるものないかなー。そうだ、トランプならあるからそれで遊ぼう。学習机の引き出しに入ってたからそれを出して持ってくる。
「ノノ、それは?」
「トランプだよー。これで色んな遊びが出来るからリリに教えてあげるね。最初はばば抜きをするね」
トランプの定番と言ったらこれ。リリもトランプ初心者だしいきなり複雑なのは辛いと思うし。カードを切って均等にカードを配っていく。半分をリリに渡して残りは自分の方。
ジョーカーは私の方に入れておいた。
「これで何をするの? 色んな数字が描いてあるみたいだけれど」
「うん。同じ数字の奴があったらそれを捨てていくんだよー。こんな感じに」
とりあえずダブってたカードを捨てたらリリも要領を分かってくれたみたい。それでダブりがなくなるまでカードを捨てて残りが少なくなった。
「これからどうするの?」
「交互をお互いのカードを引いていって先にカードがなくなった方の勝ちだよ。因みにこのカードだけは絶対にダブらないから持ってたら駄目なんだよ」
私がジョーカーのカードを見せたらリリが分かってくれた。それでここから真剣勝負。一枚ずつカードを引いていく。
一枚、また一枚と引かれてじわじわとカードが減っていく。それで土壇場でリリがジョーカーを引いてくれた。
「うわぁ! これ引いたら駄目な奴じゃん!」
リリが大袈裟に驚いてそれでカードの中に仕込んでる。残りは2枚だからどっちかが運命のカード。
「どっちかなー」
迷いながら引こうとする。でもリリの顔を見たらどっちがジョーカーか何となく分かる。うーん。ここは敢えてジョーカーを引いてあげよう。
「よし。よしよし!」
リリがすごく喜んでて何かそっちに癒される。それでリリが運命のカードを引いてあがった。
「やった! カードなくなった!」
「他にも色んな遊びがあるから教えてあげるねー」
それからリリと一緒にトランプ遊びをして過ごした。七並べ、神経衰弱、ブラックジャック、ダウト。私が好きなのは大富豪だけどこれはちょっとルールが複雑だし2人でするより大勢でした方が面白いから保留。後、トランプ遊びじゃないけどピラミッドを作るのも楽しいからリリに教えてあげた。
「ちょっと温かい飲み物淹れてくるね」
ずっと遊んでたからおもてなしをすっかり忘れてたよ。
「悪いわね。何でも大丈夫だから」
「うん。すぐ戻ってくるね」
部屋を出て階段を降りていく。こういう時は温かい牛乳がいいかな?
そう思って台所に行こうとしたらまだ電気が点いてた。それで話し声も聞こえてくる。お父さんとお母さん?
「あなた、本当によかったの? あの子、何か隠してる気がするんだけど」
「構わないさ。今まで碌に我侭も言わなかった野良が頼んで来たんだ。大丈夫、野良は間違った判断はしない。本当に何かあったら周りを頼れる子だよ」
「あなたは甘過ぎる気もするけど。でもこっちから深入りするのもアレよね」
やっぱりお父さんもお母さんも優しい。でもここで入るのも気まずいなぁ。もう少し様子を見てから入ろう、うん。
それで部屋に戻ったらリリが1人ですごく高いトランプタワーを作ってた。手がプルプル震えててすごく集中してる。そうっと2枚のカードを置こうとしたけどバランスが崩れてばさばさーって落ちていった。
「あー! 後ちょっとだったのに!」
「惜しかったねー。はい、牛乳」
「ありがと。ん、何か甘くて優しい味」
「これ一杯飲むと身長伸びるんだよー」
「へー。なら一杯飲まないとね」
毎日飲んでるけど効果があるかはあまり分からないけど。コルちゃん曰く、運動も大事って言ってたから多分そのせい。
「ノノ。今日は本当にありがとうね。私1人だったらきっと立ち直れなかっただろうし」
「ううん。リリが少しでも元気になってくれたら嬉しい」
そう言ったらリリが笑顔を見せてくれた。うん。やっぱり笑ってるリリはかわいい。
「それじゃあもう遅いし寝よっか」
「えっと、私はどこで寝たらいいのかな?」
「うん? 私のベッドでだけど」
「ノノと一緒に?」
そういえば寝床は考えてなかった。ていうか一緒に寝るって頭だったし、よくよく考えてみたらおかしいよね。リリの家だと結構大きいベッドだったしこんな狭いベッドに2人は窮屈過ぎるかもしれない。
「ごめん。考えてなかった。お母さんに聞いて布団が余ってないか聞いてくる」
「あっ、違うの! ただノノが私と一緒でもいいのかなって思って、その」
「私は全然いいよー。リリなら抱き付かれても気にしないよー」
そう言ったらリリが顔を真っ赤にして顔を抑えてる。うーん、変なこと言ったつもりはないんだけどなー。
「気になるなら端の方に寄るから」
「大丈夫、だいじょ、うぶ。へーきへーき」
「本当?」
「うん」
そうみたいだから消灯して仲良くベッドに潜った。何か誰かが隣にいるって変な気分。あ、手を動かしたらリリの手に当たった。リリの手って結構温かいんだね。リリもそわそわしてるのが何か分かるから手を握ってあげよう。
「ちょっ、ノノ」
「おやすみー」
今日はぐっすり眠れそう。こんなに心地いいのは初めて。




