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66 女子高生も騎士学校でお昼を過ごす

 お昼。今日は良い天気だから中庭でご飯を食べよう。リンリンとコルちゃんも誘ったら一緒に来てくれた。芝生の中にあるベンチに3人仲良く座る。今日はお弁当箱ともう1つ大きな袋を持って来てる。


「コルコ。この世で未発見の変異したフルーツを知ってるか? これなんだが」


 リンリンも大きめの袋を持ってきてて中にはモイモイの実が入ってた。私と同じ考えだったみたい。


「異世界の果物ですか?」


「速攻バレた!」


「リンさんの顔を見たら分かりました」


「マジか」


 今のリンリンは驚かしてやるぞーって雰囲気出てたから仕方ないね。

 私も袋からモイモイの実を取り出して見せてみる。


「昨日リンリンと一緒に異世界の果樹園で働いてもらったんだ。モイモイの実って言うんだよ。一緒に食べよー」


「ありがとうございます。リガーに続いてこれもまた変わった食材ですね」


 グルグルに巻いててバネみたいになってるもんね。先を引っ張ったら結構伸びる。


「リガーかぁ。あの時もお昼に食べたよね」


「はい。それでノラさんが手洗いに行ってる間に向こうに行ったんですよね」


 お昼休憩の短い間だったけど、そこでリリと出会えたんだよね。


「じゃあここで食べてる間に向こうに行ったりしてな」


 リンリンが言ってくる。じゃあ試しに2人の手を持ってみよう。多分何も起きないと思うけど。


 あれ、視界が?


「もしかして転移した?」


「かもな」


 見渡したら石造りの3階くらいある建物に四方囲まれてて、十字路の道の一角にあるベンチに私達が座ってる。ここはどこだろう?


 そう思ったら周りに人が歩いてるのが見えた。白い制服に黒のズボン。これは見たことがある格好。異世界の騎士学校かな?


「あれ、皆?」


 声がして振り返ったら丁度背中合わせになってたベンチの後ろでムツキが座ってた。膝の上には3段はありそうな大きな弁当を乗せてる。すごい。


「ムツキだー。こんー」


「久し振り」


「私達も丁度お昼なんだー。ムツキも一緒に食べよー」


「うん。そっち行くね」


 ムツキを歓迎してベンチに女子4人。私達の方は制服が違うからちょっと目立ってる気もするけど周囲の人は気にしてなさそう。


「それ、モイモイの実だよね。美味しいよね」


 丁度手に持ってたからムツキが教えてくれる。


「まだ食べたことないんだ。ムツキも食べる?」


「私はいいよ。皆で食べて」


「遠慮するなって。これ先の方まで大分長いし私らだけでも食べるのかなりキツそうだし」


 リンリンもフォローしてくれる。グルグル巻きになってるから小さく見えるけど真っ直ぐにしたら何mもありそう。お昼という短い時間で食べるのは難しいと思う。弁当もあるし。


「ん。それなら少しだけ」


「じゃあ切るねー。って私ナイフ持ってなかった。コルちゃーん」


「わ、わたしも持ってませんよ」


 前のリガーの反省が全然活かせれてないよ。そう思ってたらムツキが腰から果物ナイフみたいのを取り出して渡してくてた。


「これ使って」


「ありがとー」


「さすが騎士。準備がいいな」


 ナイフを借りたからコルちゃんにモイモイの実の先を持ってもらって真っ直ぐに伸ばす。

 切って汁が零れたら大変だから膝より前に出してナイフを入れたらスパッて切れた。

 すごい切れ味。


 モイモイの実の切れ目からはじんわりと紫色の汁が零れてるけどリガーよりは水気が少なそう。コルちゃんから切ったのを貰ってムツキに渡す。


「ありがとう」


「残りも切るよー」


 それで皆の分に切り分けた。それでもまだまだ先に残ってるけど、とりあえず実食しよう。


「それじゃあ頂きまーす」


 パクッと口に入れたら思ったより歯ごたえがある。シャキシャキはしないけど、煮込んだ大根みたいで絶妙に柔らかくて少しずつ溶けていく。そういえば体温が上がると溶けるから噛めば噛むほど溶けていくんだね。甘さも控えめでデザートというよりサラダとして一品にできそう。美味しい。


「美味しいですね」


「やっぱ異世界でも果物は果物だな。うまい」


 それで残りも食べたけどリンリンが持ってる分までは流石に食べれそうにないからお預け。

 これ以上食べたらお弁当が食べれないからね。


「にしてもムツキ、それ全部1人で食べる気か?」


 リンリンがムツキの巨大弁当箱を見て言ってる。リンリンも結構食べる方だけどそれでもムツキの弁当箱は大食い選手並の量はありそう。


「お腹減る、から。変かな」


「一杯食べるのはいいことだよー。それも全部自分で作ってるの?」


「うん」


 それを言ったらリンリンとコルちゃんがすごく驚いてる。なんなら私も驚いてる。


「自炊してるのですか。すごいですね」


「一杯食べようと思ったらこれがいいから」


「食堂とかはないのか?」


「あるよ。私は1度しか行ってないけど」


 やっぱり大きい学校だからそういうのもあるんだ。もし弁当忘れたらここの食堂で食べるのもいいかもしれない。


「毎日弁当作るのも大変じゃない? 私だったら毎日食堂通いになりそう」


「実は前に行った時にお腹一杯になるまで食べたら……その、破産して」


 ムツキが語気を弱くして言った。それを聞いて皆で「あー」って感じで納得する。

 ムツキの食事量でお腹一杯まで食べようと思ったら外食換算でも結構しそう。


「それでこのままだとダメって思って自分で作るようになった」


「わたしのお姉ちゃんも似たような理由でしたよ」


「やっぱお金は大事だよ。うん」


 お金が全てって思わないけど、でも色々と入用になるよね。こればっかりは仕方ない。


「ムツキのお弁当おいしそー。私とおかず交換しない?」


 彩り豊かな食材が色々詰まってて何と言うかカラフル。


「いいよ。好きなの取って」


 そう言われたから黄色くて薄くスライスされたのを貰って食べてみる。コリコリした食感で口の中に肉汁みたいのが溢れてくる。これ、ご飯が進むやつだ。ちょっとだけ辛いのは調味料かな?


「おいしー。ムツキも私の取っていいよー」


「ありがとう。この白いのは? 皆も入ってる」


 ムツキがご飯をマジマジと見てる。そういえばムツキの弁当にはご飯は入ってない。

 これは意外な違いかも。


「お米だよー。どんなおかずにも合う万能料理!」


「すごい。もらっていい?」


 それでムツキがご飯を食べると不思議そうな顔をして美味しいって言ってくれた。お米は日本の誇りだからねー。


「こっちの卵焼きもお母さんの自慢の一品だよー」


「おい、ノラノラずるいぞ! 私もムツキの食べたいぞ!」


「私も気になります!」


 気付いたらムツキの周りに皆で集まって食べる感じになった。こんなに楽しいおかず交換は初めてかも。

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