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52 女子高生もスライムを調理する

「今日も暑いねー」


「ですね」


 夏休みも半分くらい過ぎて、今日はコルちゃんが遊びに来てくれてる。

 リンリンも誘ったけど家の畑仕事のお手伝いで来れないみたい。


「いつも来てもらってばかりでごめんね。コルちゃんの所からだと大分時間もかかるし、お金もかかるよね」


「お金に関しては大丈夫ですよ。学校で補習や部活動が行われているのでバスが走ってますから定期券が使えますし、それにノラさんの家に来るのは好きですから」


 そう言ってくれると嬉しいなぁ。でも来てもらうばかりは悪いし今度は私から遊びに行こう。コルちゃんの家は都会にあるらしいし、きっと私の知らない遊ぶ所もたくさんあると思うし。


「ありがとう。そういえば最近ヒカリさんはどうしてる?」


「お姉ちゃんならバイトがあるって言って結構前に家を出て行ってますね」


「そっかー。皆働いてて偉いなぁ」


 異世界でも今頃レティちゃんやフランちゃんも忙しくしてるんだろうなぁ。


「お姉ちゃんはまた帰って来るからって言ってましたから、夏休みが終わるまでにはもう一度会えると思いますよ」


「それは嬉しいかも。また皆でどこか行きたいね」


「そうですね」


 特に何かするわけでもなくコルちゃんとお喋りして時間だけが過ぎていく。私の部屋って何も遊ぶものないんだよね。うーん、これならリンリンからゲーム機でも借りておくんだった。


「あれ、ノラさん。スライム増えてません?」


 およよ、本当だ。この前リンリンにあげたばかりな気がするのにもう分裂したのかぁ。

 相変わらずゆっくりクルクル回転してる。


「コルちゃん欲しい?」


「お気持ちは嬉しいのですが家でペット飼えないものですから」


 そっか。だから前も断ったんだね。でもそうなると困ったなぁ。2匹以上になるとこれからも倍々に増えるし片方はなんとかしないと。でも川に放流したら大変だろうし。うーん。


「そうだ。確かスライムって食べられるよね。何とか調理できないかな?」


「牧場にいたトカゲさんはそのままでも食べられるって言ってましたね」


 そういえば新鮮なスライムもツルツルで美味しかったなぁ。


「じゃあ今から一緒に調理してみない?」


「スライムを料理とは一生経験できなさそうですし、勿論構いませんよ」


 そうと決まったら分裂したスライムさんには悪いけど食糧になってもらおう。間違ってもすら吉を持っていったらダメ。瑠璃がちょっとかじってあるから直ぐに分かるけど。


 後はバケツに水を入れてビニールの手袋をしながらスライムさんを水の中に移していざ台所へ!


「お母さーん、台所使うよー」


「何かするのー?」


 遠くからお母さんの声が聞こえる。


「スライム料理作るー」


「好きにしなさいー」


「ありがとー」


 許可が下りたことでスライムさんを机に置く。


「何作ろう?」


「その前にスライムを取り出しては蒸発してしまうのではありませんか?」


 いきなり問題発生。そういえばこっちだと水から離れるとスライムさんは溶けちゃうんだった!


「まな板を水で濡らしたらいけないかな?」


「端の方だけ少し斬って試してみましょう」


 まな板を水でサッと洗って水溜りが出来るくらい水を残しておく。後は包丁でスライムさんを切るんだけど、バケツの上でするのはちょっと怖い。


「わたしが切りましょうか?」


「お願いー」


 コルちゃんはビニールの手袋をしてスライムさんを手で抑えて包丁を縦にして鮮やかに切った。おぉ、上手!

 切れたスライムさんの破片は水の上に落ちてそれをコルちゃんが手にしてすぐにまな板に置いた。


「コルちゃんも料理上手だね」


「お姉ちゃんに半ば強制付き合わされたものですから……」


 遠い目になってるけど大丈夫? 


 まな板に乗ってるスライムさんの断片は今の所溶ける様子はなさそう。体積が減ったら水の量も少なくて大丈夫なのかな?


「ここからだね。どんな風にする?」


「見た目的にはゼリーですよね」


「そうだねー。暑いしちょっと冷やして食べれるゼリーにしよっか。果物も入れたら美味しくなるんじゃない?」


 冷蔵庫を覗いたらバナナとスイカとさくらんぼが入ってた。流石にバナナとスイカは合わなさそう? 後は棚に置いてあるフルーツの缶詰も使えるかな。


「さくらんぼと缶詰良さそう。お母さんに使っていいか聞いてくるね」


「はい」


 それで聞いたらなんなく了解を貰えたからさくらんぼを中に入れる。でもそれだけだと寂しいなぁ。


「そうだ。買って来たリガーがあるからそれ入れてみよう」


 瑠璃のご飯用に買い込んである。暑くなってきて今は冷蔵庫に保管してあるから冷たくてきっと美味しくなるはず。


 後はゼリーの作り方をスマホで調べてそれを真似して作ってみる。水と砂糖とゼラチンがあったら簡単に作れるみたい。これなら私でも頑張ったらいけそう。


「スライムは一口サイズに切るのが良さそうですね」


「そうだねー。ナタデココみたいでいいかも」


 そんな感じで準備はサクサク進む。やっぱり隣で誰かいると捗るなー。私1人だとノロノロ作りそうだし。カップは私とコルちゃんと、後リンリンの分とお母さんとお父さんの分も用意して、後は缶詰を開けてさくらんぼとリガーを加えるだけ。

 コルちゃんがスライムさんを切ってくれてるから私はリガーを切ろう。


 そうっと切ったつもりなのにリガーの汁が盛大に噴射して顔面に飛んできたよ。


「ノ、ノラさん大丈夫ですか!?」


 そういえば汁が豊富に入ってるのを忘れてたよ。服は汚れなかったのが不幸中の幸いかも。とりあえず顔を洗ってタオルで拭いて気を取り直す。


「うーん。これだとゼリーの具は難しいかも?」


 殆ど汁で実がない。


「それならいっそリガー味のゼリーにするのはどうでしょう?」


「おぉ、それいいね。じゃあボウルにリガーの汁をいれるね」


 これだと1つじゃあ足りないから追加で2個用意してリガーの汁をボウルに満たした。

 後はゼリーを作る用量で手順を守って最後は冷やすだけ!


「うーん。余ったね」


「そうですね……」


 缶詰とさくらんぼは使い切ったけど、肝心のスライムさんはまだまだ大きくてほんの端っこがなくなっただけ。


「そうだ。そのままでも食べられるし、柴助や皆にあげよう」


「では一口大程度の大きさに切り分けますね」


「私は猫丸やこん子用に小さめサイズを切るね」


 ゼリーを冷やしてる間にせっせと切り分けるとお皿の上に山盛りの巨大なわらび餅みたいな何かが出来上がった。こうして見ると中々圧巻。

 面白いからスマホで撮っておこう。


 それでスライムわらびも一緒に冷やして数時間後に冷蔵庫を開けると完璧なゼリーが出来てた。リガーの薄くオレンジ色がゼリーになってて、色とりどりの果物とスライムの透明な切れ端がいい感じ。これも撮っておこう。


「それじゃあ縁側で皆で食べよー」


「はい」


 スライム盛りを持って縁側に行くとそこには我が家のモフモフ達が一望できる。皆連日の暑さで参ってて今も日陰で休んでた。私が手に持ってる物を知ると皆が一斉に目を向けて瑠璃だけが一目散に飛んでくる。


「瑠璃ー。お手付きは駄目だよー。皆と一緒にねー」


「ぴー」


「ほらほらー。皆おいでー。美味しいスライムだよー」


 私の合図と共にモフモフ達がのそのそと重い腰を上げて寄って来てくれてる。柴助は相変わらず尻尾をブンブン振ってるし、たぬ坊は興味深そうにスライム盛りを見てる。こん子もちょっと柱に隠れながらこっちをジーッと見てて、ミー美は長い首を廊下に覗かせてる。猫丸は相変わらず廊下でひっくり返ってる。大丈夫?


「まるで調教師ですね」


「私が?」


「はい。ノラさんの一声で来たものですから」


「皆大事な家族だよ。主従関係じゃないよー」


「ふふ、そうですね」


 瑠璃が早く早くと言わんばかりに寄ってくるからスライム盛りから1つ取ってあげると嬉しそうに頬張った。


「コルちゃんも皆にあげてねー。皆いい子だから」


「ではお言葉に甘えさせてもらって」


 コルちゃんがそうっとたぬ坊に一口スライムを挙げるとモッモッと食べてた。かなり食いつきはいい。それを見てこん子も飛び出して、コルちゃんは落ち着いてあげてる。

 私も柴助にあげると嬉しそうに食べて、ミー美は大きいから本当に一口で食べちゃう。

 ほんのり冷たいおかげか本当に皆美味しそうに食べてる。


「猫丸ー。来ないとなくなっちゃうよー」


 そう言ったら猫丸も重い腰をあげて伸びをしてからノシノシと歩いて来た。小さいサイズのをあげると咥えてそれを頑張って食べてる。よしよし。


 そんな感じで皆にあげてたらあんなにあったスライム盛りは一瞬でなくなっちゃった。ミー美よりも瑠璃の方が食べてたのは意外だけど。寧ろミー美が遠慮して、瑠璃が遠慮知らずなだけかもしれないけど。


「私達も食べよっか」


「はい」


 スプーンを差し込んでゼリーを一口食べる。おぉ、ちゃんとリガー味になってる!

 それにスライムの甘さと砂糖の甘さが相乗して別の甘さになってる!

 沢山入れたフルーツも美味しー。


「甘くて美味しいね」


「リガーがいい味を出してると思います。すごく食べやすいです」


「だねー。異世界の食材に感謝だよー」


「そういえば今更ですが調理中に転移というのはなかったですね」


「あー。でも多分大丈夫だよ。なんか仏様も結構空気読んでくれて夜とか食事中はしてこないから」


 この前は暑くて逃げようとして魂胆見抜かれた気がしたけど。


「その内ノラさんの思う通りに行き来できるようになれば便利でしょうね」


「うん。でも今はこのままでいいかなー。いつでも行けるって結構行かなくならない?」


「有名な食べ物屋でも地元だとそこまで足を運ばないですよね」


「分かる。この辺はそんなにお店ないんだけどね」


 そんな感じでダラダラお喋りしてモフモフ達と遊んでたら1日はあっという間に過ぎるんだよね。

お詫びと懺悔。


修正作業中にリガーは野菜という文を目にした為、罪の告白をここにします。

前話でリガーは樹木から出来ているような描写になっていますが、本来野菜は土から根を張ってできる物の総称です。木から実るのは果物です。

そういえばイチゴやスイカは分類的には野菜ですが果物という扱いだそうです。ならばリガーはその逆バージョンとすれば……! ダメだこりゃ。

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― 新着の感想 ―
[一言] >お詫びと懺悔。 トマトやナスは果実ですが野菜扱いなので、リガーも野菜で。
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