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45 女子高生も生誕祭を堪能する(夜)

 色々見て回ってると気付いたら空が群青色になって暗くなってる。もう夜なんだ。

 ほぼ1日いたけど向こうに戻る様子はなさそう。仏様も今日は遊んでいいって言ってくれてるのかな。


 城門の上にあるベンチにリンリンとコルちゃん、ヒカリさんと座って瑠璃が城壁ぎりぎりの所に座ってる。街の雰囲気も昼間と変わって壁に描かれた文字が光ってる。それがあちこちにあるからイルミネーションみたいですごく綺麗。


「いいの一杯撮れたわ~。ノラちゃん今日は本当にありがとうね」


 ヒカリさんがしみじみとお礼を言ってくれた。


「私も皆と一緒で楽しかったよ。ありがとう」


 生誕祭も十分に楽しんだし心残りはないかな?


「ノノやっと見つけたぁ!」


「……走りっぱなし」


 階段をいそいそと駆け上がってリリとムツキがやって来た。


「リリとムツキだー。こんばんはー」


「こんばんはー、じゃないでしょ! こっちはずっとノノを探してたのに!」


「……そう言いながら出店に目が眩んでた」


「ム、ムツキだってあれこれ食べてたわ!」


 2人は一緒に回ってたんだねー。それで私の前にまで寄って来て手を引っ張ってくる。


「さぁノラ行くわよ! 生誕祭はまだまだこれからなんだから!」


 リリが威勢よく声をあげてムツキも同意するみたいに頷いてる。


「ノラノラはモテモテだなー。行って来てあげたら?」


「んー? 皆も一緒じゃないの?」


「ノラさんとは沢山見れましたからね。こちらはお構いなく」


 リンリンとコルちゃんが言ってくれる。もしかして気を使ってくれてるのかな。

 ヒカリさんを見ると手を振ってくれる。楽しんで来いって言ってるのがよく分かる。


「ありがとう。じゃあ行って来るね」


「私達はここに居るから」


「分かったー。そうだ、もしもの時の為にこれを渡しておくね」


 リリが貸してくれてる呼子笛をリンリンに渡した。何かあったら連絡代わりになると思う。


「サンキュ。行ってらー」


「また後でね」


 皆と一旦別れてリリとムツキと並んで階段を下りて行く。瑠璃も来るみたいで私の肩に乗った。


「何か気を使ってもらって悪いわね」


「ううん。多分皆も疲れてるんじゃないかな?」


 朝から殆ど歩きっぱなしだったし休みたかったのが本音だと思う。多分。


「……ノラは平気?」


「うーん。結構きてるかなー」


 元々体育系じゃないし。するとムツキが腰を下ろして両手を差し出してくる。


「お姫様抱っこは大丈夫だよー」


 普通に街中でされるのは恥ずかしい。ムツキは残念そうに手を引いた。代わりに瑠璃を渡してあげると両手で抱えてくれた。


「だったらアレを見に行かない?」


「いいと思う」


「アレ?」


 聞いてみたけど2人共笑うだけで教えてくれなかった。

 街の通りを歩いてると日中に比べて人の数はかなり減ったけどそれでもまだまだ普段よりは多い。出店の多くも料理が尽きて畳んでる所もある。


「おー。地面が光ってる!」


 地面からシャボン玉みたいな丸い粒粒の光が出ては消えていく。色も豊富で綺麗。何となく指で突いてみたら消えちゃう。


「本当に魔法文化は偉大だねー」


「ノノの地元には魔法がないの?」


「うん。誰もこんな風に魔法を使えないよ」


「そっか。だったら尚更これから見るのは楽しんでくれると思う」


 結局それが何かまでは教えてくれなかったけど。


 それで連れられたのは近くの建物の屋上だった。丁度無人みたいで静寂に包まれてる。

 見た感じ何もなさそうだけど。


「生誕祭は料理が有名だけど、一番の名物は魔導砲ね」


 リリが話しながら袋から串焼きみたいのを取り出して渡してくれる。青い尻尾みたいのがこんがり焼けて刺されてる。白、赤、青の三種のソースが付いてて良い匂いがする。


「魔導砲?」


「……見たら分かるよ」


 リリとムツキが一番前の柵に寄りかかって話す。私も隣に立って尻尾の串焼きを頬張る。カリカリでソースも良い感じ。


 それで暫く待ってると街中の光がどんどん消えていった。一瞬何かあったと思って驚いたけどリリもムツキが動じてないから平然と振舞っておこう。

 魔法の光が全部消えると街が暗闇に包まれる。


 そんな時、北の方角が真っ白に輝いた。その後に天高くに伸びていく白い光の柱が昇って行く。まるで砲弾のように天を貫いて、ずっと果てまで飛んでいった。空の向こうが宇宙なのか分からないけど、光は彼方遠くまで飛ばされて消えた。


 本当に一瞬の出来事で目も心も奪われて、この世の神秘を見た気がする。すごく美しかった。


「今年は結構良い所まで行けたんじゃない?」


「……うん。過去最高だと思う」


 2人が会話してると街中に光が戻り始める。


「今のが魔導砲?」


「そ。お城の方に行くと光を飛ばす魔導具があるの。毎年大勢の人がその魔導具に自分の魔力を注ぎ込むのよ」


「街の人は勿論、外から来た人も魔力を注ぐ。その量に応じて光が遠くに飛ぶ」


 そんな素敵な大イベントもあったんだね。本当に生誕祭は奥が深い。私も参加したかったけど、そもそも魔力がないから意味ないのかな。


「あの光に自分の思いも乗せて願いを込めるの。それが将来成功する為だったり、商売繁盛だったり、恋愛成就だったり、豊作祈願だったりね」


「皆の願いを1つにして神様に届けたら叶うって言われてる」


 天球塔の魔導具といいこの街って結構ロマンチックに溢れてると思う。でもそれがいい。


「魔法って、本当に素敵だね。来年は皆と一緒に私も願いを込めたいな」


「あれ。私の願いもう叶っちゃった」


「奇遇。私も」


「んー? どういう意味?」


「「内緒」」


 2人が唇に人差し指を当てて笑ってる。

 来年もこうして皆で一緒に居られるといいな。笑って美味しい物食べて、それが何よりの幸せ。

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