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30 女子高生も幼馴染と釣りをする

 今日は日曜日。特に用事もなくて暇だから縁側の廊下で猫丸とネコじゃらしで遊んでる。

 でも、猫丸はぐーたらだから寝転がったまま手を動かすだけ。チョロチョロ動かしても反応もなくなっていく。無気力かー。


 なんなとなくポケットからちゅ~るを取り出してみる。すると急に起き上がって私の前に座った。正直でよろしい。


 封を切ってあげるとペロペロと舐めてくる。相変わらずの食いつき。何回あげても飽きないのが不思議。軽く平らげてしまうと満足して毛づくろいを始めてる。


「おーい、ノラノラいるかー!」


 庭の外からリンリンの声がした。そっちを向くと長袖長ズボンに黒い帽子を被って、手にはバトンみたいな棒状の物を持って振ってる。背中には網を背負ってて首からは弁当箱みたいのも下げてて、もう片手にはクーラーボックスも下げてた。


 サンダルを履いて歩きながら手を挙げて挨拶代わり。


「おはよー。お出かけ?」


「うん。ちょっと釣りに行こうと思ってね。一緒にどう?」


 なるほどー、その大荷物はそのせいかー。


「いいよー。丁度暇だったから」


「よし。そのままで大丈夫?」


 リンリンが私の格好を見て言った。ノースリーブにスカートだったから気にしてくれてるみたい。


「んー。日焼け止め塗って、帽子被ってくるね」


 家に帰って準備を済ませて戻ると柴助に瑠璃、ミー美も行きたそうに寄って来た。とりあえず頭を撫でてあげる。


「相変わらず好かれてんなー」


「今日のお散歩もまだだからかな」


「ならついでに行くか?」


「ありがとー」


 玄関からリードを用意して柴助とミー美を繋ぐ。瑠璃は賢いから放っておいても大丈夫。

 柴助とミー美も大人しいから放しても問題ないんだけどね。


 家から出て右手で柴助のリードを、左手でミー美のリードを握って歩く。瑠璃はミー美の背中に乗って楽してる。


「リンリンって釣具持ってたんだねー」


「いや、これ殆どレンタルだよ。休みの日とか暇な時に借りてちょっと遊びに出かけんの。レンタルだけなら格安で借り出せるからオススメ」


 へー、釣具って高いイメージあるからそれは豆知識だなー。


「どこで釣りするの?」


「んー、今の所は堤防沿いの川で釣る予定」


「おぉ、いいね」


 堤防だったら散歩にも適してるし、ここから歩きでも30分はかかるから散歩にぴったり。


 住宅街を逸れて歩いて行くと田んぼが広がる所がある。今は花が見えて緑色が綺麗に映ってる。洒落てる農家さんは田んぼアートとかして、毎年干支にちなんだ動物を描いてる。


 この田んぼをまっすぐ進むと丁度田んぼを挟んで踏み切りがある。1時間に一回来るかどうかの電車だから普通に渡れる。ここを抜けるとまた田んぼが広がるけど、ここを進み続けると堤防に上がる石段がある。


 リンリンを先頭にあがるとちょっと高い位置に来る。ここに上ると田んぼアートもしっかりと見えて、今年は座った丑の絵が描かれてる。


「さてと。川へ下りるか」


「うん」


 堤防の前にはゆるやかな流れの川がある。今日は水も少なくて川辺の方まで下りられそう。石段を降りてごつごつした石の多い所まで来る。周りに人はいない。時々キャンプに来てる人や釣りに来る人はいるけど今日はいないみたい。


 誰もいないから柴助のリードを外して自由にしてあげる。2匹は楽しそうに走って瑠璃も仲良く飛んで行った。


「サクッと準備するか」


 リンリンがバトンみたいなののキャップを外すと中から更に棒状の物が伸びて4m近くは長くなった。先っぽだけ赤い糸みたいになってて、リンリンは一旦竿を置いて先を別の糸で結んだ。


 それで弁当箱を開けると中には土が詰められててミミズが沢山入ってた。

 なるほど、昨日の農作業で集めたんだ。糸の先にある針にミミズを刺すと竿を持ってゆるりと糸を垂らした。


 作業を見ながら近くに良い感じの高さの岩があったからそこに座る。


「それで最近調子はどうなん?」


「私? いつも通り元気だよー」


「向こうはどんな感じ?」


「昨日フランちゃんと会ってマフラーくれたよ。この前ミー美に乗って出かけたでしょ? そのお礼って」


 今度お出かけがあったら是非とも見せたいな。


「あー。確かにあれは良かったなぁ。こっちだと車とか人工物多いけど、あっちの街道って本当に自然って感じがするよな」


「ここも似たようなものじゃない?」


「それは言えてるな」


 電車や軽トラが走ってるけど、それでも都会に比べたら全然自然が多い。学校も山の中だし。ザ、田舎って感じ。


 ミー美は川の水を飲んで、柴助は適当に走り回って、瑠璃は川の中の魚を興味深そうに飛んで眺めてる。平和だねー。


「リンリンは都会で暮らしたい?」


「興味がないって言ったら嘘になるな。あっちはあっちで楽しそうじゃん」


「都会で暮らしたら毎日賑やかだろうねー」


「ノラノラは毎日都会に行ってるじゃん」


 確かに異世界の街も都会になるのかな?

 そんな他愛のない話をしてると竿の先の糸が激しく揺れた。


「お、早速かかったぞ」


 リンリンは手慣れた手付きで竿を上げて糸をこっちに持ってくる。先っぽには小さな細身の魚が食いついてた。


「ウグイだな」


 一口サイズで揚げたら美味しい魚。


 リンリンがウグイを手に持つと我がモフモフ達がいそいそと駆け寄ってきた。リンリンの周りに群がってウグイを欲しそうにねだってる。


「うおーい。これはそのまま食べたら駄目だぞ!」


 川魚には寄生虫が宿ってるから生で食べるのは絶対に駄目って聞いたことある。

 私が皆をモフモフして抱きしめてあげると満足して離れて行く。


 そのままリンリンがウグイをクーラーボックスの中に入れた。


「ノラノラもやるか?」


「いいの?」


「せっかくだしな」


 リンリンが竿を渡してくれて持ってみる。見た目よりすごく軽い。

 リンリンがミミズを刺してくれて、それで糸を持ち上げる感じで川の方へ運ぶ。


「そうそう。適当に垂らしたらいいよ」


 糸を投げるつもりで竿を振ったけど、手前の川にチャプンと糸が垂れる。私としてはもっと奥へ投げたかったんだけど。


「あの異世界もこの宇宙のどこかにあるのかねー?」


「案外この星だったりして」


 この世界の事象について科学的に証明できてるのはまだ1%くらいってTVで見た。

 だからあの異世界とも本当は物凄く近くで繋がっていても不思議じゃないと思う。


「異世界とこっちが行き来できたらそれはそれで大変そうだ」


「科学と魔法かぁ。どっちかが廃れそう」


「科学が廃れる世界ってちょっと想像できないな」


 そんな会話をしてると竿が急に重くなった。ちょっと引っ張られる感じだけど握ったら何とか抑えられる。


「お、かかったのか。持ち上げてみー」


 リンリンに言われた通りに竿を上げると糸の先に長いうねうねした長い魚が食いついてた。

 上手く糸を引っ張れなくて後ろに下がって魚を川辺に持ってくる。

 リンリンがそれを素早くキャッチしてくれた。


「うぉっ! ウナギじゃん!」


「おぉ。大物ゲット?」


「ノラノラは幸運の神様でもついてるのか?」


「仏様かなー」


 これもお参りの効果なのかな?


「記念だし写真撮る?」


「お願いー」


 糸を掴んでウナギを持ってリンリンにスマホで撮ってもらう。シャッターを切る直前に瑠璃が乱入して変になったけどそれも記念かもしれない。


「じゃこのウナギは帰ったら渡すから」


 リンリンがクーラーボックスに入れて言う。


「せっかくだしお昼に一緒に食べようよ」


「え、いいの?」


「うん。リンリンが誘ってくれなかったら取れなかったでしょ?」


「うおぉ。これは確かに仏の化身だわ」


 それからのんびりと釣りをしながらお喋りして過ごした。途中にミー美が川に入って止めるのに大変だったけど。

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