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26 女子高生も魔法使いと騎士を連れる

 今日も異世界に来てミー美のお散歩。時間がないから頑張って早起きして来た。

 瑠璃とミー美を連れて街中を歩いてるけど、前に来たよりも周囲の人の警戒は薄い。


 ミー美を弁明してくれたっていうのもあるけど、今日はミー美に馬用のリードを付けてるのもあるかも。わざわざ通販で買った甲斐あった。

 おかげでミー美は口の回りを固定されてる。ちょっと窮屈だろうけど、街中を歩く間は我慢してもらおう。


 街の外に向かおうと思ったけど考えが止まる。せっかくこっちに来てるのに1人っていうのは寂しい。でも知り合いは殆どお店あるしなぁ。


 あ、そうだ。リリから貰った呼子笛を使って連絡してみよう。早速ポケットから取り出して吹いてみる。ピューイって変わった音がすると空から一羽の白い鳩が下りてきてミー美の背中に乗った。足には赤いリボンと紙が括られてた。


 リボンを外して紙を取るけどよく考えたらペン持ってない。というかそもそもこっちの文字を知らないから伝えられないよ。うーん、困ったなぁ。


 ふと街の外に繋がる門に目が行く。そうだ、紙を折って門の形を作ろう。折り目も工夫すれば伝わる?


 いざ折ってみたけど明らかに不格好な何かが出来上がる。正直、門って言われなかったら分からないかもしれない。うーん、どうしよう。何か特徴があればなぁ。


 もう一度門を見てみる。すると上の方に太陽みたいな丸い形の紋様があった。あれ使えるかな?


「瑠璃。あの形に焦げ目付けれる?」


「ピー」


 私が言うと瑠璃はすごく弱火で軽く炙ってくれた。ちょっと燃え過ぎたけど、一応丸い太陽っぽい形にはなってる。

 このまま白い鳩さんに括るとそのままバサバサって飛んで行った。リリならきっと大丈夫。


「リリが来るまで待ってよっか」


「ぴー」


「ミー」


 太陽の門の前に来たけど、どこか休める所ないかな。外壁に上がったらベンチがあるけどそこだとリリが気付かないかもしれないし。


 そんな時、門の方で青い髪の子がストレッチしてる姿が目に入る。白いコートに黒のズボン。見覚えがあるなぁ。


「ムツキー」


 少し遠いけど声を上げたら振り返ってくれた。ムツキは右手を胸に置いて軽くお辞儀する。騎士の挨拶かな?


「また会えたねー」


「ノラ。それは、従魔?」


「ううん。私の家族だよ。この子はミー美」


「ミー」


 ミー美が塞がれた口から小さく声を上げた。ムツキは少し驚いてたけど平静になる。騎士だから冷静沈着なのかな。


「ムツキはお仕事?」


 ムツキの背中にはリュックと弓、腰には剣と矢筒がある。見るからに戦いに赴く意気込みを感じる。


「森の巡回。魔物がいたら討伐する」


「1人だと危なくない?」


「……いつも1人だから」


 それを聞いては黙っていられないよね。


「ムツキ。私も一緒に行ってもいい? 後もう1人友人も来てくれるんだけど」


「え、その。ノラが?」


「うん。駄目かな」


「駄目、じゃないけど」


 何か言いたそうに視線を泳がせてる。ムツキの肩を叩いて近く寄ってみる。


「友達だから遠慮しなくていいんだよ?」


「ノラは……」


「うん」


「お姫様?」


「うん?」


 お姫様? 私が? どういうことだろう。ちょっと頭の整理が追いつかない。


「こんな私に優しくして、物腰も穏やかだし、落ち着いてるし、凄い従魔連れてるし。ノラはお姫様だよね?」


「違うけど。普通の女子高生だよ?」


「そ、そっか。私の勘違い……。恥ずかしい……」


 ムツキが顔を赤くして隠すように後ろを向いちゃう。もしかしてお姫様だと思ったから一緒は駄目って言いたかったのかな?


「ノノー!」


 そんな間に街の方から全力疾走してくるリリの姿があった。手を振ってたから振り返す。


「ぜぇぜぇ。ノノ! あの怪文書は何!? おかげで走り回る羽目になったよ!」


「ごめんね。ペンがなかったから」


「太陽の紋様があったからここだと思ったけど正解で良かった」


 うん、さすがはリリだね。ありがとうの意味を込めて手をぎゅーって握るとリリが顔を赤くする。んー、走り疲れてるみたい。悪いことしたなぁ。


「それでまた新しい従魔?」


「うん。ミー美だよ。それに友達も紹介するね。騎士学校の生徒のムツキだよー」


「ムツキ・レインティ、です」


「リリアンナ・リリルよ。宜しくね」


「は、はい」


 2人が軽い握手をして挨拶をしてる。とりあえず仲良くできそうで良かった。


「それで急に呼び出してどこかへ行くつもり?」


「うん。ムツキが森へ行くそうだから一緒にどうかなって」


「森かぁ。深く潜るの?」


 リリの問いにムツキが小さく頷く。


「なら魔物を倒して小遣い稼ぎもできるね。ノノとも一緒だし一石二鳥!」


 ご機嫌になってくれたからリリも連れて早速出発。街を出たらミー美のリードも外して自由にしてあげる。今回はゆっくりな巡回だから乗る必要もないし、好きに遊ばせておこう。

 でもミー美は大人しいから傍を離れないんだけど。瑠璃は飛んだりして遊んでるのにすごい差。


「ムツキは剣と弓で戦うの?」


「武器は大体扱える。弓が安全だからそれが多い」


 ということは槍とか斧、薙刀とかも使えたりするのかな。


「芸達者ねぇ。騎士学校だと武器の扱いを学ぶの?」


「はい。森や洞窟、市街を想定しての訓練。武器がない時の訓練もする」


 本格的だ。まるで自衛隊みたい。だからあの時木刀を取るのに身軽に動いて跳べたんだ。


「でも実戦だと魔法の方が遥かに優れてると思う。騎士は武器で戦うから大抵は一撃で仕留められない」


「そんなことないよ。魔法使いだって体内の魔力が枯渇すると何もできないし、それに魔物を掃討してるのは騎士団の活躍のおかげじゃない。基礎体力が違うから魔法使いだと遠征も難しいのよね」


「いえいえ。強敵との戦いでは攻撃魔法を扱える人は必須ですから」


「いやいや。魔法使いが安全に攻撃できるのは前で盾になってくれる人がいるからでしょ?」


 何だか日本人の物腰になってるからつい笑っちゃう。学ぶ分野が違っても人間性に違いはないよね。


「ちょっとノノー。何外野から笑ってるのよー。ていうかノノは戦えるの?」


「うーん。無理。ごめんね」


 平和そのものの国で育ったから。最近は体育もサボリ気味だったし。


「やっぱりお姫様……」


「えぇ! ノノってお姫様なの!」


「リリ。私は学生だよー」


「でもでもフェルラ大先生とも知り合いだったし普通にあり得そうで。はい」


 最近どんどん尾ひれが付いてる気がするなぁ。私じゃなくて瑠璃やミー美がすごくて、転移の力も仏様の力だし。


 そんな感じで森の中を探索してるとムツキが弓を構えて私達に向かって手を突き出した。


「待って。魔物いる」


「え、どこ?」


 リリが尋ねるも分からない。私もムツキの視線を追うけど全然分からない。

 魔物っていうなら生物だろうし、どこだろう? 木の穴、枝先、色々探したけど見えない。


 するとムツキが矢を1本抜き取って弓を構えた。手を離すと綺麗に真っ直ぐ飛んでいく。

 矢は木のど真ん中に命中した。


「えっと。ムツキ?」


「離れて。多分動く」


「え?」


 リリが動揺してる間に矢が刺さった木から急に不気味な声があがった。樹木の穴と思った所が口のように動いて、根が足のように、枝が手のように動いてる。


「まさかトレント!?」


「トレント?」


 よく分からなかったら聞いてみる。


「見ての通り動く木の魔物! 木に擬態して襲って来るの」


「街の近くに来てるなんて危ない。倒す」


「オッケー。軽く火炙りにする?」


「駄目。他の木に燃え移ったら危険。火気厳禁」


「マジかぁ。確かトレントも他の木と同じで養分を吸って戦うのよね」


「うん。枝を全部落としたら倒れると思う」


 なんだか熟練の会話をしてるよ。私にはまるでついていけないし、そもそも足手まとい?


「えっと、私はどうしたらいい?」


「「そこで見てて!」」


 うーん。やっぱりお姫様かもしれない。


 それからリリとムツキの戦いはすごかった。リリは風を起こしてトレントの葉を飛ばして、ムツキは他の木に飛び移って剣でトレントの枝を切り落としていった。


 5分もしたら枯れ木が一本出来上がって動かなくなった。


「あなたやるわね」


「リリルも」


 2人がハイタッチしてる。私もその中に入りたかったなぁ。

 ぼうっと眺めてるとトレントが微妙に動いてる木がする。根が這いずってる。

 どっちも気付いてないよ!


「ミー美! 瑠璃!」


「ぴー!」


「ミー!」


 私の意図を瞬時に理解してくれてミー美が2人を背中に乗せて安全な所に移動してくれる。

 瑠璃はトレントの方に飛んで熱線を吐いて大きな空洞を作った。するとトレントは雄叫びと共に今度こそ動かなくなった。


「ノノ、ありがとう。全然気付かなかった」


「私も油断してた。ありがとう」


 黙って抱きしめる。本当に無事でよかった。


「ノノ?」


「ノラ?」


「今日はもう帰ろう。魔物は危ないと思う」


 あと一歩遅れてたら大事な友達を失う所だった。死んだら二度と会えなくなる。そんなの絶対に嫌。

 私は仲良くお喋りしてるだけでいい。


 するとリリとムツキが私の頭を撫でてくれる。


「分かった。ノノがそういうなら」


「心配かけてごめん。帰ろう」


「うん。ありがとう」


 それからすぐに街に帰った。その時も色々話してたけどよく覚えてない。

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