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21 女子高生も友人とまったり過ごす

「今日も1日終わったねー」


 放課後になって教科書を鞄に片付ける。

 瑠璃は疲れて鞄の中で寝てる。


「この後も異世界ですか?」


「仏様のきまぐれ次第だねー」


「最近ノラさんが異世界に行くのでわたしもファンタジー世界について勉強してるんですよ」


 コルちゃんは鞄から一冊の小説を取り出して私の机に置いた。可愛い女の子が表紙に映って後ろには獣の人や耳の尖った女性も描かれてた。

 あ、これ私も読んだことある。


「エルフやドワーフが出てくる奴だねー」


「はい。魔法の見解も面白いんですよ。まだ半分ほどしか読んでませんが主人公も良いんですよね」


 んー、でも確かこれって途中から急にダークファンタジー化したような?

 表紙からは想像もできない急展開が始まって驚いた記憶がある。それは言わないでおこう。


「私のオススメはドラゴン管理区域って小説だよー。現実で竜を飼育するとどうなるかって話なんだけど、現実のルールと板ばさみになる主人公の苦悩があるんだけど、文体がコミカルなおかげで凄く面白いんだー」


「以前話してた小説ですね。まるで今のノラさんみたいです」


 言われてみればそうかも。ラストになると社会からドラゴンを駆除されようとするから、主人公が竜と一緒に遠くへ逃げるんだよね。私もそうなるの?


 そんな話に花を咲かせてると廊下から慌しい足音がして教室の戸を開け放たれた。


「ノラノラいるかー!」


「リンリンだー。やほやほー」


 リンリンは息を切らしてたけどすぐに落ち着いて傍まで来た。


「そんなに慌てて何かあったのですか?」


「いや、慌てたつもりはないけど。ただ早くしないと2人に会えないと思ってね。今日はせっかくだし一緒に帰りたいなって思っただけさ」


 リンリンの珍しい提案にコルちゃんと顔を見合わせる。皆通学方法が違うからその表現はちょっとおかしい。


「最近ノラノラが異世界に浮気してるじゃん? 偶にはこっちの世界に引き留めておかないと、いつかふらーっと消えるかもしれないし」


「確かにノラさんはよく異世界の話をしてますね」


「だろー? 放っておいたら異世界に住むって言うかもしれないし」


 2人が妙に納得してる。そんなに向こうの話ばかりしてたかなぁ。


「リンリン、それはないよ。向こうの人達も優しくて好きだし、あの街で住んでみたい気持ちもあるけど、私にとってこの世界も同じくらい好きだから。コルちゃんやリンリン、それに両親や柴助達を置いていけないよ。どっちも大切だから天秤には掛けられない」


 するとリンリンが目を潤ませて急に抱き付いてくる。異世界流の挨拶だ。


「ノラノラー! 私はお前のそういう所大好きだぞー!」


 んー、教室に他の生徒も残ってるんだけどなー。ちらちらこっち見てる。


「リンさん。誤解を招いていますし、それくらいにしてはどうです?」


「はっ! 悪い悪い。ノラノラって抱き心地良いからつい」


「リンさん。口は災いの元ですよ?」


 リンリンが離れて咳払いしてから真面目な顔になった。


「そんな訳だから今日はノラノラの家に遊びに行こうかなーって思ってさ。勿論コルコも一緒だぞ」


「分かった。コルちゃん、帰りは大丈夫?」


「はい。わたしもノラさんの家に行きたいです」


 そうと決まったら3人で仲良く下校だね。

 校門を出て何気ない道を歩く。いつもと同じ風景なのに友人と一緒にいるだけで色鮮やかに見える。スライムを連れ帰った日もこんな感じだった。


 他愛のない話をしてたら体感1分で家に着いてた。友達パワーすごい。


 柵を開けると真っ先に柴助が飛んでくる。遅れてたぬ坊とこん子ものそのそと歩いてくる。


「ただいまー。今日も利口さんで偉いえらいー」


 柴助の頭を撫でてあげると尻尾を振り回してる。今日ももふもふだねー。


「ノラさん、この子を触ってもいいんです?」


 コルちゃんが足元に寄ってるこん子に向かって言った。

 おぉ、人見知りさんなのに会って2日目で気を許すなんて。

 ちょっと妬いちゃうなぁ。


「大丈夫だよー。なんなら抱っこする?」


 こん子をそうっと持ち上げてコルちゃんに渡してあげる。特に抵抗する様子もなく大人しく両手の中にうずまってる。うーん、絵になるなぁ。


 リンリンはたぬ坊の背中を撫でてる。けど途中で逃げられて落ち込んでる。

 コルちゃんもこん子を下ろして庭に返した。


「本当動物園だよなぁ。竜にスライムと増えてるし」


 瑠璃は未だに鞄の中でお休み状態。昨日ずっとすら吉を夜更かしして見てたなー。


「ちゃんと面倒を見れてるのが凄いですし、懐かれてるのはもっと凄いですね」


「餌あげて毎日顔を見せたらわりと懐いてくれるよ」


 それから家にあがって2階に案内する。珍しくお母さんがいない。

 出かけてるのかな?


 部屋に入ると鞄を下ろしてだらだらと寛ぐ。


「おー! スライム分裂してる!」


 リンリンに言われて私も気付いた。水槽の上ではすら吉が2つになってクルクル回ってる。

 やっぱり自然の水は魔力が多いんだねー。


「リンリン欲しい?」


「え、いいの?」


「うん。また増えるだろうし。コルちゃんも欲しい?」


「わたしは大丈夫ですよ」


「ん。じゃあリンリンに帰る時バケツ用意するね。あ、でも川の水じゃないと死んじゃうかも」


「あー、それなら近くに小川あるからそこで汲むよ」


 それまでは水槽の水を半分くらい入れたら大丈夫かな。こうやって増やしてるとスライム牧場作れるかも。


「ですが、そのスライム端の方欠けてません?」


 コルちゃんが指差して見てみる。確かに歯型みたいのがついてぱっくりなくなってる。

 犯人は今鞄で寝てる瑠璃しかいない。

 しかもよりによってすら吉の方を食べるなんて。今度ちゃんと言っておかないと。


「ふあぁ。しかしノラノラの家は落ち着くなぁ。自分の部屋以上に気が休まる」


「分かります。安らぎですよね」


 なんか2人うとうとしてない? 今日はお泊りじゃないよね。明日学校あるし。


 2人がベッドを背にして座ってるから私も横に座る。

 んー、私も眠くなってきちゃった。駄目だ、もう落ちる。

 コルちゃん、ごめんね肩借りちゃうから。お休み。

人物紹介を追加しました。


それと余談ですが野生の動物は感染症などを持っていることもあるので素手で触るのは危ないです。たぬ坊とこん子は野生ですが、本作ではそこまで気にしないようにするつもりです。

あと、ノラが紹介した小説は架空のものです。調べても出てきません。

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