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206 女子高生も生誕祭で料理を振る舞う(1)

 生誕祭当日。コルちゃんとリンリンが朝早くに来てくれて早速準備を済ませた。食材や屋台を作るための機材も必要になるから本当に大荷物。正直私達だけだと持てない。


「ミー!」


 そしたらミー美が寄って来てくれて座り込んでくれた。乗せていいって言ってくれてるのかな。これは大助かり!


「ぴー!」


 瑠璃も来てくれる。でも何か持てる?


「お米持ってくれる?」


「ぴ、ぴぴぴ」


 5kgくらいあるコシヒカリの袋を指さしてあげたら、必死に持ち上げようとしてる。

 でも途中であきらめてギブアップしてた。さすがに無理だよね。とりあえず塩の袋を持ってもらおう。これならまだ軽いし。


 他にも受け皿にお椀を詰めて、火を起こす為の火鉢とかも準備していく。重いのはミー美が全部運んでくれるからこっちは材料や調理器具を運ぶだけでいいから大分楽になった。


「こんなもんか?」


「忘れ物ありません?」


「多分なし! 忘れたらまた取りに来るよ」


 というわけで皆でレッツ異世界!


 大分早くに来たおかげで央都の街はまだ人がそんなに集まってない。でもゆっくりしてる時間はないから急がないと。


「どこで出す?」


「前にたこ焼きをした時は噴水のある広場でしたね」


「んー。あそこは休憩場所だから人がすっごく集まると思うし厳しいかなぁ」


 まさに激戦区。材料は多めには用意したけどそれでも捌ける限りはある。


「よし、決めた。あそこにしよう」


 そういうわけで出店のある通りを歩いて行った。丁度リガーを売ってる鳥店長さんの横を通りかかる。


「おー、嬢ちゃんじゃねーか。朝早くから大荷物だな。もしかして料理でも出すのか?」


「はい。いつもお世話になってたので今回は出す側に回ろうって思いました」


「はっは! そうかそうか。人が大勢来るだろうけど気楽にやれよ。材料なくなったり料理で失敗しても誰も文句は言わないからな。文句言って来る奴がいたら俺に連絡しな。そいつをふっ飛ばしてやるよ。タダで貰って文句言うんじゃねー、ってな!」


 初めてだから気にかけてくれてるみたい。やっぱり店長さんは優しいね。


「せっかくだからリガーやるよ」


 店長さんが袋にリガーを人数分詰めて渡そうとしてくる。


「お金は……」


「金はいい。忙しくなって休む暇もなくなるだろうからな。だからこれでも食べて頑張ってくれ」


「ありがとうございます! 料理できたらまた店長さんの所にも持ってきますね」


 鳥の店長さんと手を振って別れて先を目指した。


「ノラノラって本当異世界に染まったよな」


「こういう時に頼れる人がいるって心強いですよね」


 殆ど毎日来てるから顔見知りみたいになってるってのはある。皆優しいからそれに甘えないようには気を付けないと。


 それから少し歩いて旧市街に繋がる石橋の所まで来た。橋の真ん中あたりで止まって荷物を下ろした。人は今の所いない。


「ここならいいんじゃないかな?」


 街から少し離れた所だから人も一杯来ることはないだろうし、それで人混みに疲れた人が休みに来てそういう人達に料理を出せたらいいと思う。


「おっけー。じゃあ屋台を組み立てるか」


「ご飯を炊かないといけませんね」


「火鉢に火を起こすよー」


 準備が始まって黙々と作業が進む。瑠璃は材料を運んでくれて、ミー美は屋台を立てるポールを支えてくれて、皆一丸になってる。



 ※1時間後※



 屋台が完成して暖簾をあげた。手作りで味噌汁、おにぎりって書かれてる。しかも日本語。

 初見さんをびっくりさせたい企画。

 飯盒でご飯も炊けて、味噌汁もできあがってきた。すぐなくなるだろうから、すぐに次の料理の準備を進める。味噌汁は早く出来るだろうけど、ご飯は炊く時間があるから絶対半時間以上かかる。


 そんなこんなでバタバタしてたら、石橋の所に旅行客らしい人達がぽつぽつと来た。

 それで家族連れみたいな人がこっちに来た。


「あの~、ここもお店ですか?」


 暖簾を指さしてる。日本語だから当然読めないよね。


「はい! 味噌汁とおにぎりを出してます! 是非食べていってください!」


 リンリンとコルちゃんに目配せして、味噌汁をお椀に移しておにぎりを紙皿に乗せて出してもらった。どっちもほくほくの出来立て。その料理を見て家族連れの人達が目を丸くしてる。


 でも料理を一口食べたら皆笑顔を見せてくれる。


「おいしー!」


 子供が真っ先にそう言ってくれて、それから両親の人も「おいしいです」って言ってくれた。


「こんな料理初めて食べました。具材も見たことないものばかりですごいですね」


「いえいえ~。ありがとうございます」


「こんな美味しいものを食べられて生誕祭に来たかいがありました。ご馳走様でした」


 こんなに嬉しい感想を言ってくれて幸先が最高のスタートだね。家族の人に手を振ってくれたから笑顔で返してあげよう。


「ふ~。まずはよかったな」


「ですね~。異世界の人の口に合わなかったらどうしようって思いました」


「この調子でどんどん作っていこう~」



 ※1時間経過※



 生誕祭が本格的に始まって、自分の見通しの甘さを思い知らされたよ。


「コルコ! ご飯まだ!?」


「あと少しです!」


「こりゃペース追い付かないぞ!」


「予備で用意したカセットコンロも使いましょう!」


 目の前には大量の行列。街はずれだから人はそんなに来ないっていう見通しが完全に甘かったよ。それで後ろで雑談してる人の声を聞いたら、他の人の噂を聞きつけて来たみたい。

 日本語で書かれた珍しい屋台だからという。日本らしさを前面に出したのが裏目にでたー。


「瑠璃、紙皿を用意して! ミー美、新しいコシヒカリの袋取って!」


「ぴ!」


「ミー!」


 従業員が全員フル稼働してるのに目の前の行列を全然捌けない。これ昼前には材料が底をつくんじゃない?


 でも何だか楽しい。こうやって自分で出した料理が喜んでくれて美味しいって言ってくれるのは素直にうれしいね。


「私、一回帰ってお米買ってくる!」


 現状で一番消費が早いのはお米。味噌汁は入れる具材を厳選すればまだ大丈夫そうだけど、おにぎりに関しては中々そうもいかない。


「分かった! こっちは任せろ!」


「お願いします!」


 生誕祭はまだ始まったばかり。今日は忙しくなりそう。


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